【解説】膵炎ってどんな病気?
2023/09/04
流山市、柏市、野田市のみなさんこんにちは。
流山市おおたかの森にある、21動物病院-おおたかの森- 院長の坂本です。
当院ではエビデンスを元に検査・診断・治療を行っています。
本日は膵炎について解説します。
「膵炎」という単語は聞いたことある方が多いかと思います。でも人間の話が多いのではないでしょうか?
犬も猫も同じように膵炎にかかります。みなさんが思っている以上に発症する子は多いと感じます。
ではどういった病態なのか見ていきましょう。
膵臓って何をしている臓器?
膵臓は、胃や十二指腸に張り付くように存在しています。そして十二指腸へと管がつながっています。
機能としては大きく分けて2つあります。
- 消化酵素の分泌(膵リパーゼ、アミラーゼ、トリプシンなど)
- ホルモンの分泌(インスリン、グルカゴン、ガストリン、ソマトスタチン、膵ポリペプチドなど)
膵炎ってどういう状態?
消化酵素は膵臓の中に貯蔵されており、十二指腸へ分泌するときに活性化し、酵素として機能します。これが何かしらのきっかけで膵臓内で活性化してしまい、膵臓自身を消化してしまい炎症を起こします。
急性と慢性の2パターンあります。
急性膵炎:組織学的な変化を伴わない膵外分泌の炎症
慢性膵炎:線維化など永続的な組織学的な変化を特徴とする炎症
膵炎にかかりやすいリスク因子
- 高脂肪食(イヌのみ)
- 無分別な食事、ゴミ箱を漁る
- 一部の薬剤
- 品種(ミニチュアシュナウザー、ヨークシャーテリア、テリア犬種)
- 内分泌疾患(副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)、糖尿病、甲状腺機能低下症)
- 高脂血症(イヌのみ)
- 肥満
- 高Ca血症など
膵炎の症状
急性膵炎では
- 食欲不振
- 活動性の低下
- 嘔吐
- 下痢
- 腹部疼痛(頭を下げてお尻を上げる祈りのポーズや、お腹を押すと痛がる)
慢性膵炎では症状はあまり目立たず、
- 嘔吐
重症度が高いと、発熱、黄疸、点状出血、脱水など。
膵炎の診断
以下の検査結果を総合的に判断して、膵炎と診断します。嘔吐だけや1つの異常値だけでは膵炎とは判断できません。
- 消化器症状があること
- 血液検査
- 他の病気の可能性も考えて、様々な項目を測定します。
- 膵臓から出ている消化酵素であるLIPやAmy
- 炎症の指標であるCRPやSAA
- 膵リパーゼ特異的なsnap-cPL, snap-fPL, spec-cPL, spec-fPL (cPLのcはcanineつまりイヌ、fPLのfはfelineつまりネコ)
- 超音波検査
- 膵臓や膵臓周囲の異常の検出。
膵炎の治療
基本的には特別な治療はなく、対症療法となります。治療管理のため入院することも少なくありません。
- 脱水の改善(点滴)
- 胃酸抑制剤、制吐剤、消化管運動改善剤
- 鎮痛剤
- 消炎剤
- 場合によって抗血栓療法
- 食事の変更(犬の場合は高脂肪食や高脂血症がリスク因子なので、低脂肪食に変更します。)
- 原因疾患がある場合はその治療
治療に関しては未だこれが絶対に正解!というものはないので、獣医師によって少し差異があります。
最後に
膵炎になった原因がわからないことも多いですが、ゴミ箱を漁る犬や高脂肪食(おやつ、盗食)はリスクが高いとされています。これらは防ぐことができる原因なので、気を付けましょう。
また健康診断でLIPやAmyのみが異常値ということも散見されますが、臨床症状がなければ膵炎とは言い切れません。過敏にならないようにしましょう。