【解説】淡い毛色の子、一部だけ毛がない?淡色被毛脱毛症について
2024/06/14
流山市、柏市、野田市のみなさんこんにちは。
流山市おおたかの森にある、21動物病院-おおたかの森- 院長の坂本です。
当院ではエビデンスを元に検査・診断・治療を行っています。
今回は淡色被毛脱毛症について解説します。
淡色被毛脱毛症とは
簡単にいうと、淡い毛色(グレー、ブルー、フォーンなど)に発生する脱毛症です。
別名としてカラーダイリューション脱毛症、カラーダイリューションアロペシアとも言います。
※アロペシア(Alopecia)は日本語で脱毛症を指します。
淡色被毛脱毛症の原因は?
メラノフィリン(MPLH)遺伝子の異常の関与が示唆されています。この遺伝子はメラニン色素の貯蔵、輸送に関わっています。
通常、毛の中にはメラニン色素が均一に入っています。
淡色被毛脱毛症では、MPLH遺伝子異常のためにメラニン色素が偏ってメラニン色素塊(メラニンクランプといいます)ができます。これが被毛を傷つけたり、力がかかりやすくなることで毛が折れて(裂毛)、脱毛して見えるのです。ただ進行すると裂毛だけでなく本当に脱毛もしてきます。
淡色被毛脱毛症はどんな子に発生する?
毛色・発症部位
グレー、ブルー、フォーンなどの淡い毛色で発生する。発症した一個体の中でも、該当する毛色の部分だけに脱毛が生じる。
発生部位として多いのは背中です。
品種
イタリアン・グレーハウンド、グレート・デーン、シュナウザー、スタンダード・プードル、ダックスフンド、チワワ、ボストン・テリア、ヨークシャー・テリアなどの品種で報告されています。
もちろんこれらの品種でも、淡い毛色であることが発生条件です。
年齢
遺伝子疾患なので若齢(6ヶ月齢~3歳齢)で発症します。
淡色被毛脱毛症の診断方法は?
皮膚検査を行うことで殆どの場合は診断がつきますが、確定診断するには皮膚生検も必要となります。
- 問診、身体検査
- 毛検査
- 皮膚生検
脱毛自体は他の様々な疾患でも発生するため、除外する必要があります。例えば感染症、アレルギー性皮膚炎、ホルモン疾患などです。こういった疾患が疑われる場合は追加検査が必要になります。
淡色被毛脱毛症の治療は?
残念ながら、現在のところ確立された治療法はありません。また美容的な問題ともされており治療は必須ではありません。
よく報告として上がっている治療法は、内服薬(メラトニン)やビタミン剤などです。
これらの治療は2~3ヶ月は継続する必要があること、反応は個体差があることにご注意ください。
また淡色被毛脱毛症の子には、膿皮症の併発がよく見受けられます。その場合は抗生剤の投与や薬用シャンプーを行います。
日常生活でのケア
裂毛、脱毛が生涯続いてしまうので、皮膚が被毛で守られず、皮膚疾患が多くなります。以下の点に注意して生活しましょう。
- 物理的刺激、紫外線を減らすために洋服を着せる。
- シャンプーをする際はゴシゴシこすらず、泡を使って優しく行う。