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    【解説】皮膚にシコリができた!犬の肥満細胞腫について

    2025/08/16

    流山市、柏市、野田市のみなさんこんにちは。

    流山市おおたかの森にある、21動物病院-おおたかの森-です。

     

    今回は、犬の肥満細胞腫について解説します。

     

     

    肥満細胞腫とは

    肥満細胞腫(Mast cell tumor, MCT)は、犬の皮膚や皮下にみられる悪性腫瘍です。免疫細胞の一種である肥満細胞が腫瘍化して増殖する疾患です。

     

    犬の肥満細胞腫は皮膚悪性腫瘍の中で約20%と最も多くみられ、悪性度は幅広くさまざまです。単発性がほとんどで、多発性は約1割です。

    また、猫の肥満細胞腫は、腫瘍全体の15%、全皮膚腫瘍では8~20%を占めるといわれていて、多くは良性ですが、時には再発性や多発性を示して悪性のことがあります。

     

    ここでは、発生の多い犬の肥満細胞腫について解説していきます。

     

    肥満細胞とは・・・

    肥満細胞は免疫細胞の一つで、ヒスタミンという炎症物質が蓄えられており、異物の侵入によってヒスタミンが放出され、周囲に炎症反応やアレルギー反応を起こします。

     

     

    犬の肥満細胞腫の症状

    犬では、多くは中齢から高齢(平均約8.5歳)でみられます。また、加齢や雄犬で高悪性度が増加する傾向があります。治療後に別の部位に再発する可能性は約10-14%とされています。

     

    皮膚症状

    腫瘍細胞はヒスタミン、セロトニン、ヘパリンなどが含まれていて、それらが刺激などによって表皮や皮下組織に浸潤して炎症が起き、丘疹、結節、隆起、痂皮、壊死、硬結、脱毛などの多様な皮膚症状を起こします。病変は大きくなったり小さくなったり、あるいは変わらなかったりと、大きさの変化も多様です。触ると赤くなるダリエ徴候がみられることがあります。

     

    体表のどこでも発生しますが、口腔粘膜や口唇、マズルといった口周辺、肢端、鼠径部、包皮、陰嚢、会陰部に発生すると悪性度が高いといわれています。また、進行すると局所リンパ節や肝臓や脾臓、骨髄などに高頻度に転移します。

     

    リンパ節が腫れる疾患や皮膚症状のある疾患についてのブログ記事はこちらからご覧ください。

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    消化器症状

    肥満細胞の顆粒から放出されるヘパリンやヒスタミンによって胃や十二指腸で潰瘍が生じ、嘔吐や吐血を引き起こします。重度の場合は、胃穿孔を起こすこともあります。

    • 嘔吐・吐血(胃潰瘍による)
    • 下痢・血便
    • 食欲不振
    • 血が止まりにくい など

     

    腫瘍随伴症候群

    腫瘍随伴症候群は、腫瘍細胞が産生する生理活性物質や腫瘍が誘導した自己免疫反応による間接的な症状のことで、肥満細胞腫に合併して起こります。消化管潰瘍、血液凝固障害、肺水腫、低血圧、ダリエ徴候などがあります。

     

    好発犬種

    ボクサーボストン・テリア、ゴールデン・レトリバー、ラブラドール・レトリバー、ブル・テリア、ブル・マスティフ、イングリッシュ・セッター、シュナウザー、ビーグル、ポインター、パグなどがいます。パグは、他の犬種よりも数倍発生リスクが高い犬種とされ、グレード1または2の低悪性度の多発性が多くみられます。

     

     

     

    犬の肥満細胞腫の検査・診断

    問診・視診

    体表リンパ節の腫れなどを確認します。患部を触ると赤くなるダリエ徴候がみられることがあります。臨床症状だけでは判断が難しいことが多いです。

     

    血液検査

    一般的な血液検査に加え、凝固系の検査を行うことがあります。

     

    画像検査・超音波検査(エコー検査)

    全身の状態や転移の有無を確認するために、胸腹部のレントゲン検査やエコー検査を行います。

     

    細胞診

    針生検にて腫瘍部位や全身の体表リンパ節の細胞診を行い、肥満細胞腫の有無を診断します。痛みはないといわれていますが、安全のために鎮静を行うことがあります。

     

    病理学的検査

    悪性度判定(グレード分類)のため、手術中に腫瘍部位や肝臓や脾臓の生検や骨髄穿刺を行い、病理組織学的検査を実施します。細胞診よりも広範囲に評価することが可能です。

     

    遺伝子検査

    細胞診と同様の方法で、腫瘍細胞を採材し、PCR検査にて遺伝子異常を調べます。c-kit遺伝子の変異は犬の皮膚肥満細胞腫の約15%で見られ、高グレードでは変異率が約35%に増加します。この遺伝子のエクソン8とエクソン11の変異を評価することで、悪性度や治療薬の効果などを予測することにつながります。

     

     

    犬の皮膚肥満細胞腫の進行度分類

    犬の皮膚肥満細胞腫の進行度や悪性度についての分類方法を紹介します。治療方法の検討や予後予測のために、これらの分類が重要になります。

     

    WHO臨床ステージ分類

    進行度を把握するために各種検査の結果からステージ分類します。分類にはWHO臨床ステージ分類が用いられ、リンパ節や他の臓器への転移や局所に浸潤しているかなどで分類していきます。治療方針を決めるためも必要なものです。

     

    ステージ0不完全切除された真皮の単一の腫瘍所属リンパ節転移なしサブステージa:臨床症状なし

    サブステージb:臨床症状あり

    ステージ1真皮に現局した単一腫瘍所属リンパ節転移なし
    ステージ2真皮に現局した単一腫瘍所属リンパ節転移あり
    ステージ3多発性真皮内腫瘍 or 大きな浸潤性腫瘍所属リンパ節転移ありorなし
    ステージ4遠隔転移のある腫瘍 or 転移を伴う再発(血液や骨髄関連を含む)

     

     

    組織学的グレード分類

    犬の皮膚肥満細胞腫の組織学的グレード分類法はPatnaik分類を用い、病理組織検査で悪性度や予後予測を判断します。

     

    【Patnaik分類】

    グレード1グレード2グレード3
    悪性度低い中間型高い
    分化度高分化型中間型未分化型
    病変の特徴皮膚の表面に1㎝以下程度で、転移はほとんどない時々、周囲のリンパ節や肝臓・脾臓などに転移あり成長が早く、急速に進行し、リンパ節や肝臓・脾臓などに転移
    再発起こしにくい起こしやすい非常に起こしやすい

     

     

    また、Patnaik分類ではグレード2の判断が難しいところがあるため、最近では細胞内の核の個数や異常について低グレードから高グレードの2段階で評価するKiupel分類を用いることが多いです。

     

    【Kiupel分類】

    低グレード高グレード
    悪性度低い高い
    転移の可能性低い高い
    再発起こしにくい起こしやすい
    生存期間の中央値2年以上4カ月未満
    Patnaik分類グレード1および2に相当グレード2および3に相当

     

    (参考資料:Patnaik AK et al.  Canine Cutaneous Mast Cell Tumor: Morphologic Grading and Survival Time in 83 Dogs.  Vet. Pathol. 21:469-474, 1984.  Kiupel JD et al.  Proposal of a 2-Tier Histologic Grading System for Canine Cutaneous Mast Cell Tumors to More Accurately Predict Biological Behavior. Vet Pathol. 48: 147–155, 2011.)

     

     

    肥満細胞腫の治療

    肥満細胞腫の治療方法は、ステージやグレードによって様々ですが、治療の第一選択は外科療法になります。それに加え、放射線治療、化学療法など適切な方法を組み合わせて行います。

     

    外科療法

    再発を防ぎ、根治するためには摘出手術が必要です。転移していない場合は、摘出すれば根治できることが多いです。特にグレード2以上では腫瘍細胞が浸潤しているため、術後に再発しやすいことから腫瘍よりも2~3cm広い範囲で切除する必要があります。広いマージンで完全切除するのが理想ですが、四肢など大きく切除するのが難しい場合は、断脚などや再手術が必要になります。また、適切に切除手術が実施されても、次に再発転移や播種があれば治癒は難しくなります。

     

    放射線療法

    手術で完全に切除できていない場合は、残った腫瘍細胞を根絶させるために放射線治療を行います。放射線療法は、強力なX線で腫瘍細胞を死滅させる治療法で、局所の再発を予防したり、手術が不可能な肥満細胞腫を縮小させたりする効果があります。多くはグレード3で実施されます。放射線治療は2種類の方法があります。

    • 根治放射線治療:根治手術をしたものの、完全切除が難しい場合に実施します。
    • 緩和放射線治療:手術が行えない場合、痛みや機能障害を一時的に改善するために行います。

     

    内科療法

    腫瘍の悪性度や病期に応じて、化学療法(抗がん剤)などの薬剤による治療を注射や内服薬で行います。抗がん剤の治療が適応になるのは、グレード3、リンパ節への転移あり、手術や放射線治療ができないほど進行、不完全切除、グレード2でも多発性、などの場合になります。肥満細胞腫で使用されている薬剤としては、肥満細胞の増殖や肥満細胞からのヒスタミン放出を抑制するステロイドホルモン剤、腫瘍細胞の細胞分裂を抑制する抗がん剤、がん細胞だけを攻撃する分子標的薬があります。

     

     

     

    さいごに

    肥満細胞腫は犬で非常に多くみられる悪性腫瘍です。また、早期に発見できれば、完治できる可能性があります。日頃から愛犬の様子を観察し、スキンシップの際は身体の状態も確認するようにしましょう。もし見慣れない赤いシコリを見つけた場合など、気になることがあればすぐ受診するようにしてください。

     

     


    当院ではエビデンスを元に検査・診断・治療を行っています。

    犬の肥満細胞腫について不明点やご相談があれば、当院までお電話もしくはLINEにてお問い合わせください。

     

    21動物病院-おおたかの森-

    千葉県流山市おおたかの森北2-50-1 GRANDIS 1階

    TEL: 04-7157-2105

    Web予約: https://wonder-cloud.jp/hospitals/21ah_nagareyama/reservationsonder

    LINE: @092jvjfm

     

    執筆:獣医師 一色

    監修:獣医師 院長 坂本