【解説】ベタベタ皮膚に多い!赤い!痒い!マラセチア皮膚炎について
2024/07/19
流山市、柏市、野田市のみなさんこんにちは。
流山市おおたかの森にある、21動物病院-おおたかの森- 院長の坂本です。
当院ではエビデンスを元に検査・診断・治療を行っています。
今回は犬のマラセチア皮膚炎について解説します。
マラセチア皮膚炎とは
犬のマラセチアは皮膚に常在している酵母菌という真菌の一種(酵母様真菌とも言われる)。
犬・猫において皮膚炎と関連しているのはMalassezia pachydermatisです。
生後数日以内に母犬からもらっており、移る感染症というよりは皮膚環境の異常により、マラセチアが増殖することでマラセチア皮膚炎を発症します。
増殖したマラセチアが次のような機序によって皮膚炎を起こす。
- マラセチアの持つ脂質分解酵素が皮膚炎を起こす。
- マラセチアの代謝産物が皮膚炎を起こす。
- マラセチア自体に対するアレルギー反応での皮膚炎。
マラセチアが増えやすい環境
マラセチアは好脂性、つまり脂質が好き。なので皮膚が脂っぽくベタベタしていると増殖する。
- 夏
- 脱水により皮膚内が乾燥する。これにより防御機能を強化しようと脂が多くなる。
- 犬種
トイ・プードル、柴犬、シーズー、アメリカン・コッカー・スパニエル、ダックスフンド、ウェスト・ハイランド・ホワイト・テリア、ボストン・テリアなど
- 脂漏症
- アレルギー性皮膚炎
- 甲状腺機能低下症
- 副腎皮質機能亢進症
- 不適切なシャンプー など
シャンプー後は経皮水分蒸散量(TEWL)が増加する、つまり乾燥すると言われています。その状況が続くと皮膚バリアを作るために脂質を多く分泌するようになり、マラセチア増殖の一因になる。なので、シャンプー後の保湿はしっかり行いましょう。
マラセチア皮膚炎の症状
好発部位
外耳、口唇、鼻、肢、指間、頸部腹側、腋窩、内股、会陰部など。
症状
赤み、かゆみ、色素沈着(皮膚に黒い色がつく)、脱毛、脂漏、フケ、苔癬化(皮膚が分厚くなること)、臭気
発症部位や症状はアトピー性皮膚炎と似ているため、見た目だけでは判断できない。
マラセチア皮膚炎の診断
これをすれば確実に診断がつくという方法はない。症状や検査結果から総合的に判断する。
- 発症部位や臨床症状
- 皮膚検査にてマラセチアの増殖を認める
- 抗真菌薬治療で症状が改善する(診断的治療)
皮膚検査はテープ検査や押捺検査が行われます。
マラセチア皮膚炎の治療
基礎疾患の治療、外用療法、内科療法の3本柱で治療していく。
基礎疾患の治療
アレルギー性皮膚炎、脂漏症、副腎皮質機能亢進症、甲状腺機能低下症など皮膚環境に影響する疾患を治療する。
マラセチアが増殖しやすい環境を治療することで再発を減らす。
外用療法
シャンプー療法と抗真菌薬の塗布が含まれる。
シャンプー療法の目的は、余分な皮脂を落とすこと、物理的にマラセチアを除去すること、消毒薬や抗真菌薬で除菌効果を高めること。
消毒薬や抗真菌薬の成分として、クロルヘキシジン、ミコナゾール、ピロクトンオラミンが使われる。
抗真菌薬の塗布は発症部位が限局している場合や、シャンプーしにくい場所などに使うことがある。
内科療法
皮膚症状が重度なとき、範囲が広い場合に使用する。
シャンプーに比べると角質に届く薬剤濃度が低いため、単独ではなくシャンプー療法と併用する。
最後に
マラセチア皮膚炎は単なる感染症ではなく、皮膚自体の異常によって起こる皮膚炎です。
マラセチアだけを除去しても、皮膚環境が治っていないと再発するケースが少なくありません。
マラセチアに対してだけではなく、基礎疾患の治療も行いましょう。