【解説】ただのアレルギーじゃない!犬と猫のアナフィラキシーについて
2025/05/19
流山市、柏市、野田市のみなさんこんにちは。
流山市おおたかの森にある、21動物病院-おおたかの森-です。
今回は 犬と猫のアナフィラキシーについて解説します。
アナフィラキシーとは
アナフィラキシーは、アレルギー反応のうち、急激な免疫反応を起こす状態(即時型アレルギー反応)のことをいいます。さらに重症化して危険な状態になることを、アナフィラキシー・ショックといいます。発症までの時間が数分から数時間以内と極端に短く、治療が遅くなると命を落とすこともあります。様々な原因がありますが、ワクチン接種により発症してしまうことが多くあります。
アナフィラキシーの病態
アナフィラキシーは、IgEが関与するⅠ型アレルギーの一つで、全身の臓器がアレルギー反応を起こした状態です。複数のアレルギー症状が同時に起こるのが特徴です。
アレルゲンが体内に侵入すると、IgEという抗体が産生されます(このことを感作といいます)。IgE抗体は、肥満細胞や好塩基球に接着し、さらに侵入してきたアレルゲンと結合します。すると、肥満細胞や好塩基球からヒスタミンなどの化学物質が放出されます。ヒスタミンにより、血管が拡張して蕁麻疹(じんましん)、さらに血管の透過性が高まることで浮腫や出血が起こります。また、平滑筋が収縮することで気管狭窄や嘔吐・下痢が、循環不全により体温低下や低血圧が起こり、さらに脳への血流不全による失神などが生じます。一度の感作ではヒスタミンが分泌されることが少ないため、アレルゲンの侵入が繰り返されることがアナフィラキシーの発症の原因になっています。
アナフィラキシーの原因
アナフィラキシーの原因として、次のようなものが挙げられます。
- 食物
- ハチ毒や虫刺され
- 薬物
- ワクチン接種
原因となるものが判明しているのであれば、それを避けることが重要です。ワクチン接種や薬物では、一回目は問題なくても数回目以降に発症することがあります。
アナフィラキシーの症状
アナフィラキシーの症状は、急な呼吸困難、ムーンフェイスや蕁麻疹による顔面腫脹、下痢や嘔吐などで、重症の場合は意識消失して命を落とします。症状が軽い場合には、見た目は元気に見えることも多いですが、ぐったりしたり反応が鈍くなったりといったショック症状が出ている場合には、すぐ治療が必要です。ムーンフェイスは、蕁麻疹によって顔がパンパンに腫れた状態をいい、アナフィラキシーの典型的な症状の一つです。
その他にも、次のような症状が挙げられます。
- むくみ
- かゆみ
- 紅斑
- 吐き気
- めまい
- 失神
- 舌や粘膜が蒼白(チアノーゼ)
- 虚脱
- 意識が朦朧(もうろう)
- 昏睡
- 死亡 など
犬と猫では、症状が異なることがあります。この理由としては、ヒスタミンを分泌する肥満細胞の体内での分布が、犬と猫では異なる可能性が考えられています。犬は、主に肝臓や消化器に症状が出て、頻回の嘔吐で食道炎や食道狭窄を起こすことがあります。また、猫では、主に気道や肺に症状が出ますが、蕁麻疹などの皮膚症状はまれです。

ワクチン接種におけるアナフィラキシーの症状
ワクチン接種後から症状が出るまでの時間は、30分以内がほとんどで、早い場合は5分以内です。多くは呼吸器・循環器の症状で、重篤なものほど早く発症します。皮膚症状は、呼吸器・循環器の症状に比べてゆっくり発症することが多いです。
次のような症状が出ていれば、命に関わる可能性が高いので直ちに受診してください。
- 意識の低下
- 呼吸困難
- ふらつく
- 嘔吐
- 粘膜蒼白(チアノーゼ)
- 四肢冷感
ワクチン接種後30~60分は、すぐ受診できるように院内や動物病院の駐車場で様子を見ることをお勧めします。また、1日以降に発症する場合もあるため、接種して数日程度は観察した方がよいでしょう。特に、ミニチュア・ダックスフンドはワクチン接種による副作用が出やすい犬種のため、注意しましょう。
また、ワクチン接種によるアナフィラキシーの死亡率は、犬よりも猫が高いといわれています。

ワクチン接種に関連する過去のブログはこちらから
【解説】狂犬病ワクチンは接種しなきゃいけない?しなくてもいい?
https://otaka.21ah.jp/_cms/724/
【解説】犬のワクチンの接種するべき時期とは?種類とは?
https://otaka.21ah.jp/_cms/703/
アナフィラキシーの診断
アナフィラキシーの診断は、どのような症状が出たのか、その状況や発症のタイミングなどから総合的に判断します。ショック症状があり緊急性が高い場合は、検査と並行して治療や処置を行います。アナフィラキシーの可能性が考えられる所見としては、肝酵素の上昇、胆嚢壁の浮腫、腹水があります。
血液検査
肝酵素であるアルカリフォスファターゼ(ALT(GPT))が上昇します。ALTは、肝臓に障害があるときに増加する酵素です。
他に、リン(P)の上昇、クレアチンホスホキナーゼ(CPK)の著しい上昇、低血糖(Glu)、血液凝固能の異常などがみられることがあります。
超音波検査
胆嚢壁の浮腫がみられ、微量の腹水(血様腹水)がみられることもあります。これらは血管の透過性が亢進していることで起こります。
アナフィラキシーの治療
アナフィラキシーの治療には、迅速な判断と対応が必要です。アナフィラキシーは、血管拡張により血管から大量の液体成分が漏れ出ていることが原因で急性の循環不全を起こしている状態ですので、血管拡張を改善するために血管収縮薬の投与と液体を補充するための輸液を行います。
血管収縮薬
アナフィラキシーの治療には欠かせないのがアドレナリン(=エピネフリン)という血管収縮薬で、筋肉内投与や持続点滴で静脈内投与します。アドレナリンは、α(アルファ)1作用として血圧上昇や末梢血管の収縮、β(ベータ)1作用として心収縮力の改善や心拍数の増加、β2作用として気管支拡張などの効果があります。
輸液
乳酸リンゲル液や生理食塩水などを急速点滴します。落ち着いたら、必要に応じて持続点滴します。
その他の治療
ステロイド剤で遅発性の反応や炎症を抑えます。また、抗ヒスタミン剤で皮膚などの諸症状を緩和させます。
アナフィラキシーの予防
アナフィラキシーを予防するためには、アレルゲンとなる原因物質から遠ざけることが一番の方法になります。また、バランスのよい食事と適度な運動を続けることは、免疫力を上げることにつながります。
ワクチン接種におけるアナフィラキシーの予防
ワクチン接種は毎年受ける場合が多く、接種を避けることは難しいです。特に狂犬病ワクチンは毎年受ける義務があるため、ワクチン接種によるアナフィラキシーを予防するためには、できるだけリスクを下げておく必要があります。近日ワクチン接種を予定している方は、次に挙げる方法を参考にしてみてはいかがでしょうか。
ワクチン接種前のアナフィラキシーの予防
ワクチンを受ける前に、犬や猫の体調を観察しましょう。元気や食欲がない、熱があるなど体調がよくない場合は、無理せず接種を見送ることも大切です。持病や体力の状態によっては、接種が中止のこともあります。
また、過去のワクチン接種でアナフィラキシーを起こしたことがある場合でも、症状に応じた対策をすれば接種できることがあります。
ワクチン接種前後でのアナフィラキシーの予防
ワクチン接種の前後は、体力を消耗するような激しい運動、トリミングやシャンプーは避けるようにしましょう。免疫力が落ちて体調不良を起こしやすくなるほか、興奮して血圧や体温が上がることでワクチンの吸収が早まることがあります。最低でも前後2~3日は控えるようにしてください。また、ワクチン接種当日の散歩は控えるか、いつもより短めにしましょう。
ワクチン接種する時間帯としてのアナフィラキシーの対策
ワクチン接種は、できるだけ午前中に受けるようにしましょう。アレルギー反応は、接種後30分(~60分)以内に出やすいです。最低でも30分は動物病院の待合室あるいは駐車場で待機し、体調に変化があった場合にはすぐ受診できるようにしておきましょう。異常な変化が生じたときに動物病院が開いていれば、迅速に治療することができます。
さいごに
アナフィラキシーは、急激に発症し重症の場合は命を落とすことがある病気です。事前に防ぐことは難しい病気ですが、症状を知っておくことで早く治療を始めることができ、命を救う可能性が高まります。

当院ではエビデンスを元に検査・診断・治療を行っています。
アナフィラキシーについて不明点やご相談があれば、当院までお電話もしくはLINEにてお問い合わせください。
21動物病院-おおたかの森-
千葉県流山市おおたかの森北2-50-1 GRANDIS 1階
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執筆:獣医師 一色
監修:獣医師 院長 坂本




