【解説】急にお腹が大きくなって苦しそう!大型犬に多い胃拡張捻転症候群について
2025/09/18
流山市、柏市、野田市のみなさんこんにちは。
流山市おおたかの森にある、21動物病院-おおたかの森-です。
今回は、犬の胃拡張捻転症候群について解説します。
胃拡張捻転症候群とは
胃拡張捻転症候群(Gastric Dilatation-Volvulus syndrome: GDV)は、何らかの原因によって急激に胃が膨張してねじれてしまう疾患です。「胃拡張・捻転症候群」「胃拡張・胃捻転症候群」とも呼ばれ、大型犬で多く発生します。胃がねじれた結果、胃の内容物が腸へ通過できなくなり、後大静脈や門脈、脾臓の血流が止まり、短時間で不整脈やショックなどを引き起こします。短時間で命に関わる疾患のため、緊急の治療が必要になります。
胃拡張捻転症候群(GDV)の進行メカニズム
胃拡張捻転症候群(GDV)は、急速に胃拡張が起こってから身体に様々な影響を及ぼしていくため、すぐ治療をしなければ命を落とします。
- 発症要因
- 胃の拡張
- 胃の捻転
- 食道・胃の幽門部の閉塞
- 胃内の空気・液体成分の大量貯留
- 胃内の細菌によるガス大量産生
- 胃拡張の進行
- 後大静脈や門脈で血流の停滞
- 心拍出量の低下
- 心筋虚血と不整脈
- 閉塞性ショック
- 組織・臓器への血流量の低下
- 多臓器不全
- 死亡
胃拡張捻転症候群(GDV)の症状
胃拡張捻転症候群(GDV)は、急速に症状が悪化します。多くは食後1~4時間で突然発症します。胃拡張だけでは命に関わることは少ないですが、胃捻転まで進行すると緊急性が高くなるため、次のような症状が見られたらすぐに動物病院を受診してください。
- 急にお腹が大きくなった
- 落ち着きがない
- 何度も吐こうとするが何も出ない、えずく(空嘔吐)
- よだれが出る
- 苦しそうに呼吸が早くなる
- お腹を痛がる
- 頻繁に身体を伸ばす
進行すると、
- 立てない
- 歯茎や口唇の粘膜や耳が白くなる
- お腹がパンパンに硬く張っている など
重篤な合併症として、
- 胃の壊死
- 急性腎不全
- 低血圧
- 播種性血管内凝固症候群(DIC)
- 不整脈 など
播種性血管内凝固症候群(DIC)とは・・・
播種性血管内凝固症候群(Disseminated Intravascular Coagulation: DIC)は、様々な原因により全身の細小血管内に微小血栓が多発する重篤な病態をいいます。出血症状と臓器症状が二大症状で、微小血栓と出血傾向が同時発生します。DICは、単独で発症せず、基礎疾患や術後に続発して発症します。
胃拡張捻転症候群(GDV)の原因
胃拡張捻転症候群(GDV)の原因はまだわかっていません。どの年齢でも発症する可能性がありますが、胃にガスが溜まりやすい状態や胃が振られてねじれやすくなるような状況など、リスクを高める原因として次のようなものが考えられています。
- 食後に激しい運動
- 胃にガスが溜まりやすく、ねじれやすくなる
- 大量のフードを食べる、一気に食べる、一気に水を飲む
- 大量の空気も飲み込むため、胃が拡張しやすくなる
- 大量の雪を多く食べて胃内温度が急激に低下し、胃収縮が抑制されて発症した例あり
- 脂肪や脂分の多いフード
- 胃にガスが溜まりやすくなる
- ストレス
- 呼吸が早くなることで空気を飲み込みやすくなる
- 中~高齢
- 胃の靭帯の緩み
- 消化機能の低下 など
- 脾摘の既往歴
- 胃拡張捻転症候群(GDV)の家族歴がある
- 大型犬、胸が深い犬、瘦せ型の犬 など
胃拡張捻転症候群(GDV)の発症リスクの高い犬種
どの犬種でも発症する可能性がありますが、特に次のような超大型犬、大型犬、胸部が深くて狭い犬種で注意が必要です。
ジャーマン・シェパード、グレート・デーン、ドーベルマン、ラブラドール・レトリバー、ゴールデン・レトリバー、セント・バーナード、グレート・ピレニーズ、ワイマラナー、スタンダード・プードル、アイリッシュ・セッター、ゴードン・セッター、バセット・ハウンド、ボクサー など。
また、シーズーやミニチュアダックスフンドなどの小型犬でも発症例があります。

胃拡張捻転症候群(GDV)の検査
迅速な治療を必要とするため、早急に検査を行い病態を把握します。問診や血液検査などを行い、レントゲン検査で確定診断を行います。レントゲンでの診断が難しい場合は、超音波検査を併用することがあります。
問診・視診
どのようなものを食べたか、どんな食べ方をしたかなど発症したときの状況や、これまでの既往歴などを確認します。
身体検査
触診で左側腹部の張り、聴診や打診でガスが溜まっているかを確認します。腹部の硬さが増すほど、捻れや虚血の程度が重いと予想されます。
血液検査、血圧、心電図
症状の重症度や他の疾患や要因がないかを確認します。循環不全の状態を把握するため、血漿乳酸値も測定します。
レントゲン検査
胃や腸の状態を確認し、膨満や捻転などの状態と程度を診断します。
超音波検査
レントゲン検査と併用して、診断を進めます。腹腔内出血や腹水を確認します。
心電図検査
胃拡張捻転症候群(GDV)の約4割は不整脈も発症しており、中でも多くみられる心室性期外収縮を確認します。
胃拡張捻転症候群(GDV)の治療
緊急性の高い病気のため、ただちに治療を行います。
ショック状態を改善するための輸液や、胃の圧力を和らげるために麻酔下で食道カテーテルの使用や、皮膚から針を穿刺によって、胃に溜まったガスを抜きます。状態によって胃洗浄を行うことがあり、胃洗浄のみで捻転が整復されることがあります。
全身麻酔をかけ、開腹して胃の状態を確認してから元の位置に戻します。再発を防ぐために、胃を腹壁に固定する胃固定術を行います。固定術には、チューブ胃固定術、正中腹壁胃固定術、ベルトループ胃腹壁固定術などがあり、状況に応じて適切な方法が選択されます。
重症例では、膨満によって影響を受けた胃の部分切除や、脾臓摘出が必要になることがあります。
手術後は、状態によって鎮痛剤、制吐剤、ステロイド剤、抗不整脈薬、抗生物質などを投与しながら、不整脈や血栓などの合併症に注意しながら術後管理を行い、回復に努めます。特に、術後数日は合併症の発現リスクが高いので、細心の注意が必要です。
退院後は、しばらく臓器を回復させるため数週間の安静が必要になります。再発を避けるため、消化のよい食事を少量頻回で与えるようにします。
胃拡張捻転症候群(GDV)の予防
胃拡張捻転症候群(GDV)の発症を予防することは難しいですが、日常の生活で工夫することでリスクを下げることができるとされています。対策として、次のようなものがあります。
- 食後の安静
- 食後は安静に過ごしましょう。
- 運動や散歩は少なくとも食後2時間以上を空けましょう。
- 食事回数
- 一日量を少量ずつ3~4回に分けて与えましょう。
- 一日一回の食事は、胃が大きくなるので止めましょう。
- 食事時間
- 早食い防止用の食器やマットを使ったり、タオルの中にフードを入れて探索させたり、フードをふやかすなどの工夫によって、ゆっくり食べさせるようにしましょう。
- 食事にかける時間は、満腹感を感じる消化管ホルモンであるコレシストキニンが増え始める約15~20分が理想といわれています。
- 早食いをすると胃が膨隆化しやすくなるほか、フードが喉に詰まって窒息するリスクがあります。
- 新鮮な水の設置
- 一気飲みを防ぐために、いつでも水が飲めるようにしましょう。
- 食器の高さ
- 高さのある食器はリスクを高めますので、発症リスクのある犬種や家族歴のある犬は避けるようにしましょう。
- 予防的な胃固定術
- 発症リスクのある犬種や家族歴のある犬は、発症する前に胃固定術を推奨する場合があります。この手術により、胃拡張の予防は難しいですが胃捻転の予防はできます。
- 未去勢未避妊の場合は、同時に去勢手術や避妊手術を行う場合があります。あるいは、去勢手術や避妊手術の際に、予防として胃固定術を行う場合もあります。

さいごに
胃拡張捻転症候群は、特に大型犬や胸の深い犬種で多くみられ、急激に胃が膨隆し捻転する緊急性の高い疾患です。食事の与え方や運動のタイミングを工夫することで、発症リスクを下げることができます。日頃から愛犬の様子をよく観察して、呼吸がおかしい、お腹が大きくなってきたなどの異常がみられたらすぐに受診しましょう。
当院ではエビデンスを元に検査・診断・治療を行っています。
犬の胃拡張捻転症候群について不明点やご相談があれば、当院までお電話もしくはLINEにてお問い合わせください。
21動物病院-おおたかの森-
千葉県流山市おおたかの森北2-50-1 GRANDIS 1階
TEL: 04-7157-2105
Web予約: https://wonder-cloud.jp/hospitals/21ah_nagareyama/reservationsonder
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執筆:獣医師 一色
監修:獣医師 院長 坂本




