【解説】目を気にしてる!まつ毛が刺さってる!犬の睫毛異常について
2025/06/22
流山市、柏市、野田市のみなさんこんにちは。
流山市おおたかの森にある、21動物病院-おおたかの森-です。
今回は、犬の睫毛異常について解説します。
睫毛異常とは
睫毛(まつげ、しょうもう)は、上下の瞼(まぶた)の縁に生えている細い体毛で、外界からの異物や光などから目を守るために重要な役割をしています。睫毛は本来は生える場所や生え方が決まっていますが、何らかの異常によって正常とは異なる場所から生えたり、角膜の方向に生えてしまうことで、眼球を刺激し痛みを生じるなど様々な症状を引き起こします。これを睫毛異常といい、犬で多くみられますが、猫ではまれです。
犬の睫毛異常の分類
犬の睫毛異常は、主に睫毛重生(しょうもうじゅうせい)、睫毛乱生(しょうもうらんせい)、異所性睫毛(いしょせいしょうもう)の3つのタイプに分けられます。

睫毛重生
睫毛がマイボーム線の開口部から生えていて、通常の睫毛よりも内側(角膜側)に生えています。トイプードル、コッカー・スパニエル、ミニチュアダックス、シーズーなどで多くみられます。
睫毛乱生
睫毛の生える方向が正常とは異なり、角膜に向かって伸びてしまうことで角膜を刺激している状態です。「逆さまつ毛」とも呼ばれます。シーズー、パグ、フレンチブルドッグなどの短頭種で多くみられます。短頭種では、睫毛だけでなく鼻皺壁(鼻の上のシワ)や涙丘(目頭のあたり)の被毛によっても、角膜への刺激がよくみられます。
異所性睫毛
睫毛が本来とは異なる場所から生えている状態です。上眼瞼で多く発生し、マイボーム腺から生えた睫毛が瞼の裏の結膜を貫通して、角膜を刺激してしまいます。発見が難しいため、角膜炎や角膜潰瘍に発展することがあります。若齢犬に多く、幅広い犬種で発生しますが、シーズー、ペキニーズ、パグなどの短頭種で多くみられます。
また、似たような疾患に、瞼が内側にめくれてしまう眼瞼内反症があります。遺伝的な要因や毛根部の炎症などにより、瞼が内側にめくれてしまい、睫毛や眼周囲の被毛が角膜や結膜に刺さって炎症や感染症を引き起こします。
マイボーム腺とは
マイボーム腺は、眼瞼(まぶた)の縁のやや内側、睫毛の根元付近にあります。涙液の油成分を分泌して、涙液の蒸発を防いで目を潤すために重要な役割をしています。感染を起こしたり線が詰まったりして炎症が起こるとマイボーム腺炎になり、「麦粒腫(ばくりゅうしゅ)」や「霰粒腫(さんりゅうしゅ)」を引き起こします。また、高齢犬では腫瘍化したマイボーム腺腫が多くみられます。
マイボーム腺に関連するブログ記事はこちらからご覧ください。
犬の睫毛異常の原因
遺伝的な要因や、外傷や炎症によるものなどが原因として考えられています。
犬の睫毛異常の症状
睫毛(および眼瞼周囲の被毛)により角膜が刺激されることで、次のような症状がみられます。
- 涙が多い(流涙症)
- 目ヤニが多い
- 目をこする
- 目がしょぼしょぼする(目を細める)
- 目の痛み
- 目の充血(結膜炎)
- 角膜の傷(角膜炎)
- 角膜潰瘍
特に、異所性睫毛の場合は、睫毛が角膜や結膜へ刺激を与えることで痛みを生じさせ、角膜炎や結膜炎、さらには角膜潰瘍を引き起こすことがあります。
また、睫毛異常と症状が似ている疾患・病態に、異物混入やドライアイなどがあります。
涙に関連する過去のブログ記事はこちらからご覧ください。
【解説】眼が!鼻汁が!くしゃみが!子猫も成猫も。猫風邪について
犬の睫毛異常の診断
睫毛異常の診断のため、症状に応じて次の検査を行います。
視診・触診
顔を観察し、両眼の状態、目の動きや全身状態を確認していきます。
フルオレセイン検査
角膜に傷がないか、色素を付けて観察する方法です。角膜表面の傷の位置や深さなどの状態がわかります。
スリットランプ(細隙灯)検査
光をあてて、睫毛の状態を確認するとともに、角膜を中心とした目の組織に異常がないかを拡大して観察します。
シルマーテスト
涙液量を測定し、ドライアイかどうか、また涙液不足によって角膜障害などを起こしていないかを評価します。
これらの他に、眼圧検査や眼底検査を行うことがあります。
犬の睫毛異常の治療
睫毛異常の種類によって、治療方法が少し異なります。角膜に異常がある場合には、その治療も並行して行います。症状が軽い場合は、経過観察することがあります。
睫毛重生
原因となる睫毛を除去します。抜去しても、数週間から数か月でまた生えてくるため、定期的な除毛処置が必要になります。永久脱毛する場合には、睫毛の毛包を除去または破壊する処置を行います。手術には、凍結、炭酸ガスレーザーや外科的切除などがあります。
睫毛乱生
原因となる睫毛を除去します。短頭種は、睫毛や被毛が目に接触しないように形成外科手術を行うことがあります。
異所性睫毛
多くは、該当する睫毛の毛根のある結膜ごと切除します。
犬の睫毛異常の予防と注意
残念ながら、睫毛異常を予防する方法はありません。睫毛は難しいですが、被毛が長い犬種は、目にかからないように被毛をカットすることで角膜を傷付けないように予防することはできます。
睫毛乱生(逆さまつ毛)を見つけた場合、無理に抜こうとすると角膜や結膜を傷つける恐れがありますので、必ず動物病院に相談するようにしましょう。

さいごに
涙や目ヤニが多かったり、目を気にしているような様子があれば、睫毛異常あるいは眼の疾患の可能性があります。症状が進行して角膜を傷つけてしまう前に早めに受診するようにしてください。
眼の病気に関連するこれまでのブログ記事はこちらからご覧ください。
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当院ではエビデンスを元に検査・診断・治療を行っています。
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執筆:獣医師 一色
監修:獣医師 院長 坂本




