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    【解説】春から秋はマダニに注意!猫と犬のSFTSについて

    2025/06/30

    流山市、柏市、野田市のみなさんこんにちは。

    流山市おおたかの森にある、21動物病院-おおたかの森-です。

     

    今回は、マダニによって媒介されるSFTSについて解説します。

     

     

    SFTSとは

    SFTS(Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome)は 、重症熱性血小板減少症候群のことをいい、マダニ媒介感染症です。SFTSは、もともと人の病気として知られ、西日本を中心に発生が確認されていました。動物では、2017年4月に和歌山で猫の感染が確認されてから、犬やチーター(展示動物)でも確認されるようになりました。猫と犬の発症は年々増えていて、猫は2024年で180頭前後の発症例があり、これは人の1.5倍にあたります。犬の発症数は猫より少なく、猫の10分の一程度です。2025年5月に茨城県の飼い猫で関東初感染の事例もあり、近年は東日本にも広がりをみせています。SFTSは、発症した猫や犬から人への感染も確認されていることから、人獣共通感染症(ズーノーシス)動物由来感染症として公衆衛生上、問題視されています。

     

    SFTSの原因

    SFTSの原因はSFTSウイルスBandavirus dabieense)で、ブニヤウイルス目フェヌイウイルス科バンダウイルス属に分類される1本鎖RNAウイルスです。このウイルスは主にフタトゲチマダニが保有していて、ウイルスを保有するマダニの吸血や、感染動物の血液や体液と接触(接触感染、飛沫感染)することでウイルスが伝播されます。SFTSの発症は、マダニの活動期である2月から10月にかけて集中します。冬季では、猫は人よりも多く発生がみられるため、一年を通して感染する可能性があります。また、マダニを介さない「人-人感染」や「猫-人感染」「犬-人感染」「猫-猫感染」も確認されています。

     

    SFTSウイルスを媒介するマダニとは

    これまでにSFTSウイルスの遺伝子が検出されているマダニに、フタトゲチマダニ、ヒゲナガチマダニ 、オオトゲチマダニ、キチマダニ、タカサゴキララマダニがいます。ここでは、代表的なフタトゲチマダニについて解説します。フタトゲチマダニ(Haemophysalis longicornis)は、ダニ目マダニ亜目マダニ科チマダニ属で日本全国にいます。獣や鳥の血液を唯一の栄養源としており、幼ダニ(脚6本)、若ダニ(脚8本)、成ダニ(脚8本)の成長過程で宿主を変えて一回ずつ吸血するといわれています。成虫は主に4~10月でみられます。ふだんはイネ科などの植物の茎や葉に潜んでいて、動物が通るのをひたすら待っています。動物が近づくと、前脚の触角「ハラ―氏器官」で動物の体温や吐く息(二酸化炭素)や振動などを感じとって飛びつき、2~5日かけてゆっくり吸血します。吸血の目的は、成長のためや卵をつくるためです。大きさは約3mmほどですが、吸血すると約10mmに膨れ上がります。

     

     

    マダニとダニの違いは?

    マダニとダニは名前が似ていますが、どのような違いがあるのでしょうか。同じ節足動物のダニ目ではありますが、次のような生態の違いがあります。

     

    マダニダニ
    代表例フタトゲチマダニ、キチマダニ、オオトゲチマダニ、ヤマトマダニ などチリダニ、コナダニ、ツメダニ、ヒゼンダニ、タカラダニ など
    生息場所主に屋外主に屋内
    発生時期主に4~10月(一年中)梅雨から秋(種類によっては一年中)
    寄生場所人や動物カーペット、ベッド、布団、ソファ、畳、家具の隙間
    食べ物人や動物の血液ホコリ、カビ、フケ、垢など(ツメダニは他のダニ)
    大きさ成虫で1~5mm程度0.3~1mm程度
    病気SFTS、ライム病、日本紅斑熱、ダニ媒介脳炎、バベシア症、アナプラズマ症 などダニアレルギー(ハウスダストなど)、アトピー性皮膚炎 など
    予防方法駆除薬部屋の掃除

     

    ダニに関するブログ記事は、こちらからご覧ください。

    【解説】ミミヒゼンダニ症(ミミダニ)について

    【解説】みんな持ってるニキビダニ。あなたの愛犬も発症するかも?ニキビダニ症について。

     

     

    SFTSの症状

    猫におけるSFTSの症状

    猫がSFTSに感染すると、潜伏期間約6~14日を経て発症します。症状としては、次のようなものがあります。

    • 急性発症
    • 元気衰退
    • 食欲低下
    • 発熱(40℃以上)
    • 黄疸
    • 嘔吐・下痢・血便などの消化器症状 など

     

    特に、ネコ科動物は感受性が高く、重症化しやすいといわれています。多くは急変し、数日以内には死亡してしまいます。猫での致死率は約60~70%以上にもなります。

    犬におけるSFTSの症状

    犬は、多くは軽症不顕性感染と考えられています。発症した場合は猫と同様の症状があり、まれに重症になり致死率は約30%です。さらに人への感染事例もあるので注意が必要です。2017年6月に徳島で犬の初発症が認められています。

     

     

    SFTSの診断

    まず臨床症状と血液検査で、SFTSの可能性があるかを判断します。SFTS疑いとなった場合はウイルス学的検査を実施して、その結果によって確定診断となります。

     

    臨床症状

    • 発熱
    • 元気・食欲低下
    • 黄疸
    • 消化器症状(嘔吐・下痢・血便など)
    • マダニの寄生

     

    血液検査

    • 白血球数減少、血小板数減少
    • ALT上昇、AST値上昇、 CPK値上昇、T-bil値上昇
    • SAA上昇(猫)
    • CRP上昇(犬)

     

    確定診断

    確定診断のために、RT-PCR検査およびELISA法による抗体検査を行います。

    RT-PCR検査

    SFTSウイルス遺伝子を検出するために行う検査で、急性期には検出されやすいです。主に血清、時には口腔スワブ(ぬぐい液)、肛門スワブ、糞便、尿などを使います。

     

    陽性の場合は・・・

    SFTSが確定します。

    陰性の場合は・・・

    SFTSではないと完全に否定できません。PCRの感度が100%ではないためで、検体中のウイルス量が少ない場合でも陰性となることがあり、抗体検査が必要になります。

     

    抗体検査

    SFTSウイルス特異抗体を検出するための検査で、主にELISA法を行います。抗SFTSウイルス抗体は発症後1週間で検出可能とされていて、陽性の場合、急性期は免疫グロブリン(Ig)M の上昇がみられます。また、ペア血清(IgMとIgG)での検査では、数週間後にIgM消失とIgG上昇が確認でき、IgGについては5年くらいは検出できるとされています。RT-PCR検査と併用することで、診断がより確実なものになります。

     

     

    猫や犬がSFTSと診断されたら

    SFTSウイルスは、動物も人にもどちらにも重い症状を引き起こします。

    SFTSを発症した猫や犬の血液、体液(唾液や涙など)、排泄物(おしっこやうんち)、嘔吐物には大量のウイルスが含まれるため、ウイルスを広げないようにするためにも、感染した猫や犬は動物病院に預けてください。

    また、人の潜伏期間は約10~14日といわれています。飼い主様は、14日間は検温し体調に注意してお過ごしください。もし、発熱、下痢、嘔吐、頭痛、筋肉痛などの症状が出たら、すぐに医療機関を受診し、猫や犬がSFTSと診断されたことをお伝えください。

     

     

    SFTSの治療

    残念ながら、SFTSに有効な治療法はありません。皮下輸液や制吐剤、抗けいれん薬など症状に応じた対症療法が中心になります。二次感染を予防するために抗菌薬も投与します。完全屋内ではない飼育状態、発熱、黄疸(猫)、急激な活動の低下、食欲低下や白血球減少症、血小板減少症などがみられた場合はSFTSと疑い、ご家族や他の動物への感染拡大を防止するために確定検査の前でも原則入院になります。

     

    検査の結果、陽性の場合は・・・

    SFTSと確定し、入院は継続になります。猫は進行が早く、重症の場合は発症から5日程度で命を落とします。回復できる場合は、発症から7日あたりで回復してきます。入院したまま再検査し2回陰性になったら、退院できます。ただ、症状が落ち着いてもウイルスの排泄が続いている可能性があり、家族や同居動物との濃厚接触を避けるため1週間はケージで飼育する必要があります。

    陰性の場合は・・・

    症状によって入院が継続されるか、退院して通院治療になります。

     

     

    SFTSの予防

    SFTSに感染させない、感染しないためには、マダニを避けることが何よりの予防になります。予防の方法は次のようなものがありますので、ぜひ参考になさってください。

     

    猫や犬を感染させないための予防

    マダニ駆除薬の投与【猫・犬】

    マダニがつかないように、定期的・継続的なダニ駆除薬での予防が最も効果的な予防です。冬でも感染事例があるため、屋外に出かける猫は、マダニの通年予防が推奨されます。ただ、完全予防とはいえず、予防しても発症例はあります。駆除剤については、食べるタイプやスポットオンタイプが効果が長く続くとされています。ダニが吸血して駆除するタイプと接触だけで駆除するタイプなどいろいろな駆除剤があります。詳しくは獣医師に相談ください。

     

    また、ダニを発見した際は、そのままの状態で受診してください。無理に取ろうとすると、マダニの口器が残ってしまうことがあり、ウイルスの侵入や皮膚炎につながります。もし取れてしまった場合は、患部や手を十分に消毒してください。

     

    マダニを避けた行動【犬】

    ダニの活動期である春から秋にかけては、草むらを避ける行動が有効です。山や川だけではなく、公園にもダニが多く潜んでいます。もし出かける場合は、犬用のウエアやダニ除けスプレーなどを活用しましょう。

     

    ブラッシングと全身のチェック【犬】

    犬の散歩の後は、犬の体を入念にチェックして、ダニがついていないかを確認しましょう。特に耳裏、目の周り、首回り、足の指の間や先、お腹についていることが多いです。ブラッシングでもダニの除去に有効です。ブラッシングの後は、ブラシを洗浄するのを忘れないようにしましょう。

     

     

    室内飼育の徹底【猫】

    マダニが多く潜む草むらや公園での活動は、マダニとの接触を増やしてしまいます。SFTSだけでなく他の感染症から守るためにも、完全室内飼育にしましょう。

     

    生活環境の整備【猫・犬】

    ダニは高湿度を好むため、除湿と換気をすることで効果があります。室内の湿度を50%以下にするようにしましょう。夏は、除湿機やエアコンを利用して除湿しましょう。冬は、暖房を使うとダニが繁殖しやすくなります。寝具やソファの洗浄や掃除もしましょう。特に、週1回以上高温での洗濯が有効です。

     

    猫・犬から人への感染を防ぐための予防

    SFTSは人獣共通感染症のため、過剰なスキンシップは控えるようにしましょう。

     

    • 猫・犬と家族とで寝具や居場所をしっかり分けましょう
    • 猫・犬に触ったら、石鹸でしっかり手を洗いましょう。
    • 草むらのある場所に行くときは、長袖・長ズボン・帽子や手袋を着用してダニから回避しましょう。
    • 帰宅したら、手洗いうがいを励行しましょう。
    • こまめに室内や車内の掃除をしましょう。
    • 日頃から猫や犬の健康状態を観察しましょう。

     

    SFTSは、マダニが吸血しなくても感染した血液や唾液などの体液から感染する可能性があります。猫や犬が体調不良のときは、家族が咬まれたり引っかかれたり舐められたりしないよう十分注意しながら受診してください。

     

     

    さいごに

    SFTSは人の病気ではなく、猫や犬にも脅威をもたらす感染症です。SFTSウイルスを媒介するマダニは、山や川だけでなく庭にも潜んでします。毎日の予防で感染を防げる可能性が高くなりますので、こまめな対策で動物や家族の健康を守っていきましょう。

     

     


    当院ではエビデンスを元に検査・診断・治療を行っています。

    SFTSについて不明点やご相談があれば、当院までお電話もしくはLINEにてお問い合わせください。

     

    21動物病院-おおたかの森-

    千葉県流山市おおたかの森北2-50-1 GRANDIS 1階

    TEL: 04-7157-2105

    Web予約: https://wonder-cloud.jp/hospitals/21ah_nagareyama/reservationsonder

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    執筆:獣医師 一色

    監修:獣医師 院長 坂本