【解説】症状が出にくい!いわゆる脂肪肝!犬の空胞性肝障害について
2025/07/31
流山市、柏市、野田市のみなさんこんにちは。
流山市おおたかの森にある、21動物病院-おおたかの森-です。
今回は、空胞性肝障害について解説します。
空胞性肝障害とは
空胞性肝障害 Vacuolar hepatopathy(VH)は、肝臓を構成する肝細胞内に小さな空間ができる非炎症性疾患で、脂肪肝とも呼ばれます。空間の内容物は主に脂質やグリコーゲンで、それらが混在している場合や空気、水のこともあります。脂肪分、糖質などを過剰摂取することで肝細胞に変性が生じている状態です。犬ではよくみられ、内分泌疾患や代謝性疾患がある場合に発症しやすくなります。
肝臓のはたらき
そもそも肝臓は、どのような臓器なのでしょうか。肝臓は、食物を栄養素として吸収できるように変換したり、必要な時に備えてエネルギーを貯蔵したり、毒物を分解するなど多くの役割をもっています。いわゆる、たくさんの肝酵素が働く化学工場です。病気や不調になると、肝臓が適切な状態に修復してくれるため、身体中の臓器・器官にとって必要不可欠な臓器といえます。
肝臓の役割として、主に次のようなものがあります。
| 代謝 | 糖質をエネルギー、脂質を中性脂肪やコレステロールなど、たんぱく質をアミノ酸に変えます。これらを全身に送ったり、貯蔵したりします。 |
| 解毒 | 身体に入った有害なものを分解し、排出します。 |
| 貯蔵 | ぶどう糖をグリコーゲンに変換して貯蔵したり、血液成分として必要な葉酸やビタミンB12を貯蔵します。 |
| 合成 | 脂肪の消化作用をもつ胆汁を合成します。 |
| 尿素生成 | オルニチン回路によってアンモニアを尿素に変換して無毒化します。 |
空胞性肝障害の原因
内分泌疾患や代謝性疾患などの基礎疾患
内分泌疾患や代謝性疾患などの様々な基礎疾患から引き起こすことが知られています。特に、副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)、甲状腺機能低下症、糖尿病などの場合は注意が必要です。副腎皮質機能亢進症のときは、グルココルチコイドの分泌が高まることで空胞性肝障害を引き起こします。また、糖尿病や甲状腺機能低下症では、代謝が低下して貯蔵グリコーゲンの利用が減り、血液中の脂質が過剰になるため生じます。
高脂肪のフードを過剰に摂取
脂肪分を多く含むフードを大量に与えることでも空胞性肝障害を引き起こします。
医原性要因(ステロイド誘発性)
免疫系疾患や皮膚疾患で使用されるステロイドなどの薬剤や、慢性的なストレスによる副腎皮質ホルモンの上昇によっても起こります。
遺伝的要因(特発性)
遺伝的に特発性高脂血症を発症しやすい犬種は、これによって空胞性肝障害が続発する場合があります。好発犬種として、ミニチュア・シュナウザー、シェットランド・シープドッグ(シェルティー)、スコティッシュ・テリアがあげられます。

糖尿病、副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)、甲状腺機能低下症についてのブログ記事はこちらからご覧ください。
【解説】人もペットもかかると一生治療!犬と猫の糖尿病について
【解説】水ガブ飲み!尿も多い!犬に多いクッシング症候群について
空胞性肝障害の症状
基礎疾患がない場合は、ほとんどが無症状です。血液検査で肝酵素の上昇が高いことで発見されることが多いです。糖尿病やクッシング症候群のような基礎疾患や、ステロイドの服用があれば、多飲多尿、食欲増進などの症状がでることがあります。
ただ、慢性化したり肝細胞の損傷の程度によっては、まれに肝機能の低下や肝細胞腫瘍などの合併症を引き起こすことがあります。
空胞性肝障害の検査
血液検査
肝酵素の上昇がみられます。
- ALPの上昇
- ALTやGGTの軽度の上昇
中性脂肪の上昇も併発することが多いです。
レントゲン検査
肝臓が腫れる場合があります。
超音波(エコー)検査
肝臓が腫大し、白色化して見える場合があります。
肝生検
空胞性肝障害と確定診断するために、肝生検を行います。肝生検は全身麻酔下で行います。
空胞性肝障害の治療
ほとんどの場合は可逆性であり、基礎疾患の治療やステロイドの減薬や休薬で改善します。
基礎疾患の治療
副腎皮質機能亢進症や甲状腺機能低下症のような基礎疾患があれば、その治療を行います。
高脂血症治療薬の投与
高脂血症も併発している場合は、高脂血症治療薬を使用します。高脂血症がもとで空胞性肝障害を発症している場合は、肝酵素が低下することがあります。
ステロイド薬剤の使用見直し
ステロイドが原因となっている場合は、投与量や投与回数を減らせるように免疫抑制剤などの他の薬剤に変更することを検討します。
食事療法
肝臓は脂肪の代謝を行いますが、弱った肝臓の負担を軽減するために低脂肪食に変更します。低脂肪食は、空胞変性の改善や肝酵素の低下を目的としていますが、空胞性肝障害や高脂血症に関連して胆嚢粘液嚢腫や膵炎が続発することが多く、これらの治療にも有効とされています。おやつをあげるときも低脂肪のものにしましょう。
また、肝細胞の再生に必要な良質なたんぱく質や、肝臓の炎症を抑えて細胞膜の修復を助ける効果のあるω(オメガ)3脂肪酸も肝臓の修復には重要なので、それらが含まれているものを与えましょう。
胆嚢粘液嚢腫についてのブログ記事はこちらからご覧ください。
さいごに
基礎疾患の治療を行い、食生活を改善して適度な運動を行うことで、空胞性肝障害の予防につながります。症状として現れない場合がありますので、早期発見のために定期的な健康診断を受診するようにしましょう。

当院ではエビデンスを元に検査・診断・治療を行っています。
空胞性肝障害について不明点やご相談があれば、当院までお電話もしくはLINEにてお問い合わせください。
21動物病院-おおたかの森-
千葉県流山市おおたかの森北2-50-1 GRANDIS 1階
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執筆:獣医師 一色
監修:獣医師 院長 坂本




