【解説】みんな持ってるニキビダニ。あなたの愛犬も発症するかも?ニキビダニ症について。
2024/05/25
流山市、柏市、野田市のみなさんこんにちは。
流山市おおたかの森にある、21動物病院-おおたかの森- 院長の坂本です。
当院ではエビデンスを元に検査・診断・治療を行っています。
今回はニキビダニ症について解説します。
ニキビダニ症とは
イヌニキビダニ(Demodex canis)は、毛の根本の毛包に常在寄生するダニ。体長0.3mmほどで肉眼では確認できない。
別名:毛包虫、アカラスとも。
左の構造物は被毛。中央の構造物がニキビダニ。
このダニは生後48~72時間ほどで母犬からもらっており、健常犬でも認められる。
皮膚の免疫力の低下などによってニキビダニが増殖すると、炎症を起こし、ニキビダニ症を発症する。
ちなみに猫での発生は稀と言われており、基本的には動物間を伝播することはない。
ニキビダニ症の症状
ニキビダニ症は発症範囲と年齢で病型が分類される。
発症範囲
1部位あたりが2.5cm2以下かつ4部位以下であれば、局所性ニキビダニ症
上記以上の大きさ、数であれば汎発性ニキビダニ症
年齢
1歳未満の発症は、若齢発症型
7~8歳以上での発症は、成年発症型
局所性ニキビダニ症は若齢発症型が多いとされており、一方で汎発性ニキビダニ症は成年発症型が多いとされている。
局所性ニキビダニ症
発症部位:頭部、四肢に多い
兆候:脱毛、紅斑、面皰(めんぽう)
汎発性ニキビダニ症
発症部位:頭部、四肢、体幹など広範囲
兆候:重度なフケ、紅斑、びらん、潰瘍、膿疱、腫瘍、化膿性肉芽腫、瘻管形成。痛みや痒みがでることも。
汎発性、成年発症型のほうが症状が重いことがほとんど。毛も抜けて、皮膚は分厚く、赤くなり…見るからに重い症状のことが多い。
ニキビダニ症の発症要因
皮膚免疫力の低下がニキビダニ症発症の要因。皮膚免疫力が低下する原因とは?成犬では次のようなものが挙げられます。
- 栄養不良、衰弱、加齢
- 感染症
- 内分泌疾患
- 甲状腺機能低下症
- 副腎皮質機能亢進症
- 糖尿病など
- 腫瘍
- 薬剤
- 抗がん剤
- ステロイド製剤など
若齢発症型の場合は、そもそもの皮膚免疫力が未熟なため発症する。
ニキビダニ症の検査
ニキビダニ症を診断するためには、皮膚検査を行い、ニキビダニの虫体や虫卵を検出する。
- 問診、身体検査
- 皮膚掻爬検査
- 被毛検査
- テープ検査
- 皮膚生検
成年発症型では発症要因となる基礎疾患を探す。
- 血液検査
- X線検査
- 超音波検査など
ニキビダニ症の治療
駆虫薬、毛包環境の是正、基礎疾患の治療を行います。
駆虫薬
イベルメクチン、ドラメクチン、ミルベマイシン、モキシデクチン、フルララネル、サロラネル、アフォキソラネルなど。
内服、注射、外用などで服用する。
フィラリアやノミ、マダニの予防薬として販売されていることが多い。ただ用量や服用方法が通常とは異なります。一部の薬はニキビダニ症の改善の効能を取っているものも。
毛包環境の是正
細菌感染、脂漏、角質増生があると毛包環境が悪化し、ニキビダニが増殖しやすくなる。
この場合は抗生剤、シャンプーなどで対応する。
基礎疾患の治療
皮膚免疫力を下げている基礎疾患があれば治療する。
例:甲状腺機能低下症であればホルモン補充。