【解説】急に出血しやすくなった!お腹が大きくなった!犬の血管肉腫について
2025/11/19
流山市、柏市、野田市のみなさんこんにちは。
流山市おおたかの森にある、21動物病院-おおたかの森-です。
今回は、犬に多い血管肉腫について解説します。
血管肉腫とは
血管肉腫は、犬で多くみられる悪性腫瘍の一つで、血管を作る血管内皮細胞が腫瘍化して増殖した病気です。腫瘍ができる部位は脾臓が多く、その他にも肝臓や心臓(右心房)、皮膚などにもできることがあり、体中のどの部位にも発生することがわかっています。悪性度が高い上に進行も速く、転移は広範囲にみられます。転移の多くは、血行性転移や破裂による播種性転移とされています。
犬の発症年齢は8 ~10歳で,大型犬に多く、性差の傾向は様々です。
猫での発生は稀とされています。
犬の血管肉腫の原因
血管肉腫を発症させる原因は、はっきりとはわかっていません。しかし、次のような要因が関係していると考えられています。
遺伝的要因
ゴールデン・レトリバーで好発します。他にも、ジャーマン・シェパード、ラブラドール・レトリバー、ボクサーなどの大型犬種や、ミニチュア・ダックス、フレンチ・ブルドッグなどでも多くみられます。
環境要因
日光などの紫外線による影響が考えられています。白毛や薄毛は紫外線による皮膚のダメージを受けやすいため、皮膚に血管肉腫が発生することがあります。
加齢
加齢とともに発症リスクが高くなる傾向があります。特に、8歳以上は注意が必要とされています。

犬の血管肉腫の症状
腫瘍が発生した部位や進行の程度によっても、症状は様々です。無症状で進行していくこともあり、健康診断でたまたま見つかることもあります。発生した血管肉腫は、出血しやすく、出血による貧血やショックなどを起こします。
初期の血管肉腫の症状
- 元気衰退
- 食欲低下
- 体重減少 など
進行したときの血管肉腫の症状
- 心拍数増加(頻脈)
- 不整脈
- 貧血
- 歯肉などの粘膜蒼白
- 腹部膨満(腹腔内出血による)
- 呼吸困難(肺への転移による)
- ショック症状(虚脱など) など
合併症として、4割以上が播種性血管内凝固症候群(DIC)を引き起こすとされています。
発生部位による血管肉腫の症状
- 脾臓 腹部膨満、腹腔内出血
- 肝臓 腹水、黄疸
- 心臓 心嚢水の貯留、心タンポナーデなどによる呼吸困難
- 皮膚 潰瘍やシコリ など
心タンポナーデとは・・・
心臓を覆っている2層の心膜の隙間に液体が大量に貯留することで、心臓の動きが阻害されてしまい、心臓の働きが弱くなる症状をいいます。
犬の血管肉腫の診断
身体検査、血液検査、レントゲン検査、超音波検査を行い、腫瘍の部位や転移の有無を確認します。必要に応じで、病理検査や心電図検査を行います。
身体検査
全身の状態を確認し、異常に気付いたのはいつからで、どこの部位なのかなどを確認します。
血液検査
貧血や血小板減少や血液凝固系の異常について確認します。腫瘍が破裂した場合はすでに凝固亢進状態となっており、播種性血管内凝固(DIC)が合併することがあるため、血液凝固系の確認は重要です。
レントゲン検査
胸部と腹部を中心に腹水などの異常がないかを確認します。腫瘍の部位や肺転移を確認します。
超音波検査(エコー検査)
胸部と腹部を中心に心臓や腹水などの異常がないかを確認します。腫瘤の部位や、腹膜の状態、他臓器への転移を確認します。
心電図検査
心臓に発生した場合、不整脈などの異常がないかを確認します。
病理組織学的検査
病変切除後に実施する病理組織検査により、確定診断されます。心臓に発生した場合は、切除が難しいため、組織検査よりも超音波検査などで判断されることが多いです。皮膚に発生した場合は、細胞診を行うことがあります。一般的な腫瘍の検査である針生検は、血管肉腫の場合、血管がもろくなっており出血しやすく危険なため、ほとんど行われません。
播種性血管内凝固症候群(DIC)についてのブログ記事はこちらからご覧ください。
【解説】出血してる! 呼吸が苦しそう!播種性血管内凝固症候群(DIC)について
犬の血管肉腫における臨床TNMステージ分類
犬の脾臓に発生した腫瘍の治療方針を決めるため、腫瘍の大きさやリンパ節の転移の有無、遠隔転移の有無などから病期を分類します。脾臓に発生した場合、肝臓、大網、肺、心臓、脳などへの転移が多く認められています。
| 原発性腫瘍(T) | T0 腫瘍が認められない T1 腫瘍が直径5cm未満で、原発組織に現局 T2 腫瘍が直径5cm以上または破裂して、皮下組織に浸潤 T3 腫瘍が筋肉を含む隣接組織に浸潤 |
| 所属リンパ節(N) | N0 所属リンパ節への転移なし N1 所属リンパ節への転移あり N2 遠隔リンパ節への転移が認められる |
| 遠隔転移(M) | M0 遠隔転移が認められない M1 遠隔転移あり |
TNMステージ分類
| ステージⅠ | T0またはT1; N0 ; M0 |
| ステージⅡ | T1またはT2; N0またはN1 ; M0 |
| ステージⅢ | T2またはT3; N0、N1またはN2; M1 |
腫瘍が破裂して所属リンパ節への転移があればステージⅡ、遠隔転移がみとめられればステージⅢと診断されます。
犬の血管肉腫の治療
広範囲の転移がみられない場合は、原発腫瘍の外科的除去後に化学療法を行います。
外科手術
原発になっている腫瘍部位を外科的に切除します。外科手術は根治が目的ではなく、診断が主目的になります。外科的に除去しても再発したり転移したりすることが多いことから、緩和治療や延命治療のために行われることが多いです。
脾臓に腫瘤ができた場合、約半数が良性(結節性過形成や血腫など)、残り半数が悪性で、悪性腫瘍のうち約3分の2は血管肉腫といわれています。血管肉腫になると、血管が脆くなり脾臓が破裂しやすいことから、腹腔内での大出血を起こさないように脾臓を摘出します。良性であっても、病変が大きくなれば破裂して腹腔内での大出血の要因になるため、検査も兼ねて摘出となります。
心臓に腫瘍ができた場合は、心タンポナーデを防ぐため、心膜のみ、可能であれば右心房も切除します。
化学療法
ほとんどが外科手術の後に実施されます。化学療法は、抗がん剤によって腫瘍細胞の増殖を抑える治療法で、ドキソルビシンがよく使用されます。また、免疫療法や分子標的薬などが併用されることがあります。外科手術を併用しても完治は難しいことが多いですが、延命の効果が得られることがあります。
緩和ケア
転移がみられるなど進行している場合は、緩和ケアが優先されます。血管肉腫は悪性度が高く、予後不良になりやすいため、多くは外科手術よりも緩和ケアが選択されます。愛犬の生涯を全うするまでのQOL(生活の質)を向上させるため、痛みや不快感を軽減させる処置を行います。
犬の血管肉腫の予後
血管肉腫は、予後が非常に悪いことが知られています。脾臓の場合、中央生存期間は無治療では約1ヶ月、外科的切除と化学療法を併用しても約6ヶ月とされています。皮膚や筋肉に発生した場合も予後は不良ですが、脾臓に比べると生存期間は長い傾向にあります。また、心臓に発生した場合は、脾臓よりも予後が悪いとされています。
中央生存期間とは・・・
特定の疾患やその治療によって生存割合が50%になるまでの生存期間のことをいい、生活の質や治療の副作用、予後の評価に有効です。生存期間中央値ともいいます。
血管肉腫の予防
残念ながら、血管肉腫を予防する方法はわかっていません。しかし、早期に異常を発見することで、治療の選択肢が広がって少しでも予後が改善する可能性があります。特に、発症リスクの高い中高齢犬やゴールデン・レトリバーなどの好発犬種は、しっかりと定期健診を受けて早期発見を心がけましょう。
さいごに
血管肉腫は、犬に頻発し、悪性度が非常に高く転移しやすい腫瘍です。発症すれば多くは予後不良になるため、早期の発見がとても重要です。早めの治療に結び付けるため、日頃から愛犬の様子を観察し、定期健診を受けるようにしましょう。

犬の悪性腫瘍についてのブログ記事はこちらからご覧ください。
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21動物病院-おおたかの森-
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執筆:獣医師 一色
監修:獣医師 院長 坂本




