【解説】水ガブ飲み!尿も多い!犬に多いクッシング症候群について
2025/04/25
流山市、柏市、野田市のみなさんこんにちは。
流山市おおたかの森にある、21動物病院-おおたかの森-です。
今回は、犬に多いクッシング症候群について解説します。
クッシング症候群とは?
クッシング症候群は、副腎皮質機能亢進症のことをいいます。何らかの原因で、副腎から分泌される副腎皮質ホルモンが過剰に分泌されてしまう疾患です。
8歳以上の中高齢犬に多くみられますが、若齢犬や猫での発症例もあります。
副腎とは?
副腎は、腎臓のすぐ隣にある臓器で、腎臓と同じく左右にあります。皮質と髄質に分かれていて、外側の組織である皮質は、糖質コルチコイド(主にコルチゾル)と鉱質コルチコイド(主にアルドステロン)を分泌しています。また、内側の組織である髄質からは、カテコールアミン(エピネフリン、ドーパミンなど)を分泌しています。
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副腎皮質から分泌されるコルチゾルの役割としては、次のものが挙げられます。
・血糖値の調節
・免疫を調節する
・ストレスから体を守る
・糖分や体内のミネラルを調節する
・抗炎症作用 など
コルチゾルは、全身の臓器に幅広い働きをする生命維持に必要なホルモンです。コルチゾルが不足すると、脳にある視床下部から副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)を分泌して指令を出し、下垂体から副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)が放出されます。その信号を受けて副腎皮質から副腎皮質ホルモンであるコルチゾルが分泌され、各細胞に作用します。
コルチゾルが血中に多くなると、下垂体やさらに上位の視床下部にCRHやACTHの分泌を抑える調節機構が働きます(ネガティブフィードバック)。これらの作用により、体内の血中コルチゾル濃度が適量に維持されています。

クッシング症候群の原因
クッシング症候群の原因は主に3つあります。
下垂体性クッシング症候群
脳下垂体に腫瘍ができたことが原因でACTHが過剰分泌され、コルチゾールの分泌が過剰になります。
クッシング症候群の約80~85%を占め、ダックスフンド、ミニチュアプードルなど小型犬に多くみられます。
副腎性クッシング症候群
副腎が腫瘍化することが原因でコルチゾールの分泌が過剰になります。
全体の1~2割を占め、ジャーマンシェパード、トイ・プードルに多くみられます。性差はないとされていますが、雌犬に多い傾向があるようです。
医原性クッシング症候群
プレドニゾロンなどのステロイド薬を過剰あるいは長期的に使用することで、副腎から大量にコルチゾールが分泌されているのと同じような状態になっている病態です。
ステロイド剤は、皮膚疾患やアレルギー疾患などで効果のある薬ですが、使い方に注意が必要な場合もあります。

クッシング症候群の症状
コルチゾールは体内の各臓器に作用するため、次のような症状が出ます。
- 多飲多尿(水の飲む量が増えることで、尿の量が増える)
- 多食(食欲が異常に高まる)
- 腹部膨満(筋肉が減り脂肪がつき、肝臓が大きくなる、“お腹がぽっこりしてきた”)
- 左右対称性の脱毛
- 皮膚感染症や膿皮症
- 皮膚の菲薄化
- 筋肉の脆弱化
- パンティング(ハアハア浅い呼吸)
- 血栓塞栓症
- 神経症状
- 糖尿病(併発)
症状はすべてが出るわけではありませんが、代表的な症状は、多飲多尿、多食です。
多飲多尿は、次のような量が目安とされています。
犬の場合、
- 多飲は、一日の飲水量が 体重1kgあたり100mL以上
- 多尿は、一日の尿量が 体重1kgあたり50mL以上
猫の場合、
- 多飲は、一日の飲水量が 体重1kgあたり50mL以上
- 多尿は、一日の尿量が 体重1kgあたり20mL以上
多飲多尿に関連した過去の記事は、こちらからどうぞ。
【解説】シニア猫なのに活動的!よく食べるのに痩せてきた?猫の甲状腺機能亢進症について
https://otaka.21ah.jp/_cms/845/
【解説】尿が多い?飲水量が多い?元気も食欲もない…慢性腎臓病について
https://otaka.21ah.jp/_cms/799/
【解説】イヌ・ネコの飲水量足りてますか?
https://otaka.21ah.jp/_cms/47/
クッシング症候群の診断
問診、身体検査、血液検査、尿検査、超音波検査、レントゲン検査、ホルモン検査から総合的に診断します。
問診、身体検査
症状や既往歴などを伺い、お腹の腫れ具合、⽪膚、⽑並みの状態などを確認します。
血液検査
肝酵素であるアルカリフォスファターゼ(ALP)やコレステロール、中性脂肪が増加します。好中球を主体とした⽩⾎球数の上昇が認められます。
クッシング症候群は、甲状腺機能低下症と症状が似ているため、甲状腺ホルモンも測定します。
超音波検査
副腎が腫大しているか、左右ともに観察し、形やサイズを測定します。
レントゲン検査
肝臓の⼤きさや胆嚢の状態などを確認します。
ホルモン検査
コルチゾールの過剰を内分泌学的に確定するための検査として、ACTH刺激試験、低用量デキサメタゾン抑制試験、高用量デキサメタゾン抑制試験があります。
これらの検査はストレスや食事に影響を与えることがありますので、検査を受ける際にはストレスをかけないようにすることが重要です。
ACTH刺激試験
副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)を投与して、投与前後の血漿のコルチゾール濃度を測定し、その反応を確認します。
クッシング症候群の場合は、コルチゾール値は上昇します。また、下垂体性クッシング症候群に対する感度は8割程度です。
次のデキサメタゾン抑制試験は、クッシング症候群の有無や下垂体性と副腎性の鑑別のために実施します。
低用量デキサメタゾン抑制試験
デキサメタゾンは、コルチゾールと同じの作用をもつ薬です。
低用量のデキサメタゾンを投与し、4時間後と8時間後の血漿コルチゾール濃度を測定します。
犬では、コルチゾール濃度が投与前の50%以下に減少したときに、抑制と判断します。
正常な犬では、デキサメタゾンの投与により下垂体からのACTH分泌が抑制され、血中コルチゾールが低下し抑制がみられません。
下垂体性クッシング症候群の場合、低用量のデキサメタゾン投与により一時的にコルチゾールが低下しますが、しばらくすると抑制されなくなり、コルチゾールが上昇します。
副腎性クッシング症候群の場合は、副腎の問題で下垂体からのACTH分泌には関係ありませんので、デキサメタゾン投与に関わらずコルチゾールは高いままになります。
医原性クッシング症候群では、コルチゾールが正常値以下になります。
高用量デキサメタゾン抑制試験
下垂体性クッシング症候群と副腎性クッシング症候群の鑑別のための試験です。高用量のデキサメタゾンを投与し、4時間後と8時間後の血漿コルチゾール濃度を測定します。
下垂体性クッシング症候群の場合、下垂体からのACTH分泌が抑制されるため、コルチゾール分泌も抑制されることが多いです。しかし、2~3割で抑制がみられないこともあります。
副腎性クッシング症候群の場合は、下垂体からのACTH分泌に関係なくコルチゾールの分泌が抑制されません。
CT検査/MRI検査
レントゲン検査では判断しにくい腫瘍の大きさや形などを確認します。ただし、検査可能な医療機関が限られます。
クッシング症候群の治療
クッシング症候群の治療は、コルチゾールを正常範囲内に戻すこと、生活の質(QOL)を維持させることが目標になります。内科的治療と外科的治療があります。
内科的治療
下垂体性クッシング症候群・副腎性クッシング症候群
内服薬にはトリロスタンなどの副腎⽪質ホルモン合成阻害剤を使⽤します。
完治は見込めませんが、症状の緩和を目的とします。生涯にわたって継続的な投薬が必要になることがあります。
医原性クッシング症候群
ステロイド薬を減薬していきます。突然休薬せずに、本来の病気の症状を見ながら少しずつ減らします。
外科的治療
転移の有無や腫瘍の状態から外科的な処置が可能な場合は、手術にて腫瘍臓器を摘出します。手術内容によっては、高度な医療技術がある動物病院へ紹介する場合があります。
また、下垂体性クッシング症候群では放射線治療も有効ですが、こちらも実施可能な医療機関が限られます。
さいごに
クッシング症候群は、飼い主の皆様の早期発見によって適切な治療へつながります。普段の食欲や飲水量、歩様状態などを確認する習慣をつけると、変化に気づきやすくなります。この病気は高齢による変化と思われがちな症状もありますが、いつもと様子が違うなど気になることがありましたらお気軽にご相談ください。
当院ではエビデンスを元に検査・診断・治療を行っています。
クッシング症候群について不明点やご相談があれば、当院までお電話もしくはLINEにてお問い合わせください。
21動物病院-おおたかの森-
千葉県流山市おおたかの森北2-50-1 GRANDIS 1階
TEL: 04-7157-2105
Web予約: https://wonder-cloud.jp/hospitals/21ah_nagareyama/reservationsonder
LINE: @092jvjfm
執筆:獣医師 一色
監修:獣医師 院長 坂本




