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    【解説】歩き方がおかしい!動きたがらない!股関節形成不全について

    2025/07/31

    流山市、柏市、野田市のみなさんこんにちは。

    流山市おおたかの森にある、21動物病院-おおたかの森-です。

     

    今回は、股関節形成不全について解説します。

     

     

    股関節形成不全とは

    股関節形成不全(Hip dysplasia)とは、骨格形成する成長期に骨の変形や関節のゆるみなどの形態的な異常が起きることで、骨盤にある股関節に炎症などの症状を引き起こす疾患です。股関節は骨盤と大腿骨からなる関節で、骨盤にある寛骨臼が浅く変形するため、大腿骨にある大腿骨頭が正しく収まらずに不安定になって脱臼しやすくなり、軟骨や靭帯の損傷によって関節炎を発症します。犬と猫のどちらも罹患しますが、犬の方が多くみられます。

     

     

     

    股関節形成不全の原因

    犬と猫では、股関節形成不全の原因が異なるところがあります。

     

    犬の股関節形成不全の原因

    犬の発症原因は、遺伝的要因と環境的要因があります。

     

    遺伝的要因

    遺伝的要因は7割を占めるとされ、大型犬超大型犬でとくに多くみられます。大型犬や超大型犬は、短期間で身体が大きく育つため、骨の成長と筋肉の形成のバランスが崩れやすく、股関節が不安定になりやすくなります。さらに、重い身体に負荷がかかると、関節炎や骨の変形などがおこりやすくなります。

     

    好発犬種として、ゴールデン・レトリーバーやラブラドール・レトリーバー、エアデール・テリア、チャウ・チャウ、サモエド、バーニーズ・マウンテン・ドッグやマスティフ、ニューファンドランド、グレート・ピレネー、ロット・ワイラー、セント・バーナード、オールド・イングリッシュ・シープドッグ、ジャーマン・シェパードなどがあげられます。

     

    一方、小型犬や中型犬では、大型犬と同様に罹患する可能性がありますが、大腿骨頭が壊死するレッグ・カルべ・ペルテス病(大腿骨頭無菌性壊死病)や股関節脱臼の方が多くみられます。

     

    環境的要因

    環境的要因としては、成長期に関節に負担がかかるような激しい運動や、運動不足による肥満、偏った食生活などが考えられています。

     

     

    猫の股関節形成不全の原因

    猫の発症原因は、遺伝的要因がほとんどです。また、関節に負担のかかる過剰な運動や肥満により、悪化しやすいとされています。

     

    発症しやすい猫種として、ヒマラヤン、ペルシャ、メインクーン、デボンレックスがあげられます。

     

     

    股関節形成不全の症状

    股関節形成不全は、軟骨の損傷や変性によって炎症痛みが生じるため、次のような症状がみられます。

    • 腰を振るような歩き方をする(モンローウォーク
    • ふらふらとした歩き方をする
    • うさぎ跳びのように両後肢で地面を蹴るような歩き方をする
    • 運動を嫌がる(運動不耐性
    • 散歩で歩きたがらず座り込んでしまう
    • 階段やソファなどの段差を嫌がる
    • 足や腰を触らせない など

     

    発症時期は、多くは若齢期老齢期にみられます。

    • 若齢期:後肢に体重をかけるたびに亜脱臼になるため、不安定な歩き方になり関節炎を繰り返します。
    • 老齢期:加齢による筋肉量の減少で関節に負担が増えて慢性関節炎が続き、変形性関節症に移行します。

     

    また、進行すると股関節の完全脱臼を起こすこともあります。

     

    変形性関節症についてのブログ記事はこちらからご覧ください。

    【解説】犬と猫の変形性関節症について

     

     

    股関節形成不全の検査

    視診や触診、画像診断にて股関節の緩み程度を評価して、治療につなげます。

     

    視診

    • 歩様検査:歩く際にどのように負重して歩くのかについて跛行スコアで評価します。特徴的なモンローウォークの有無も確認します。
    • 骨格の評価:四肢や筋肉量の左右差を確認します。
    • 活動性の評価:整形疾患がある場合でも、多くは元気があります。

     

    触診

    オルトラニ試験やバーデン試験などを実施し、股関節を伸ばしたり曲げたりする時の痛みの評価や関節可動域の不安定性を確認します。ただし、これらの試験を正確に評価するために、鎮静が必要になることがあります。

     

    画像診断

    レントゲン検査で骨盤の形状(寛骨臼や大腿骨頭の変形、炎症など)や股関節の脱臼の程度を観察します。ただし、2歳以上にならないと最終判断が難しいこと、レントゲン検査での関節炎の重症度と症状は一致しないことに注意する必要があります。

    レントゲン検査では診断が難しい場合は、必要に応じてCTやMRIで評価することがありますが、当院では対応しておりません。

     

     

    股関節形成不全の治療

    これまでの診断結果や症状や年齢、今後どのような生活を送りたいかを踏まえて、治療方法を選択します。

     

    内科療法(保存療法)

    軽度から中程度の症例を対象とし、疼痛緩和が目的の治療です。多くの犬は、内科療法で日常生活を送ることができます。急性期や慢性期でも治療方法が異なり、症状に応じて治療内容を検討していきます。

     

    体重管理

    関節にかかる負担を減らすことで、関節炎の症状を減らし進行を遅らせます。鎮痛剤を減らす効果も期待できます。

     

    抗炎症剤、鎮痛剤

    関節炎を緩和するために、症状に応じて抗炎症剤や鎮痛剤を使用します。

     

    軟骨保護サプリメントの投与

    ω(オメガ)3脂肪酸、グルコサミン、コンドロイチンなどにより、関節軟骨を保護する効果を助けます。

     

    運動療法・理学療法

    症状があるときは運動制限をして、関節に負担がかからないようにします。症状が落ち着いたら、短時間で効率のよいストレッチやリハビリテーションを行います。関節の強化や関節可動域の改善、後肢の筋肉量の増加・維持が目的です。温熱療法、レーザー治療も有効です。

     

    外科療法

    関節炎の進行を抑えて変形性関節症を予防したい場合や、内科療法では改善が難しい重度の場合に手術を検討します。手術には次のようなものがあり、症状や適応、合併症などそれぞれに特徴があります。術後には、術後ケアや機能回復のためのリハビリテーションが必要です。

     

    • 骨盤三点骨切り術(Triple pelvic osteotomy:TPO):現在の主流
    • 若齢期恥骨癒合術(Juvenile pubic symphysiodesis:JPS):若齢期
    • 股関節全置換術(Total hip replacement:THR):中型犬、大型犬
    • 大腿骨頭切除術(Femoral head osteotomy:FHO):小型犬、痛みの軽減が目的

     

    ただし当院では本手術の対応はできないため、実施可能な動物病院をご紹介します。

     

     

    股関節形成不全の予防

    股関節形成不全は、遺伝的な要因が大きいため予防することは難しいです。そのため、早期に発見して症状の悪化や進行を抑えることが重要です。関節に負担にならないよう、日頃から次のことに注意するようにしましょう。

    • 子犬の時期は、食事に気を付けて適切な運動と体重管理を行いましょう。
    • 骨格が未熟な時期に激しい運動は避けましょう。
    • 関節に負荷を与えるような生活環境は見直しましょう。
    • 好発犬種や好発描種は、1~2歳ごろまでに整形外科の検診を受けましょう。
    • 歩き方座り方に変化がないか注意しましょう。
    • 定期的に健康診断を受けるようにしましょう。

     

     

    さいごに

    股関節形成不全は、股関節に痛みを生じさせる病気です。また、進行すると変形性関節症への移行や股関節の完全脱臼につながる可能性があります。残念ながら予防が難しいため、早期に発見して進行を遅らせることがQOLの向上につながります。歩き方や座り方など何か気になることがあれば、お早めにご相談ください。

     

     


    当院ではエビデンスを元に検査・診断・治療を行っています。

    股関節形成不全について不明点やご相談があれば、当院までお電話もしくはLINEにてお問い合わせください。

     

    21動物病院-おおたかの森-

    千葉県流山市おおたかの森北2-50-1 GRANDIS 1階

    TEL: 04-7157-2105

    Web予約: https://wonder-cloud.jp/hospitals/21ah_nagareyama/reservationsonder

    LINE: @092jvjfm

     

    執筆:獣医師 一色

    監修:獣医師 院長 坂本