ブログ|流山おおたかの森駅で動物病院をお探しの方は21動物病院 -おおたかの森-まで

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    【解説】全身が痛い!力が入らない!犬の多発性筋炎について

    2025/05/22

    流山市、柏市、野田市のみなさんこんにちは。

    流山市おおたかの森にある、21動物病院-おおたかの森-です。

     

    今回は、犬に多い多発性筋炎について解説します。

     

     

    多発性筋炎とは

    多発性筋炎は全身性におこる炎症性ミオパチーのことで、非感染性炎症を伴う筋肉の疾患を指します。犬に多くみられ、全身に痛みが伴うため運動や動作が難しくなるのが特徴です。

     

    ミオパチーとは

    そもそも、ミオパチーとはどのような病気なのでしょうか。ミオパチーは筋肉の機能や構造に異常をきたすことで生じる疾患(筋症)のことです。何らかの原因により筋肉が障害を受けて、筋力の低下や運動麻痺などの症状が現れます。多くの種類に分類され、原因はそれぞれの疾患によって異なるため治療方法も様々です。ミオパチーは、感染性筋炎と非感染性筋炎に大別されます。

     

    <感染性筋炎>

    トキソプラズマやネオスポラなどの原虫、レプトスピラなどの細菌、猫免疫不全ウイルス「猫エイズ」(FIV)などのウイルスが原因とされています。

     

    <非感染性筋炎>

    自己免疫の異常が関与している免疫介在性疾患とされています。多発性筋炎や皮膚筋炎が含まれます。

     

     

    犬の多発性筋炎の原因

    多発性筋炎の多くは、免疫介在性疾患と考えられています。本来守るはずである自己の免疫の異常によって、自らの臓器を攻撃してしまう自己免疫疾患の一つです。また、腫瘍性疾患や自己免疫疾患の発症がきっかけになって、二次的に発症する場合もあります。検査によっても原因が特定できない場合は、特発性とされます。年齢や犬種などに関係なく発症しますが、⼤型⽝や⾼齢⽝に多い傾向があります。

     

     

    犬の多発性筋炎の症状

    全身的な筋力低下が起こることで、多くは全身性の筋肉に痛みが生じてきます。次のような症状が出ることがあります。

     

    初期にみられる症状

    • 筋硬直による木馬のような歩行(強直性歩行)
    • 間欠的な発熱
    • 全身性の筋萎縮  など

     

    進行した場合の症状

    • 食道の拡張(巨大食道症)
    • 常によだれを流す(流涎症)
    • ご飯がうまく飲み込めない(嚥下障害)
    • かすれ声(発声障害)
    • 両側性の眼球突出(外眼筋炎)
    • 歩き方がぎこちない、動きたがらない(運動不耐性) など

     

    進行すると、痛みにより食事をとるのが難しくなるため、体重は減少していきます。最終的には、自分で起き上がるのが難しくなっていきます。

    また、巨⼤⾷道症が原因で、⼆次的に誤嚥性肺炎を起こすことがあります。

     

     

     

     

    犬の多発性筋炎の診断

    問診・触診、神経学的検査、血液検査、X線検査、超音波検査、筋電図検査、筋肉の生検、尿検査など症状に応じて検査が行い、総合的に判断します。

     

    多発性筋炎の診断基準としては、以下の5つの項目があります。このうち、3つ以上の異常項目が確認された場合に、多発性筋炎と判断されます。

    • 特徴的な臨床徴候(全身性の筋肉痛や発熱など)
    • クレアチンキナーゼ(CK)値の上昇(正常上限値の5~10倍以上)
    • 筋電図(EMG)の異常所見
    • 感染性疾患(トキソプラズマやレプトスピラなど)の抗体値が陰性
    • 筋生検による炎症像の確認

     

    多発性筋炎に似た症状をもつ疾患には、全身性エリテマトーデス(SLE)、重症筋無力症、多発性関節炎、髄膜炎などがあります。多発性筋炎が疑われる場合は、これらの自己免疫疾患や感染症、さらに腫瘍性疾患の可能性を否定することが重要であり、鑑別のために抗核抗体の測定や髄液検査などの追加検査を実施することがあります。特に、治療には免疫抑制剤を使用するため、感染症の除外は必須です。

    なお、筋電図検査は専門的な技術や知識を必要とするため、筋電図検査のできる動物病院は限られます。

     

    犬の多発性筋炎の治療

    多発性筋炎の治療は、免疫抑制剤ステロイドを中心とした内科療法が主体になります。再発しないよう長期にわたって治療する場合があることから、医原性クッシング症候群の予防のためにステロイドは2週間程度を目安に減薬していきます。ステロイドは重症度によって、投与量が変わることがあります。

    また、他の症状や二次的に発症した疾患があれば、それらの治療も併用します。巨大食道症や嚥下困難により、二次的に誤嚥性肺炎が認められた場合は抗菌薬も併用します。

     

    巨大食道症の場合、誤嚥性肺炎を防ぐための食事管理も必要な治療になります。誤嚥しないように立たせた状態で少量頻回に食事を与えたり、胃瘻チューブの設置などで強制給餌する方法をとります。

     

    比較的早期に治療が始められ、合併症が認められない場合は、予後は良好です。治療が遅れれば、嚥下困難や摂食障害による栄養不良や、呼吸不全をおこして死亡します。巨大食道症の場合は、誤嚥性肺炎による死亡リスクが高くなります。さらに、心筋炎を併発すれば、心不全を起こすことがあります。

    クッシング症候群についての過去の記事はこちらから。

    【解説】水ガブ飲み!尿も多い!犬に多いクッシング症候群について

    https://otaka.21ah.jp/_cms/903/

     

     

    さいごに

    犬の多発性筋炎の予防方法は、現在のところ分かっておりません。多発性筋炎は早期に発見できれば早期に治療できる病気です。ただ、巨大食道症をおこし誤嚥性肺炎も発症した場合は、死亡リスクが高くなります。そのためにも、ふだんから犬の行動を観察する習慣をつけておくとよいでしょう。もし歩き方やしぐさに異常を感じたら、早めに診察を受けるようにしてください。

     

     


    当院ではエビデンスを元に検査・診断・治療を行っています。

    犬の多発性筋炎について不明点やご相談があれば、当院までお電話もしくはLINEにてお問い合わせください。

     

    21動物病院-おおたかの森-

    千葉県流山市おおたかの森北2-50-1 GRANDIS 1階

    TEL: 04-7157-2105

    Web予約: https://wonder-cloud.jp/hospitals/21ah_nagareyama/reservationsonder

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    執筆:獣医師 一色

    監修:獣医師 院長 坂本