【解説】食べているのに痩せてきた!下痢もある!犬の膵外分泌不全について
2025/12/11
流山市、柏市、野田市のみなさんこんにちは。
流山市おおたかの森にある、21動物病院-おおたかの森-です。
今回は、犬の膵外分泌不全について解説します。
膵外分泌不全とは
膵外分泌不全(EPI:Exocrine Pancreatic Insufficiency)は、膵臓の機能の一つである外分泌が十分に働くことができない病気をいいます。元気で食欲はあっても、下痢があり痩せていくといった症状がある場合は、膵外分泌不全が疑われます。
犬で多く、猫ではほとんど発症がみられないといわれています。
膵臓の外分泌とは
膵臓の機能は主に内分泌と外分泌があり、それぞれ体内の調節に重要な働きをしています。
| 産生場所 | 産生物質 | 作用 | |
| 内分泌 | 膵島 | α細胞からグルカゴン β細胞からインスリン | 血中に放出して血糖値を調節 |
| 外分泌 | 腺房細胞 | 消化酵素(リパーゼ、アミラーゼ、 トリプシン、プロテアーゼ)など | 消化管内に分泌して消化を助ける |
外分泌機能に重要な腺房細胞に異常が起こると、これら消化酵素の産生が不十分になり、脂肪やたんぱく質・炭水化物が十分に消化されず、消化不良や吸収不足による栄養失調をきたすため、体重の減少や下痢の症状が現れてきます。
膵臓の病気に関連する過去のブログ記事はこちらからご覧ください。
【解説】人もペットもかかると一生治療!犬と猫の糖尿病について
膵外分泌不全の原因
膵外分泌不全を起こす原因として、次のようなものが挙げられます。
膵臓にある腺房細胞の萎縮(PAA: Pancreatic Acinar Atrophy)
遺伝的要因が関連しているとされています。若齢期(1~5歳)の犬で多くみられます。詳細な原因はわかっていませんが、栄養障害や膵管の閉塞、中毒などが考えられています。
腺房細胞萎縮がみられる好発犬種
ジャーマン・シェパードで発症率が高く、ラフ・コリー、イングリッシュ・セッター、チャウ・チャウ、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル、ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア、コッカー・スパニエル、ウェルシュ・コーギーなどが知られています。

慢性膵炎の進行
膵炎の後遺症により、膵外分泌機能が低下して発症するとされています。中高齢の犬猫で多く、炎症性腸疾患(IBD)や胆管炎などと併発することも知られています。慢性膵炎は、5歳以上のミニチュア・シュナウザーに好発するため、注意が必要です。
悪性腫瘍
膵臓の腫瘍により、外分泌機能が障害されて発症します。糖尿病を併発することがあります。
先天性異常
膵臓の発育が悪く、正常に発達できない場合にみられることがあります。
膵外分泌不全の症状
「食欲旺盛にもかかわらず瘦せていく」というのが大きな特徴です。消化不良により栄養障害が起こっているため、栄養が吸収されないことから、次のような症状が出ることがあります。
- 食欲正常あるいは増強
- 多飲
- 体重減少
- 軟便の増加
- 下痢(脂肪を含んだ白くて臭いの強い便)
- 嘔吐
- 毛艶の低下
- 排便回数が多い
- おなら回数の増加(腸内ガスが多いため)
- ビタミンB12(コバラミン)欠乏症
- 小腸内細菌過剰増殖(SIBO)

膵外分泌不全の診断方法
膵外分泌不全は、次のような検査で診断されます。
問診
食欲や便の状態などを確認します。
血液検査
トリプシン様免疫活性(TLI)により確定診断ができます。また、ビタミンB12(コバラミン)も測定し、両者とも低値の場合は膵外分泌不全の可能性が高くなります。
糞便検査
便の中に未消化の脂肪やデンプンが検出されるかを確認します。膵外分泌不全を診断するための補助的な検査です。
膵外分泌不全の治療
膵外分泌不全は、残念ながら完治は難しい病気ですが、適切な治療で症状を抑えることができます。定期的な血液検査によるモニタリングを行いながら、次のような治療を検討していきます。
消化酵素の投薬
消化吸収を助けるために、消化酵素剤である膵酵素剤の投与や、状況に応じてビタミンB12(コバラミン)の投与を毎食行います。消化酵素剤には腸溶剤(パンクレリパーゼなど)と非腸溶剤(パンクレアチンなど)があり、非腸溶剤を投与する場合は、胃の刺激を受けやすいため胃酸分泌抑制剤も同時に投与します。消化酵素剤には多くの種類があるため、症状にあったものを見つけるまで時間がかかるかもしれませんが、長期的なケアを続けていくために根気強く探していくことになります。
食事管理
十分なエネルギーと消化吸収のよい食事を与えて栄養不足を改善することが大切です。食事回数は多めにして、少量ずつ与えるようにしましょう。
フードは、食物繊維が少なく消化吸収のよい療法食を利用しましょう。繊維が脂肪の吸収を妨げてしまうため、高繊維食は避けるようにします。
また、これまで低脂肪食療法を実施していたこともありましたが、脂肪を制限してしまうと脂溶性ビタミンや必須脂肪酸が不足する可能性があることがわかってきたため、現在は行っていません。なお、治療抵抗性の膵外分泌不全や、慢性膵炎を併発している場合は、脂肪制限を行うことがあります。
適切なフードを見つけるまで、複数のフードを試すことがあります。その他、腸内環境を整えるためにプレバイオティクス・プロバイオティクスを利用することがあります。
膵外分泌不全の予防
膵外分泌不全の発症を予防する方法は、残念ながら見つかっていません。発症しやすい犬種では、健康診断などを利用して体調をチェックし、普段から消化しやすい食事を与えることが予防につながります。腸内細菌叢を整えるようなプレバイオティクス・プロバイオティクスの活用やバランスのよい食事も重要です。日頃から体重の変化や便の状態を観察していきましょう。
まとめ
膵外分泌不全は、発症すると長期的なケアが必要な病気です。適切な治療を行えば、症状を抑えることができます。食べているのに痩せてきたり、便の状態が気になったりする場合は、早めに受診するようにしましょう。
当院ではエビデンスを元に検査・診断・治療を行っています。
犬の膵外分泌不全について不明点やご相談があれば、当院までお電話もしくはLINEにてお問い合わせください。
21動物病院-おおたかの森-
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執筆:獣医師 一色
監修:獣医師 院長 坂本




