【解説】ウイルス感染がきっかけ?!猫のリンパ腫について
2025/06/18
流山市、柏市、野田市のみなさんこんにちは。
流山市おおたかの森にある、21動物病院-おおたかの森-です。
今回は、猫で最も発症しやすいがんとして知られているリンパ腫について解説します。
猫のリンパ腫とは
リンパ腫は、リンパ系細胞や組織が腫瘍化する病気です。猫の悪性腫瘍のうち3分の1が造血系腫瘍であり、そのうちの5~9割がリンパ腫を占めるほど猫で最も多いがんです。発症する部位によって症状に違いがあります。どのタイプも完治は難しく、進行を遅らせて症状を緩和させることが治療の基本になります。
猫のリンパ腫の原因
猫がリンパ腫を発症する原因については、はっきりしたことはまだわかっていません。かかりやすさの遺伝やストレス環境下での発症要因もありますが、特に、猫白血病ウイルス(FeLV)や猫免疫不全ウイルス(FIV)のようなレトロウイルスによる感染が、リンパ腫発症のリスクになっていると考えられています。ただ、感染がなくても、中高齢になると発症が多くみられます。
猫白血病ウイルス(FeLV)
このウイルスによって免疫機能が低下し、白血病を発症します。血液(咬傷)や唾液(毛繕い)、鼻汁、胎盤、母乳(授乳)を介して、猫白血病ウイルス(FeLV)に感染している猫から他の猫に感染が広がっていきます。若齢猫に猫白血病ウイルス(FeLV)感染が多くみられ、免疫の異常に関連してリンパ腫の発症率が高くなると考えられています。リンパ腫のメインの発生原因とされています。
猫免疫不全ウイルス(FIV、猫エイズ)
このウイルスに感染すると、徐々に免疫が低下し、リンパ腫を発症しやすくなると考えられています。猫免疫不全ウイルス(FIV)に感染している他の猫から感染することが多いです。
猫のリンパ腫の症状
よく見られる症状として、次のようなものがあります。
- 体重減少
- 食欲低下
- 元気消失
- 軽度の発熱 など
発生部位によっては違いがありますが、次のような症状が現れてきます。初期では、無症状のまま進行することもあります。進行すると、リンパ腫が全身に回るため、各臓器に影響が出てきて重篤な症状になり、命に関わります。
- 体表リンパ節の腫大・しこり
- 嘔吐や下痢などの消化器症状
- 多飲多尿
- 呼吸困難や咳などの呼吸器症状
- 貧血
- 脾腫
- 黄疸
- 胸水あるいは腹水貯留
- 発赤・丘疹、脱毛などの皮膚症状
- 高カルシウム血症 など
猫のリンパ腫の分類
リンパ球は全身に存在しているため、腫瘍は全身にできる可能性があります。発生する場所によって、消化器型、胸腺型(縦隔型)、多中心型、皮膚型、節外型の5つに大別されています。このうち、猫では消化器型と胸腺型(縦隔型)が多くみられます。このほかに、腹腔内リンパ腫があります。これは、腹腔内にできるリンパ腫の総称で、主に呼吸器症状や消化器症状がみられます。それ以外に、リンパ球のタイプによってもB細胞性とT細胞性に分けられます。
猫のリンパ腫のリンパ球の種類による分類
進行の速さや抗がん剤の選択の際に必要な分類です。
B細胞性リンパ腫
悪性度が高く、進行が速い傾向があり、抗がん剤がよく反応するのが特徴です。T細胞性リンパ腫よりも予後がよいとされています。
T細胞性リンパ腫
悪性度が低く進行が遅い傾向があり、抗がん剤の反応が悪く、治療が難しいとされています。
猫のリンパ腫の発生部位による分類
次に、発生部位による5つの分類について解説します。すべての年齢に発症する可能性がありますが、タイプによって傾向が異なることがあります。また、犬は多中心型リンパ腫が多く発症しますが、猫では消化器型リンパ腫と胸腺型(縦隔型)リンパ腫が多く見られます。
犬のリンパ腫についてのブログ記事は、こちらからご覧ください。
消化器型リンパ腫
胃腸や肝臓などの消化器系に腫瘍ができるタイプです。消化器に腫瘍ができ、腸間膜リンパ節などの周囲のリンパ節が腫大すると、消化吸収率が下がり下痢や血便を引き起こします。進行すると、腫瘍が腸管を塞いで腸閉塞を起こしたり、腸管が破れて腹膜炎を起こすことがあります。胃や大腸が原発のリンパ腫はB細胞性リンパ腫、小腸が原発の場合はT細胞性リンパ腫であることが多いです。初期の段階では、一般的な消化器症状や風邪などと見分けがつきにくいです。
- 発症年齢:年齢に関わらず発症。特に、高齢猫に多い
- 発生頻度:リンパ腫の約50%
- 主な症状:食欲不振、体重減少、下痢、嘔吐、血便。進行すると、腸閉塞、腹膜炎。
下痢や血便など消化器症状に関連するブログ記事は、こちらからご覧ください。
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胸腺型(縦隔型)リンパ腫
胸腺や縦隔のリンパ節、胸骨リンパ節から発生するタイプです。主に、猫白血病ウイルス(FeLV)が原因とされています。
- 発症年齢:大部分は2~4歳の若齢猫
- 発生頻度:リンパ腫の約2~5割
- 主な症状:呼吸速迫、咳などの呼吸器症状、下痢、嘔吐。進行すると、胸水貯留、開口呼吸、呼吸困難、チアノーゼ。
猫の呼吸器症状に関するブログ記事はこちらからご覧ください。
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多中心型リンパ腫
全身にあるリンパ節が腫瘍化するタイプです。特に、下顎リンパ節、浅顎リンパ節、腋窩リンパ節、膝窩リンパ節の腫大が多くみられます。初期は、リンパ節が腫れる以外に、痛みもなく症状がわかりにくいのが特徴です。他の症状があるときは、食欲低下や下痢、体重減少などがみられます。猫白血病ウイルス(FeLV)により若齢猫で発症しやすくB細胞性が多いです。犬とは異なり、発生頻度は低いです。
- 発症年齢: 猫白血病ウイルス(FeLV)感染の若齢猫が多い
- 発生頻度:リンパ腫の4~10%
- 主な症状:体表リンパ節の腫大

皮膚型リンパ腫
皮膚に腫瘍ができるタイプです。頸部や顔面に発生することが多く、湿疹や発赤、丘疹、脱毛などの症状がみられます。口腔粘膜にできることもあります。アトピー性皮膚炎や膿皮症などの皮膚炎との区別が難しく、皮膚病治療で効果がでないときにリンパ腫と疑われることが多いです。T細胞性がほとんどです。
- 発症年齢:高齢猫に多い
- 発生頻度:リンパ腫の5%程度
- 主な症状:皮膚症状
節外型リンパ腫
節外型とは他の4つの部位以外にできたリンパ腫のタイプです。中枢神経系、眼、腎臓、鼻腔にできやすいとされています。発生した場所によって、腎臓であれば急性腎不全、目であればぶどう膜炎や緑内障、角膜炎といった症状が出てきます。発生頻度はあまり高くありません。
- 発症年齢:中~高齢猫に多い
- 発生頻度:リンパ腫の5%程度
- 主な症状:それぞれの部位で発生する疾患の症状
猫のリンパ腫の検査・診断
猫のリンパ腫を診断するために、次のような検査をします。
視診と触診
体表リンパ腫の腫れ、しこりの状態や大きさ、硬さなどを中心に、体全体に異常がないか確認します。
血液検査
貧血、白血球、血小板、肝臓や腎臓の数値などを確認します。場合によっては、猫白血病ウイルス(FeLV)猫免疫不全ウイルス(FIV)の検査をすることもあります。
レントゲン検査・超音波検査
リンパ節の腫大の状態や内臓への浸潤、転移、胸水の貯留程度などについて確認します。
細胞診
リンパ節や腫瘍とみられる臓器の一部を採材して、腫瘍化している細胞があるかどうかについて顕微鏡で確認します。腫瘍化の有無、リンパ球の大きさや悪性度を見ることができ、リンパ腫を確定するのにとても重要な検査です。
病理組織検査やクローナリティー検査
細胞診や手術で採られた組織の免疫染色や、B細胞型かT細胞型かの解析を行うことで、どのような状態でどの病型にあてはまるかを詳細に診断します。
猫のリンパ腫の治療
猫のリンパ腫と診断された場合、残念ながら完全に治すことは難しいです。しかし、進行を遅らせて症状を緩和するために様々な方法があります。
抗がん剤療法
抗がん剤を利用した化学療法で、最も一般的で効果が高い方法です。メインの治療方法になります。腫瘍を縮小させて症状を緩和させるために、複数の抗がん剤を組み合わせて半年ほど治療を行います。半数以上の猫で効果があるとされていますが、再燃する例も少なくありません。猫白血病ウイルス(FeLV)に感染している場合は効果が低く、余命が短くなる傾向があります。副作用は、投与を始めてから3~4日後に嘔吐や下痢、食欲不振などの胃腸障害や脱毛(抜け毛)などが強く表れることが多いです。
放射線療法
リンパ腫の病変が全身でなく、縦隔型リンパ腫や鼻腔にできたリンパ腫など局所のときに実施します。抗がん剤が効かないときにも実施されます。この治療は高度な技術を必要とするため、対応できる動物病院は限られます。
外科手術
猫のリンパ腫は、通常手術は行われません。皮膚型リンパ腫などの場合は切除することがあります。
猫のリンパ腫の予防
猫のリンパ腫を予防するためには、いくつか方法があります。そのうち、はっきりとした原因は解明されていないものの、猫白血病ウイルス(FeLV)や猫免疫不全ウイルス(FIV)の感染によってリンパ腫が発症しやすくなるため、それらの感染を防ぐことが重要になります。そのためには、ワクチンを接種し、完全室内飼いにする方法が最も有効です。同居猫がいる場合、血液検査で確認して、もし感染しているのであれば、他の猫に伝播しないように隔離飼育するようにしてください。
また、毒性のある化学物質から遠ざけることも重要です。たとえば、喫煙家庭にいる猫はリンパ腫の発症リスクを高めることが知られています。受動流煙だけでなく、たばこの粒子を摂取することでも、特に消化器型リンパ腫との関連があるとみられています。

さいごに
犬のリンパ腫と同様に、猫のリンパ腫も残念ながら完治が難しい病気です。タイプにより傾向はあるものの、年齢や性別に関係なく発症します。早期に発見できれば、進行を遅らせて症状が緩和できる可能性が高まります。日頃からできる予防策に健康や行動に注意して、気になるようなことがあれば受診するようにしましょう。
当院ではエビデンスを元に検査・診断・治療を行っています。
猫のリンパ腫について不明点やご相談があれば、当院までお電話もしくはLINEにてお問い合わせください。
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執筆:獣医師 一色
監修:獣医師 院長 坂本




