【解説】狂犬病ワクチンは接種しなきゃいけない?しなくてもいい?
2025/01/24
流山市、柏市、野田市のみなさんこんにちは。
流山市おおたかの森にある、21動物病院-おおたかの森- 院長の坂本です。
今回は狂犬病予防接種(狂犬病ワクチン)について解説します。
狂犬病とは
狂犬病はラブドウイルス科リッサウイルス属の狂犬病ウイルスにより発症する病気です。
ほとんどの哺乳類が感染するとされ、病名の通り犬はもちろんですが、他にも人間、猫、コウモリ、キツネなど様々な動物での報告があります。
人間、と記載したように人獣共通感染症です。
主として咬まれる・引掻かれるなどでできた傷口から感染します。
感染した場所により発症するまでの時間には差がでます。これは最終的には神経を辿り脳に感染していくためです(感染部位が頭から遠いほど時間がかかります)。
人間
症状は、発熱・頭痛・倦怠感・悪心・嘔吐などから始まります。その後神経症状(痙攣、興奮、不安、麻痺など)に加え、錯乱、幻覚、攻撃性、恐水発作などが現れ、最終的にはほぼ100%致死します。
感染後に狂犬病ワクチンを接種する(曝露後免疫といいます)ことで発症を防げば助かることが多いですが、もし発症してしまうとまず間違いなく致死するのがこの病気の恐ろしいところです。
犬
症状は、性格の変化・行動の異常から始まり、狂躁期(興奮状態、刺激に対する過敏反応)、麻痺期(歩行困難、下顎下垂、嚥下困難、流涎、昏睡)となり死亡します。
人間と同じく有効な治療法はありません。
狂犬病の発生
日本では1957年以降、国内感染による発生はありません。ただし海外で感染し日本で発症という例はあり、2020年にもフィリピンからの帰国者で発症、死亡しています。世界ではWHOの推定によると毎年5万9千人もの人が狂犬病の感染により亡くなっています。
出典:厚生労働省より
接種しなきゃダメ?
狂犬病予防法
狂犬病ワクチンとは、狂犬病を予防するための単価・不活化ワクチンです。日本では狂犬病予防法により1年に1度の接種が義務付けられています。犬を飼い始めた初年度は、犬を飼い始めた日から30日以内、また生後91日以内の犬を飼育した場合は生後90日を過ぎた日から30日以内の接種が定められています。
ただし、過去にアレルギーを起こした、現在状態が悪く予防接種が難しいなどの理由により、獣医師が接種できないと判断した場合は狂犬病予防接種猶予証明書を発行し、届出ることでその年の予防接種を免除されることができます。
あくまで免除は一時的なものという扱いなので、もし来年度以降も接種できない場合は毎年猶予証明書を発行・届出る必要があります。
また、猶予できるかどうかの判断はあくまで獣医師によるので、飼い主の判断のみで猶予ということはできません。
日本は狂犬病清浄国ですが
インターネットを見ていると、日本には狂犬病は存在しないから接種しなくてもいいのではないかという議論が散見されます。
確かに日本では1957年を最後に人間でも動物でも狂犬病は発生していません。しかしながら海外ではまだまだ狂犬病が蔓延しており、海外からの輸入コンテナや船などに感染動物(犬とは限らず、コウモリやアライグマでも)が紛れ込み、日本に侵入するなどの可能性もあります。
台湾も1959年以降の狂犬病の発症がなく清浄国・地域とされていましたが、2013年に野生動物のイタチアナグマからウイルスが検出され、その際に犬への感染が認められています。同じように日本でも表面上は発見されていないですが、実は野生動物が保持しているという可能性もあります。
このように現在狂犬病がないように見えても実は存在していたり、海外から入ってくる可能性は十分にあるので、どちらの可能性があっても流行させないために狂犬病予防接種は重要です。
また、何かのきっかけで飼い犬が他人を噛んでしまったとき、狂犬病を心配される方が一定数存在します。そのときに予防接種をしっかりしていないと咬まれた人は強い不安感を覚えるでしょう。そういったトラブルを避ける意味でも狂犬病予防接種は重要となります。
このように法律上も接種義務がありますし、もしもの場合やトラブルを避けるためにも予防接種はしっかりと行いましょう。
当院ではエビデンスを元に検査・診断・治療を行っています。