【解説】出血してる! 呼吸が苦しそう!播種性血管内凝固症候群(DIC)について
2025/10/10
流山市、柏市、野田市のみなさんこんにちは。
流山市おおたかの森にある、21動物病院-おおたかの森-です。
今回は、播種性血管内凝固症候群(DIC)について解説します。
播種性血管内凝固症候群とは
播種性血管内凝固症候群(Disseminated Intravascular Coagulation)は、英語の略称でDICとも呼ばれます。DICは、血液の凝固系と線溶系が同時に活性化している病態で、血液凝固障害です。基礎疾患や術後の続発をきっかけとして発症し、全身の血液で凝固機構の活性化が起こり、細小血管内に微小血栓が多発して血栓形成による臓器症状が現れます。また、血小板と凝固因子の消費や、多発した微小血栓の融解によって、出血症状も発生します。DICを起こすと命に関わるため、できるだけその前段階で発見し治療を開始する必要があります。

正常な血液凝固反応とは・・・
何らかの原因で血管壁が破れて出血したとき、健康な身体であれば、血管内では次のような止血作用が起こり治癒します。
- 血液の血小板が凝集して損傷部位を覆い、血小板血栓を形成する(一次止血)
- 血液凝固因子が働いて血小板粘着とフィブリン形成が始まり、それらが連結して損傷部位にフィブリン塊を形成する。一次止血よりも強固な血栓ができる(二次止血)
- 止血できると、次に線溶系が働いて血栓(フィブリン塊)の溶解が起こり、血栓は排除される(三次止血)
- 治癒する
播種性血管内凝固症候群(DIC)の原因
播種性血管内凝固症候群(DIC)を引き起こすきっかけは様々です。身体の中に組織の変化や血管異常を起こすような疾患がある場合に血液凝固が進行しやすくなることが原因で、凝固系と線溶系が同時に活性化してしまい、血液中の凝固に関わる因子が大量に消費されてしまうため本来の出血作用が機能しなくなります。
また、基礎疾患をもっている高齢犬は、発症リスクが高くなるので注意が必要です。
DICを引き起こす原因疾患として、次のようなものがあります。
- 感染症(ウイルス性、細菌性)
- 子宮蓄膿症
- 肺炎
- 敗血症
- 悪性腫瘍
- リンパ腫
- 血管肉腫
- 組織球性肉腫
- 乳腺腫瘍
- 肥満細胞腫
- 白血病
- 組織損傷
- 外傷(交通事故や落下事故など)
- 手術
- 火傷
- 炎症
- 肝炎
- 胆嚢炎
- 急性膵炎・慢性膵炎
- 過度のストレスやショック
- 花火
- 雷
- 動物病院
- 胃拡張捻転症候群(GDV)
- 熱中症
- 不適合輸血
- 重度の脱水
- 低体温 など
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播種性血管内凝固症候群(DIC)の症状
播種性血管内凝固症候群(DIC)が起こると、次のような症状が出ることがあります。症状は、単一ではなく同時に発生するのが特徴です。
- 歯茎からの出血
- 鼻出血
- 血便
- 血尿
- 尿量減少
- 無尿
- アザ
- 発熱
- 臓器機能低下
- 呼吸困難
- 意識障害 など
DICの臨床症状の特徴は内臓と体表に発生する出血で、広範な微小血栓の形成と線溶系の活性化が起こっています。特に毛細血管が密に分布している肝臓や脾臓などの臓器で血栓形成が起こることで、急性の臓器機能不全を引き起こします。出血の状態は多様で、わずかな出血から出血性ショックや広範な出血まであります。
血便についてのブログ記事はこちらからご覧ください。
播種性血管内凝固症候群(DIC)の診断
問診、血液検査、レントゲン、超音波検査、尿検査などを行い、総合的に播種性血管内凝固症候群(DIC)と診断します。特に、血液検査では凝固系検査の各項目を確認し、凝固が進んでいるか、線溶系が進んでいるかを判断することが重要になります。細かい診断基準の目安はありますが、以下の条件で当てはまれば、DICとして治療を開始します。
- DICを引き起こす原因疾患がある
- トロンビン・アンチトロンビン複合体(TAT) ≧0.4 ng/mL
上記に加えて、下記のうち、4項目以上が該当するとDIC、2~3項目以上の場合はDIC前段階と判断する場合があります。
- 血小板数の減少(<20万/μL)
- プロトロンビン時間(PT)25%延長(>12秒)
- 活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)25%延長(>25.75秒)
- フィブリノーゲン減少(<178 mg/dL)
- 抗トロンビン(AT)活性低下(<95%)
- フィブリノーゲン・フィブリン分解産物(FDP)高値(<5 μg/mL)

播種性血管内凝固症候群(DIC)の治療
播種性血管内凝固症候群(DIC)を治療するためには、原因となっている基礎疾患を治療することが最も重要です。さらに、症状に応じて、血栓に対する治療や出血に対する治療や、続発性疾患の治療、救命処置、対処療法、輸液や酸素吸入などの支持療法などを行います。治療の際は、血液検査で確認しながら状況の変化に応じて処置します。
基礎疾患の治療
播種性血管内凝固症候群(DIC)の原因となっている基礎疾患を治療します。例えば、子宮蓄膿症の場合は子宮摘出、悪性腫瘍は腫瘍摘出と化学療法、感染症は抗生物質投与などです。
血栓に対する治療
血栓による臓器障害を防ぐため、過剰に活発化している凝固を抑える効果のあるヘパリンや低分子量ヘパリンなどを点滴します。AT活性が低下しているとかえって悪化させることがあるため、血液検査で確認しながら投与します。
播種性血管内凝固症候群(DIC)の後期になると、線溶系が活性化しているため出血の危険があり、ヘパリンは使用できません。その際は、蛋白分解酵素阻害薬ナファモスタットメシル酸塩や経口抗凝固薬リバーロキサバンを投与します。
出血に対する治療
欠乏した凝固因子や血小板を補充するために、全血輸血、血漿輸血などの輸血や血液製剤であるフィブリノーゲン製剤の投与を行います。輸血を行う前に、血液が適合しているかを確認することはとても重要です。不適合輸血の場合、播種性血管内凝固症候群(DIC)を悪化させてしまうためからです。最近では、新鮮凍結血漿(FFP)の効果が注目されています。
対症療法
上記の治療に加えて、敗血症やショック、疼痛管理なども併用します。嘔吐がある場合は制吐剤マロピタントや胃酸分泌抑制剤ファモチジンの投与、また、痛みがある場合には鎮痛剤フェンタニルを点滴することが多いです。
播種性血管内凝固症候群(DIC)の予防
播種性血管内凝固症候群(DIC)そのものを防ぐ方法は、残念ながらわかっていません。しかし、DICになりやすい原因疾患を発見し治療することで、DICの発症リスクを下げることができるかもしれません。そのため、できることから予防につなげていきましょう。
- 日頃の健康チェック
- 定期的な健康診断の受診
- 暑い時間の散歩を避ける など
播種性血管内凝固症候群(DIC)を疑う症状が現れたら・・・
もし、播種性血管内凝固症候群(DIC)を疑うような症状が現れた場合、ただちに受診して治療を始めることで、命に関わる事態を回避できる可能性があります。そのため、次のような対応を行いましょう。
- まず、深呼吸して落ち着きましょう。
- 愛犬・愛猫の様子を観察し、どのような症状があるかを確認しましょう。
- 出血があったら、清潔なガーゼやハンカチなどで軽く押さえましょう。強く抑えると、症状を悪化させる恐れがあります。
- ただちに動物病院へ連絡しましょう。万が一のため、夜間や救急も対応できる動物病院があるか、事前に調べておきましょう。
- 動物病院へ移動するときは、安静に搬送しましょう。
さいごに
原因となる疾患を早めに発見して治療することで、播種性血管内凝固症候群(DIC)の発症を防げる確率が高まります。呼吸が荒い、尿や便がいつもと違うなどといった場合は、すぐに動物病院を受診するようにしましょう。

当院ではエビデンスを元に検査・診断・治療を行っています。
播種性血管内凝固症候群(DIC)について不明点やご相談があれば、当院までお電話もしくはLINEにてお問い合わせください。
21動物病院-おおたかの森-
千葉県流山市おおたかの森北2-50-1 GRANDIS 1階
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執筆:獣医師 一色
監修:獣医師 院長 坂本




