【解説】目が赤い!目を痛そうにしてる!犬と猫のぶどう膜炎について
2025/06/25
流山市、柏市、野田市のみなさんこんにちは。
流山市おおたかの森にある、21動物病院-おおたかの森-です。
今回は、犬と猫のぶどう膜炎について解説します。
ぶどう膜とは
ぶどう膜炎を解説する前に、ぶどう膜について説明します。ぶどう膜は、虹彩、毛様体、脈絡膜の3つの眼球組織で構成されていて、眼の組織への血液や栄養を供給、血液眼関門の形成、免疫調整の役割をもっています。血管とメラニン色素が豊富であり、黒っぽいぶどうのようにみえることから、ぶどう膜と呼ばれています。
- 虹彩 :瞳孔の大きさを変えて、眼に入る光の量を調整
- 毛様体:水晶体の厚みを変えてピント調節、眼房水の産生・排泄を調整、眼圧を調整
- 脈絡膜:豊富な血管で眼球や網膜に影響を供給

ぶどう膜炎とは
ぶどう膜炎は、なんらかの原因によりぶどう膜に炎症が起こる疾患のことをいいます。ぶどう膜に炎症が生じると、眼への栄養供給や免疫調整機能に影響がでてしまい、眼に様々な障害が起こります。重症になると失明することもあります。
- 前部ぶどう膜炎:虹彩と毛様体に生じる炎症で、虹彩炎と毛様体炎の区別が難しいため、まとめて呼ぶことが多いです。
- 後部ぶどう膜炎:脈絡膜に生じる炎症です。
ぶどう膜炎の症状
ぶどう膜炎の原因は多様であるため、症状もそれに応じて多岐にわたります。症状が片目だけの場合と両目ともみられる場合と様々です。脈絡膜の炎症(後部ぶどう膜炎)の場合は、初期は無症状のことが多いです。ぶどう膜炎が進行すると、白内障、続発性緑内障、網膜剝離、網膜変性などが併発し、失明してしまうこともあります。
目の症状
- 目が赤い(充血)→重度の充血は赤目(レッドアイ)
- 涙が多い
- 目がしょぼしょぼする
- 目を気にしている
- 眩しそうにする
- 目が痛そうにする(目を開けられない)
- 目が痙攣する(瞼がピクピクしている)
- 瞳孔が小さい(縮瞳) /瞳孔が大きい(散瞳)
- 瞳孔の大きさが左右で違う
- 角膜が混濁している/白っぽい(角膜浮腫) など
全身の症状
- 物にぶつかる、つまずく
- 食欲低下
- 元気衰退
- だるそう
- 発熱 など
ぶどう膜炎の原因
ぶどう膜炎の原因は、眼科疾患、感染、腫瘍、全身性の疾患など多岐にわたります。原因が判明すると治療にもつながるため、原因の特定は重要です。原因は、感染性と非感染性に大別され、非感染性要因は目の疾患によるものと全身性疾患によるものに分けられます。
犬は免疫介在性、猫では感染症からの発症が多くみられますが、ほとんどが原因不明の特発性とされ確定診断ができないことが多いです。
感染性原因
感染症にかかると、影響が全身的に広がり眼にも炎症が波及して、ぶどう膜炎を発症します。猫では、感染によるぶどう膜炎が多くみられます。ぶどう膜炎をおこす感染性の要因として、次のようなものがあります。
| 犬 | 猫 | |
| ウイルス性 | 犬アデノウイルス1型(CAV-1) 犬ジステンパーウイルス(CDV) | 猫伝染性腹膜炎(FIP)ウイルス 猫免疫不全ウイルス(FIV)(猫エイズ) 猫白血病ウイルス(FeLV) 猫ヘルペスウイルスI型(FHV-1)(猫風邪) 猫肉腫ウイルス(FSV) |
| 細菌性 | ブルセラ レプトスピラ バルトネラ ボレリア | バルトネラ(猫ひっかき病) |
| 真菌性 | アスペルギルス アクレモニウム クリプトコックス ヒストプラズマ | カンジダ クリプトコックス ヒストプラズマ コクシジオイデス ブラストミセス |
| プロトゾア性 | トキソプラズマ ネオスポラ | トキソプラズマ |
| 寄生虫性 | ハエ幼虫 住血線虫 犬糸状虫(フィラリア症) 犬鉤虫 犬回虫 | ハエ幼虫 |
犬ではこの他に、リケッチア性としてエールリヒア、アナプラズマがあります。
犬と猫の感染症に関するブログ記事はこちらからご覧ください。
【解説】眼が!鼻汁が!くしゃみが!子猫も成猫も。猫風邪について
【解説】発症すると致死率が非常に高い!猫伝染性腹膜炎(FIP)について
非感染性の原因
ぶどう膜炎の非感染性原因は、目の疾患によるものと全身性疾患によるものに分けられます。
目の疾患によるもの
1.免疫介在性ぶどう膜炎
- 水晶体起因性ぶどう膜炎(LIU):白内障の進行による。
- ぶどう膜皮膚症候群:フォークト・小柳・原田症候群(VKH)とも言われる。メラノサイトに対する自己免疫疾患。シベリアン・ハスキー、秋田犬、サモエドなどの大型犬に好発。
- 角膜潰瘍誘発性ぶどう膜炎:角膜潰瘍による。
- 外傷性ぶどう膜炎:眼球の外傷、眼内手術による。短頭種での外傷は眼球脱出がおこりやすく、長頭種では眼球破裂になることも。
- 色素性ぶどう膜炎:水晶体への色素沈着などによる。続発性緑内障をおこしやすい。ゴールデン・レトリバー、グレード・デンに好発。
2.眼内腫瘍(原発性腫瘍)
犬で黒色腫や上皮系腫瘍、猫では黒色腫や猫眼肉腫によるものが多くみられます。
3.その他
緑内障、水晶体の脱臼、網膜剥離、結膜炎、角膜炎、強膜炎、眼窩膿瘍、視神経炎などを原因とするものがあり、これらは二次的にぶどう膜に炎症が起きてぶどう膜炎を発症します。
白内障や緑内障に関するブログ記事はこちらからご覧ください。
【解説】目が白くなった!モノにぶつかるようになった!犬と猫の白内障について
【解説】目が大きくなる!失明の危険がある!犬と猫の緑内障について
全身性疾患によるもの
- 高脂血症 :血液房水関門の破綻や房水に流入した脂質によって発生する。前部ぶどう膜炎で見られる。
- 糖尿病 :犬では、糖尿病白内障からの水晶体起因性ぶどう膜炎をおこしやすい。高脂血症や角膜潰瘍から糖尿病になり、二次的にぶどう膜炎になる
- 高血圧 :血液眼関門の破綻による。眼内出血をおこすことがある。前部ぶどう膜炎よりも後部ぶどう膜炎が多い。犬よりも猫で多い。
- 血液凝固疾患:血小板減少症などの凝固異常による。眼内出血をおこすことがある。
- 毒血症 :子宮蓄膿症など
- 過粘稠度症候群:血中グロブリン濃度の上昇により血液粘稠度が増加することによる。眼内出血をおこすことがある。
- 肉芽腫性髄膜脳炎(GME):視神経炎や視神経乳頭周囲の炎症や出血などをおこす。
- 転移性腫瘍 :眼内に転移する腫瘍として、犬猫ともリンパ腫が最も多くみられる。
- 薬剤性:一部の点眼薬により、血液房水関門が破綻することで、前部ぶどう膜炎を起こすことがある。
- 放射線障害:頭部の腫瘍に対する放射線治療による。放射腺障害により白内障を発症し、水晶体起因性ぶどう膜炎を起こすこともある。
- 特発性:原因が特定できないものをいい、もっとも多くみられる。
- その他:歯周疾患 など
糖尿病のブログ記事はこちらからご覧ください。
【解説】人もペットもかかると一生治療!犬と猫の糖尿病について
ぶどう膜炎にかかりやすい犬種・猫種
犬種・猫種とも性別や年齢に関係なく発症します。ただ、遺伝的にかかりやすい犬種として、秋田犬、ミニチュア・ダックスフンド、サモエド、シベリアン・ハスキーなどがあげられます。
- ぶどう膜皮膚症候群(VKH):シベリアン・ハスキー、秋田犬、サモエドなどの大型犬に好発
- 色素性ぶどう膜炎:ゴールデン・レトリバー、グレード・デンに好発。
また、ぶどう膜炎の原因となる疾患の好発犬種も、二次的にぶどう膜炎を発症する可能性があり注意が必要です。
- 白内障:アメリカン・コッカー・スパニエル、トイ・プードル、ビーグル、柴犬、キャバリア、ペルシャ系の猫 など
- 緑内障:柴犬、アメリカン・コッカー・スパニエル、シベリアン・ハスキー、バセット・ハウンド、ボストンテリア など
- 糖尿病:トイ・プードル、ミニチュア・ダックスフンド、ミニチュア・ピンシャー、ジャックラッセル・テリア など
- 免疫介在性血小板減少症:シーズー、トイ・プードル、マルチーズ など
- 高脂血症:ミニチュア・シュナウザー など

ぶどう膜炎の診断
問診・視診・身体検査
全身状態を確認し、疑われる原因を推定します。体温、心拍数、呼吸数などのバイタルサインや体表リンパ節の腫脹なども確認します。
眼科検査
- スリットランプ(細隙灯顕微鏡)検査:角膜、前房、虹彩、瞳孔、水晶体などを観察し、目の状態を確認します。
- 眼底検査 :網膜浮腫や網膜剥離などの変化がないかを確認します。
- 眼圧検査 :眼圧が低下していないかを確認します。
- フルオレセイン検査:角膜上皮に異常がないかを確認します。
- 眼球超音波検査:眼底検査と併用することで、より詳細な眼球の状態を観察できます(当院では対応しておりません)。
- 隅角検査 :隅角を観察し、房水の産生や流出に問題がないかを確認します(当院では対応しておりません)。
また、全身性の疾患が原因となることがあるため、次のような一般的な検査も行います。
- 血液検査:高脂血症、糖尿病、感染症
- レントゲン検査
- 超音波検査
ぶどう膜炎の治療
ぶどう膜炎の治療は、次の3つのポイントがあります。一部を除いて、多くは内科的な治療が中心になります。
- ぶどう膜の炎症を抑える
- 原因となっている疾患を治療する
- 合併症を防ぐ
内科的治療
炎症を抑えるため、主にステロイド剤や非ステロイド剤(NSAIDs)の抗炎症薬や免疫抑制剤を用います。内服や点眼で投与し、症状によって使用する薬剤や投与期間が異なります。原因が判明している続発性ぶどう膜炎は、原因疾患を治療することでぶどう膜炎も治せる可能性があります。原因が特定できない特発性の場合は、症状を緩和する治療がメインとなります。
ぶどう膜炎の後遺症としては緑内障が多くみられます。また、再発も多く、治療がうまくいっても定期的に受診する必要があります。
外科的治療
水晶体起因性ぶどう膜炎、外傷性白内障、リンパ腫以外の眼内腫瘍は、手術にて水晶体や眼球を摘出することがあります。
ぶどう膜炎の予防
ぶどう膜炎の原因が多くは特発性であるため、ぶどう膜炎を予防することは難しいところです。しかし、原因となる外傷や感染症などを避ける方法や、毎日の健康管理から予防することはできます。
- 咬傷や外傷を避けるために、室内飼いにする(特に猫)
- 定期的に爪切りをして外傷しないようにする
- 感染症の発症を予防するために混合ワクチンの接種を行う
- 定期的に健康診断を受診して、ぶどう膜炎の原因となる疾患を早期発見する
- 避妊手術を行い、子宮蓄膿症を予防する
ワクチン接種や子宮蓄膿症、避妊手術のブログ記事はこちらからご覧ください。
さいごに
ぶどう膜炎は、すぐには命に関わる病気ではないため放置しがちです。ただ、緊急性の高い緑内障を引き起こす可能性があるため、注意が必要な病気でもあります。日頃から様子を観察して、目が赤くなったり目を気にしているようなことがあれば早めに受診するようにしましょう。
当院ではエビデンスを元に検査・診断・治療を行っています。
犬と猫のぶどう膜炎について不明点やご相談があれば、当院までお電話もしくはLINEにてお問い合わせください。
21動物病院-おおたかの森-
千葉県流山市おおたかの森北2-50-1 GRANDIS 1階
TEL: 04-7157-2105
Web予約: https://wonder-cloud.jp/hospitals/21ah_nagareyama/reservationsonder
LINE: @092jvjfm
執筆:獣医師 一色
監修:獣医師 院長 坂本




