【解説】痒くて皮膚が傷だらけ!猫アトピー皮膚症候群について
2025/07/10
流山市、柏市、野田市のみなさんこんにちは。
流山市おおたかの森にある、21動物病院-おおたかの森-です。
今回は、猫のアトピー性皮膚症候群(FASS)について解説します。
猫アトピー症候群(FAS)とは
2021年に猫アレルギー疾患の定義が見直され、猫アトピー症候群(Feline Atopic Syndrome; FAS)と提唱されました(Halliwell et al., 2021)。猫アトピー症候群(FAS)は、環境アレルゲンに関連するアレルギー性皮膚疾患、IgE抗体に関連する喘息、食物アレルギーを包括する疾患のことをさします。さらに、それぞれの症状ごとに猫アトピー皮膚症候群(Feline atopic skin syndrome; FASS)、猫喘息、食物アレルギーの3つのタイプに分類されます。
- 猫喘息 :IgE抗体に関連する喘息症状が出るもの
- 食物アレルギー :食物アレルギーに関連した症状が出るもの
- 猫アトピー皮膚症候群(FASS):環境アレルギーに関連するアレルギー性皮膚疾患
このうち、猫に多くみられる猫アトピー皮膚症候群(FASS)について解説していきます。
猫のアトピー症候群(FAS)は、犬と人のものとは異なり症状が多様です。犬アトピー性皮膚炎(CAD)は、人と症状が似ており、主に環境中のアレルゲンによるアレルギー反応と皮膚バリア機能の低下により皮膚にかゆみや炎症を引き起こす病気です。
犬のアトピー性皮膚炎についてのブログ記事はこちらからご覧ください。
猫アトピー皮膚症候群(FASS)の原因
環境中に存在するアレルゲンが原因となり、アレルギー症状を起こします。IgE抗体が関連しているといわれています。好発する猫種としてアビシニアン、ヒマラヤン、ペルシャ、ソマリなどがあり、遺伝性の要因もあると考えられています。

猫アトピー皮膚症候群(FASS)の症状
強い痒みと炎症が特徴で、多様な症状を示します。特徴的な痒みの4病型がみられれば、猫アトピー皮膚症候群(FASS)と疑います。
- 頭頸部掻爬痕
- 粟粒性皮膚炎
- 外傷性脱毛
- 好酸球性肉芽腫群
3歳以下での発症が6割くらいですが、7歳以上でも2割ほどを占めます。ほとんどが一年中発症がみられます。

頭頸部掻爬痕
顔面、頭部、頸部で見られ、強い痒みから激しい搔爬行動とひっかき傷がみられます。患部には紅斑、脱毛、びらん、潰瘍がみられます。
粟粒性皮膚炎
耳や、背部、腰部などに、約1~2mmの小丘疹(ブツブツ)、黄~黒の痂皮、脱毛、びらんが散発性~びまん性に認められます。背中を撫でで触ってブツブツが触れることでも判明できることがあります。
外傷性脱毛
痒みにより舐める(舐性行動)ことで、毛がちぎれて脱毛が認められます。左右対称性で、股関節付近の下腹部や側腹部、四肢などにみられます。
好酸球性肉芽腫群
白血球の一種である好酸球が多くみられる病変です。無痛性潰瘍、好酸球性肉芽腫、好酸球性局面の3つに分類されます。
無痛性潰瘍
多くは上口唇部の粘膜に発生し、片側あるいは両側性に潰瘍を生じます。痒みがみられないため、見逃されていることがあります。
好酸球性肉芽腫
病変部は後肢や口腔内などいろいろな場所でみられ、線状にびらんや潰瘍を引き起こします。二次的な細菌感染によって症状が悪化します。多くは痒みがあります。
好酸球性局面
激しい痒みがあり、舐性行動によって発生します。下腹部や大腿部内側に多くみられ、円形の隆起した潰瘍部が認められます。二次的な細菌感染によって症状が悪化します。
猫アトピー皮膚症候群(FASS)の診断
診断には、痒みの4病型がみられるかどうかと、その症状がみられる他の疾患との除外診断が基本になります。
猫アトピー皮膚症候群(FASS)でみられる特徴的な皮膚症状の確認
前項で解説した4つの病型の症状があるか確認します。この4病型は多くの疾患でもみられるため、治療に進むためには各検査によって他の疾患を鑑別し除外する必要があります。
鑑別する必要がある疾患には、次のようなものがあります。特に、食物アレルギーとノミアレルギーの併発が多く、鑑別は重要です。
- 感染症 :疥癬、ニキビダニ症、膿皮症、マラセチア皮膚炎、皮膚糸状菌症、ウイルス性疾患(ヘルペスなど) など
- アレルギー性疾患:食物アレルギー、ノミアレルギー、薬疹 など
- 腫瘍性疾患 :上皮向性リンパ腫、肥満細胞腫、扁平上皮癌 など
- 内分泌疾患 :クッシング症候群、原発性副甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症 など
- その他 :心因性脱毛症、自己免疫疾患(落葉状天疱瘡など)、下部尿路疾患 など
問診・身体検査
生活環境や皮膚の症状や経過、全身の症状、予防歴などを確認します。同居家族や同居動物がいる場合は、その症状の確認もします。
一般検査
症状に応じて、次の検査を行います。
- 血液検査 :好酸球数、ホルモン測定、感染症、猫エイズ(FIV)、猫白血病(FeLV)、特異的IgE抗体測定など
- レントゲン検査:皮膚や症状がみられた部位など
- エコー検査 :皮膚や症状がみられた部位など
- 除去食試験 :特定のアレルギーを除いた食事による試験
皮膚科検査
症状に応じて、次の検査を行い皮膚の状態を確認します。
- 皮膚のスクレーピング:皮膚に深く入り込んでいる疥癬やニキビダニなど
- スタンプ検査 :炎症細胞や腫瘍細胞、細菌、マラセチアなど
- ウッド灯検査 :皮膚糸状菌
- 抜毛検査 :皮膚糸状菌やハジラミなど
- 細菌培養検査 :細菌による感染など
- 細胞診 :炎症細胞や腫瘍細胞など
- 耳スコープ :外耳炎や耳垢など
皮膚疾患、耳科疾患、内分泌疾患、除去食試験についてのブログ記事はこちらからご覧ください。
【解説】ベタベタ皮膚に多い!赤い!痒い!マラセチア皮膚炎について
【解説】みんな持ってるニキビダニ。あなたの愛犬も発症するかも?ニキビダニ症について。
【解説】水ガブ飲み!尿も多い!犬に多いクッシング症候群について
【解説】シニア猫なのに活動的!よく食べるのに痩せてきた?猫の甲状腺機能亢進症について
猫アトピー皮膚症候群(FASS)の治療
猫アトピー皮膚症候群(FASS)はアレルゲンの排除が難しく、また完治も難しいため、生涯にわたって治療することになります。治療は、痒みを抑えることが大きな目的になります。
薬物療法
ステロイド剤や免疫抑制剤シクロスポリン、オクラシチニブ(アポキル®)が有効です。これにより舐性行動が減って皮膚の傷が改善される効果があります。ただし、オクラシチニブ(アポキル®)は、長期的な投薬による副作用が不明のため、使用には注意が必要です。感染症があった場合、抗生剤も併用することがあります。また、室内でも14℃以上の気温であればノミが発生する可能性があるため、通年にわたって定期的にノミ駆虫薬を投与することも、痒みを抑えることにつながります。
*アポキル®は、Zoetisおよびゾエティス・ジャパン株式会社またはその関連会社・企業の登録商標です。
食事療法
皮膚の状態を改善する療法食やサプリメントも併用すると改善できることがあります。ω(オメガ)3脂肪酸やビタミンE、亜鉛酵母などを含むものが有効といわれています。
猫アトピー皮膚症候群(FASS)の予防
猫アトピー皮膚症候群(FASS)の予防する方法は、残念ながら今のところわかっていません。ただ、犬アトピー性皮膚炎(CAD)と同様に、症状の変化に早めに気づくことができれば、治療も早く進めることができます。猫は犬とは異なり、シャンプーやアレルゲンの除去が難しいですが、日常からできる対策として室内の清潔化やノミ対策があげられます。
- 布団やシーツ、カバーを定期的に洗濯
- 空気清浄機を使う
- 定期的なノミ駆虫薬の投与 など
さいごに
猫アトピー性皮膚症候群(FASS)は症状が多様ですが、早めの治療や予防対策で重症化を防げる可能性があります。猫が痒がる理由はたくさんあります。適切な治療をするためにも気になることがあれば早めに受診しましょう。
当院ではエビデンスを元に検査・診断・治療を行っています。
猫のアトピー性皮膚症候群について不明点やご相談があれば、当院までお電話もしくはLINEにてお問い合わせください。
21動物病院-おおたかの森-
千葉県流山市おおたかの森北2-50-1 GRANDIS 1階
TEL: 04-7157-2105
Web予約: https://wonder-cloud.jp/hospitals/21ah_nagareyama/reservationsonder
LINE: @092jvjfm
執筆:獣医師 一色
監修:獣医師 院長 坂本




