ブログ|流山おおたかの森駅で動物病院をお探しの方は21動物病院 -おおたかの森-まで

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    【解説】人もペットもかかると一生治療!犬と猫の糖尿病について

    2025/05/14

    流山市、柏市、野田市のみなさんこんにちは。

    流山市おおたかの森にある、21動物病院-おおたかの森-です。

     

    今回は、かかると生涯にわたって治療が必要になる糖尿病について解説します。

     

     

    糖尿病とは?

    糖尿病は、インスリンの分泌や作用が不足することで起こる内分泌疾患です。人で良く知られている病気ですが、犬や猫でもかかります。最近では猫で増加傾向にあります。一度発症すると、生涯にわたり治療が必要な病気です。

     

     

    インスリンとは?

     

     

    血液中のブドウ糖の濃度(血糖値)は、膵臓から分泌されるいくつかのホルモンによって、一定になるように調節されています。代表的なホルモンとして、膵臓のランゲルハンス島(膵島)にあるα(アルファ)細胞から血糖値を上昇させる作用のグルカゴンが、β(ベータ)細胞からは血糖値を低下させる作用のインスリンが分泌されています。ここでは、糖尿病に重要なインスリンの作用について解説します。

     

    食べ物が体内に入ると、栄養素の一部は糖となり腸から吸収され、血液で全身に運ばれます。血液中では糖が多くなる(血糖値が上昇する)ためインスリンが分泌され、インスリンの働きで筋肉や脂肪などの細胞に糖が取り込まれ、血糖値が一定の範囲まで下がります。

     

    インスリンは、糖やアミノ酸などの細胞内への取り込みや、肝臓で筋収縮などに必要なグリコーゲン合成、脂肪細胞で中性脂肪への合成を促し、エネルギーを体に蓄える作用があります。

    また、腎臓の糸球体において、血液を濾過(ろか)してできた尿の原料は尿細管上皮で再吸収されますが、インスリンは尿細管でのナトリウムの再吸収を増加させる作用があります。

     

    ここで、インスリンの不足や作用の不具合が起こると、血中の糖を体内に取り込めなくなり高血糖になります。膵臓はインスリンを分泌するよう作用し続けますが、そのうち膵臓は疲弊してインスリンが分泌できなくなってしまうため、高血糖の状態が続き糖尿病となってしまいます。

    インスリンの不足の原因としては、インスリンの分泌低下、インスリン分泌の抵抗性の増加、インスリン作用の低下があります。

     

     

    糖尿病の原因

    糖尿病は、大きく2型に分けられます。

     

    Ⅰ型糖尿病(インスリン依存性)

    膵臓の障害により、インスリンを分泌するβ細胞が破壊され、十分なインスリンが分泌できなくなる病態です。ただ、原因不明の特発性も多く、先天的な要因や、免疫異常や膵炎なども原因として考えられています。重篤化すると、急性代謝障害である糖尿病性ケトアシドーシスを引き起こして、命に関わることがあります。

     

    犬はⅠ型が多く、小型犬、中齢~高齢の雌で多い傾向にあります。

     

    「膵炎」に関連した過去の記事は、こちらから。

     

    Ⅱ型糖尿病(インスリン抵抗性)

    インスリンが効きづらくなる何らかの原因があることにより、インスリンが分泌されていても血糖値が下がりにくくなっている病態です。このような状態としては、発情後や妊娠中、クッシング症候群などのホルモン性疾患、プロゲステロン(性ホルモン)製剤やステロイドの常用が挙げられます。

     

    高齢猫で多く、肥満が大きな要因となっています。老化による内分泌機能低下や運動不足がリスク要因となっており、膵臓疾患、長期間のストレスや偏った食事によっても発症しやすくなります。

     

     

    糖尿病の症状

    糖尿病の症状は、次のようなものが挙げられます。

     

    初期症状

    • 多飲多尿
    • のどの渇き
    • 食欲増加
    • 体重減少

    進行すると、

    • 食欲低下
    • 元気消失
    • 嘔吐・下痢
    • 踵(かかと)をつけて歩く(猫で特徴的)
    • 白内障(犬に多い)
    • 糖尿病性ケトアシドーシス
    • 高浸透圧高血糖症候群
    • 末期は昏睡状態

     

    典型的な症状は、多飲多尿です。水をガブガブのみ、尿の量や回数が増えます。この症状は、糖尿病だけではなく、クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)やアジソン病(副腎皮質機能低下症)、甲状腺機能亢進症、子宮蓄膿症、慢性腎臓病、尿路感染症などでもみられます。

     

    食欲があり、たくさん食べているにも関わらず体重が減少します。糖を細胞に取り込む作用が低下する影響で栄養が吸収できないことから、エネルギー要求量が増えて食欲が上がるためです。これを繰り返していくと栄養状態が悪くなり、だんだん体重が落ちていき、そのうち食欲も減退していきます。

     

    また、インスリンが低下して血中の糖が増えると、血管が硬くなり傷つきやすくなるため、腎臓の糸球体ろ過機能や再吸収機能が低下します。本来は糸球体で濾過されない糖が濾過されてしまい、さらに糖の浸透圧性の毛細管引力により尿細管上皮の尿の濃縮ができず、尿中に糖が出てしまいます。

     

    糖尿病性白内障は犬に多く、両側の眼に発症します。若齢の犬でも発症し、進行が早く、視力低下や失明を起こすことがあります。

     

    また、免疫が低下するため尿路疾患や皮膚疾患を発症しやすなったり、慢性腎不全や高血圧を起こすことがあります。

     

    重篤な合併症として、糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)と高浸透圧高血糖症候群(HHS)があります。DKAは、Ⅰ型糖尿病に多くみられ、インスリンの絶対的不足によって高血糖、ケトン体の産生増加、代謝性アシドーシスが引き起こされる病態です。急性に起こり、意識障害や昏睡などに発展して死亡することがあります。

    一方、HHSはⅡ型糖尿病に多くみられ、インスリンの相対的な不足により急激に高血糖になり強い脱水状態が起こる病態で、DKAよりも緩徐です。

     

    「クッシング症候群」「猫の甲状腺機能亢進症」「多飲多尿」に関連した過去の記事は、こちらから。

     

     

    糖尿病の診断

    問診

    基礎疾患や既往歴を確認します。クッシング症候群や発情、妊娠などインスリン抵抗性を引き起こしている原因についても確認し、除外できる疾患や症状があるかを判断します。

     

    臨床症状

    多飲多尿や体重減少など前述したような症状があるかを確認します。

     

    血液検査

    血中のブドウ糖(グルコース)濃度を測定します。犬の基準範囲は空腹時血糖濃度が50~100mg/dLで、それ以上になると高血糖として判断されます。猫では、精神的なストレスにより一時的に高血糖になることがあるため、慎重な判断が必要です。糖尿病の場合、インスリンは低値を示すことが多く、グルカゴン高値、リパーゼ高値やアミラーゼ高値、カリウム低値を示すことが多いです。

    また、血液中のたんぱく質に糖が結合した糖化アルブミンやフルクトサミンも測定することがあります。これらは一回の採血で平均的な血糖値の変化が確認できる血糖値マーカーで、糖化アルブミンは1~3か月程度、フルクトサミンは2~3週間を反映しています。

     

    尿検査

    尿中の糖が陽性になったり、ケトン体が検出されることがあります。また、糖尿病は膀胱炎の併発が多いため、細菌や炎症細胞が検出されることがあります。

     

    レントゲン検査や超音波検査

    肝臓や膵臓、腎臓について、大きさや形を確認します。

     

    眼科検査

    糖尿病では目の疾患が多くみられるため、白内障やブドウ膜炎などの検査をします。

     

     

    糖尿病の治療

    糖尿病の治療の目的は、血糖値をコントロールし、症状を抑えること、さらに併発疾患の治療や合併症を抑制することです。原因が判明すればそれを除去したり治療できますが、原因が不明であれば根治は難しく長期的な治療が必要になります。さらに、糖尿病は繰り返し発症しやすく、血糖値を適切に保つために、定期的な受診が必要になります。

     

    主な治療方法は、インスリン療法経口血糖降下剤食事療法です。

     

    糖尿病のインスリン療法

    血糖値のコントロールのため、毎日インスリンの注射が必要になります。かかりつけの動物病院の獣医師の指導のもと、ご自宅で注射していただくことが多くなります。

    まずは血糖値がどのように推移するかを確認するため、インスリンを注射して時間経過ごとに血糖値を測定します。インスリンがどのくらい体に慣れているか、量が適度であるかなどを確認し、定期的なモニタリングをしていきます。最終的には、犬は血糖値が一日で100~300㎎/㎗の範囲を目標に、猫では300㎎/㎗以下を目安にコントロールできるようにします。

     

    なお、血糖値が目標値を下回ると低血糖の症状がでてきますので、注意が必要です。血糖値のコントロールができた場合でも、症状が再燃することがあるため、定期的な血糖モニタリングをする必要があります。また、一時的に症状がよくなった場合などインスリン注射の量を変えたくなるかもしれません。自己判断は大変危険なので、獣医師が決めた時間と用量をしっかり守るようにしてください。

     

    犬の糖尿病はインスリン不足(Ⅰ型糖尿病)が多いですが、中には猫で多くみられるタイプのインスリン抵抗性(Ⅱ型糖尿病)を示すことがあります。インスリン抵抗性を引き起こす原因となる基礎疾患をもっているかについては、インスリン投与量が1.5~2.0単位/kgを超えていればその可能性が高いと判断されます。

     

     

    糖尿病の内服治療

    猫の新しい糖尿病治療薬として、経口血糖降下剤が登場しました。従来のインスリン注射による治療ではなく、一日1回液状のお薬を飲ませる(舐めさせる)簡単な方法です。このお薬は、腎臓の尿細管で糖の再吸収を阻害する作用があり、尿中への余分な糖の排出を促して血糖値を低下させます。また、早い段階で血糖値を正常範囲まで下げる効果が期待できます。

     

    経口血糖降下剤の詳細な内容については、当院にお問い合わせいただくか、こちらからどうぞ。

    https://animal-health.boehringer-ingelheim.jp/pet-owner/products/senvelgo

     

    糖尿病の食事療法

    糖尿棒の治療には食事管理が重要です。糖尿病と診断されたら、今までのフードから療法食に変えるようにしましょう。糖尿病用の療法食は、糖質が制限されており、食物繊維が豊富に含まれているため、急激な血糖値の上昇を防ぐ効果が期待されています。フードの量は、1日のエネルギー量を基準にして、血糖値や体重変化により調整します。治療が始まると体重減少が収まっていきます。悪化させないためにも、肥満にならないように気を付けましょう。

     

    どうしても療法食を食べない場合は、一般のフードでも構いません。食べなければ低血糖になってしまいますので、継続して食べてもらうことが重要です。ただし、半生フードは、添加物や糖質(炭水化物)が多く含まれているため与えないようにしてください。

     

    また、手作り食を検討されるかもしれませんが、栄養バランスには十分注意して与えるようにしてください。

    *手作り食に関する指導は、当院では実施しておりません。

     

     

    糖尿病の予防

    日常生活を見直し、栄養のバランスがとれたフードを与え、適切な食事管理をしましょう。また、適度な運動をすることで、血糖値が下がりやすくなります。散歩など毎日運動させましょう。クッシング症候群など医原性の内分泌疾患を発症していると糖尿病が発症しやすくなりますので、罹患している場合は適切な治療をしましょう。発情を抑えるため、避妊手術をしておきましょう。性ホルモンの分泌を抑えることで、糖尿病以外にも卵巣や乳腺の腫瘍を予防できます。

     

    「発情」「避妊手術」「乳腺腫瘍」に関連した過去の記事は、こちらから。

     

     

    さいごに

    糖尿病は、一度かかると一生治療しなければならない疾患です。そのため、普段からの食事管理、適切な運動など日常生活での管理が重要です。もはや人と同じ生活習慣病です。犬も猫も人も家族の皆さん一緒に、規則正しい生活習慣を見直してみてはいかがでしょうか。

     


    当院ではエビデンスを元に検査・診断・治療を行っています。

    糖尿病について不明点やご相談があれば、当院までお電話もしくはLINEにてお問い合わせください。

     

    21動物病院-おおたかの森-

    千葉県流山市おおたかの森北2-50-1 GRANDIS 1階

    TEL: 04-7157-2105

    Web予約: https://wonder-cloud.jp/hospitals/21ah_nagareyama/reservationsonder

    LINE: @092jvjfm

     

    執筆:獣医師 一色

    監修:獣医師 院長 坂本