【解説】眼が!鼻汁が!くしゃみが!子猫も成猫も。猫風邪について
2024/09/12
流山市、柏市、野田市のみなさんこんにちは。
流山市おおたかの森にある、21動物病院-おおたかの森- 院長の坂本です。
当院ではエビデンスを元に検査・診断・治療を行っています。
今回は猫風邪について解説します。
猫風邪とは
猫風邪とは、結膜炎、鼻汁、くしゃみなどの症状をさす俗称です。
ヒトの風邪の症状に似ていることからこう言われているようです。
免疫力の低い子猫に多いですが、成猫でもしばしば認められます。
また治療により一度改善した子でも再発することが少なくありません。
猫風邪の原因
猫風邪の原因はウイルス、細菌、クラミジアなど様々です。代表的なのは以下のような疾患です。
疾患 | 原因 |
猫ウイルス性鼻気管炎 | ヘルペスウイルス |
猫カリシウイルス感染症 | カリシウイルス |
Bordetella感染症 | Bordetella属菌 |
その他細菌感染症 | |
クラミジア感染症 | クラミドフィラ・フェリス |
この中でも猫ウイルス性鼻気管炎と猫カリシウイルス感染症が多いと言われています。
猫風邪の症状
上述したような眼症状、呼吸器症状の他に口腔内症状、発熱、食欲不振、跛行(足を痛がって歩く)なども発生することがあります。
眼症状
- 流涙
- 眼脂(目やに)
- 眼瞼痙攣(眼をしょぼしょぼさせる)
- 結膜炎
- 潰瘍性角膜炎
呼吸器症状
- 鼻汁
- くしゃみ
口腔内症状
- 口内炎
- 舌炎
- 流涎(よだれ)
猫風邪の原因体によりどの症状が出やすいかの傾向があります。
たとえばヘルペスウイルスであれば眼と呼吸器に、カリシウイルスでは呼吸器と口腔内に症状が出やすいなど。
子猫は免疫力が弱く、重篤化しやすい。また症状が長引くことも多く、眼に後遺症が残ったりすることもあります。
くしゃみや鼻汁が長引くこともあり、他の症状はなくなったのにこれらの症状だけずっと続いてしまうなんてこともあります。このように慢性経過をたどると鼻腔内に器質的な変化が生じ、生涯にわたりくしゃみ、鼻汁と付き合っていかなければならないケースもあります。
猫風邪の診断
臨床症状、PCR検査、治療的診断によって診断します。
ただしヘルペスウイルスやカリシウイルスは持続感染することが多く、一見健康な個体からも検出されるため、PCRで検出されたからといって現在の症状の原因とは限らないことがあるので注意が必要です。
猫風邪の治療
猫風邪の治療の基本は対症療法になります。抗菌薬や抗ウイルス薬を使用することもあります。
対症療法:鼻汁に対して去痰薬、食欲不振に対して食欲増進剤、脱水に対して点滴など。
猫風邪の予防
猫ウイルス性鼻気管炎や猫カリシウイルス感染症はワクチンによって症状の軽減が可能です。定期的なワクチン接種を行いましょう。
特に多頭飼育している場合は一頭が発症すると他の子にも感染するので、多頭飼育している方ほどワクチン接種が重要になります。
猫ウイルス性鼻気管炎はヘルペスウイルスが原因なので、一度症状が寛解したとしても神経に潜伏感染しており、完全にウイルスがいなくなることはありません。
ストレスなどで免疫力が低下すると発症しやすくなります。ストレスをできるだけ減らした生活環境を目指しましょう。