【解説】犬と猫の変形性関節症について
2024/02/01
流山市、柏市、野田市のみなさんこんにちは。
流山市おおたかの森にある、21動物病院-おおたかの森- 院長の坂本です。
今回は老犬、老猫に非常に多い変形性関節症について解説します。
変形性関節症とは?
骨関節炎とも言われる、軟骨の変性、関節構造の変化を呈する進行性・慢性・非感染性の関節症。
関節軟骨の損傷や新生骨、骨棘などが出現します。
こういった軟骨や関節構造の変性は不可逆的…つまり元に戻りません。
したがって、早期発見・早期治療することで、進行を抑え、軽度なうちに症状を緩和することが重要となります。
発見が遅れて重症化した状態では、疼痛を抑えることで症状が改善しても、関節の可動域の完全な回復はできません。
ちなみに高齢な犬の70%、猫の90%が罹患していると言われています。
変形性関節症の症状とは?
残念ながら、初期段階では症状はほとんどわかりません。
進行もゆっくりなので、進行して症状が出始めても、老化だと思って放置されてしまうケースが多いです。
進行していくと、関節の腫脹、軟骨の損傷、関節可動域の制限などによる疼痛が出ます。そのサインとしては次のようなものが挙げられます。
- 足をかばって歩く
- 歩行、階段の昇降、ジャンプ、遊びが減る。
- 飼い主の歩行速度についてこれなくなる。
- 散歩の時間が短くなる。
- 寝起きの動きが悪く、動いているうちに動きが良くなる。
単なる老化ではなく、関節が痛いために動きたくなくなる。そして動かないと関節がより固まり、関節炎も強くなり、筋肉も落ちる。さらに動きたくなくなる。
悪循環に入るため、怪しいと思ったら放置せず早めに動物病院に相談しましょう。
変形性関節症の診断は?
問診・身体検査
年齢はどうか、症状はどんな様子か、症状の頻度・程度、筋肉の量などチェックしていきます。
X線検査
関節炎の起こりやすい部位や、触診で関節炎を疑う部位の画像を撮影します。初期段階ではX線画像でもなかなか異常としてでないことも少なくありません。
CT検査
X線だけでは診断がつかず、他の疾患の可能性が高い場合に行います。
関節液検査
関節の中には滑液という液体が溜まっています。それを注射器で採り、炎症や細菌の有無を検査します。
変形性関節症の治療は?
上述した通り、残念なことに関節の構造変化は戻りません。かといって何も治療しないと疼痛による生活の質(QOL)の低下や動かないことによるさらなる関節炎の悪化という悪循環に陥ります。
したがって主体となる治療は疼痛管理となり、補助的にサプリメントを使用する形になることが多い。
疼痛管理・消炎
非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)を主に使っていきます。ただし種類にもよりますが長期的に使うと胃腸障害や腎臓への負担があるので、胃薬などと同時に使うことが多いです。
最近は新薬も出ています。1度の皮下注射で1か月間、疼痛を抑えるというものです。分子標的薬なので副作用が非常に小さいことがメリットですが、少し高価なお薬となっています。
軟骨保護
多硫酸化ペントサンなどは軟骨の劣化を遅らせたり、関節内のヒアルロン酸を増加させる効果があります。最初の4回は1週間ごとに、その後は2~4週間ごとに皮下注射します。効果が実感できるのが2~3週間後からと即効性はありませんが、副作用が少なく、費用もそこまで高くありません。
運動
関節痛いのに運動させるの?!と思うかもしれませんが、必要です。ただし軽い運動であって、激しい運動ではありません。
関節と筋肉を動かさないと、筋肉の拘縮・減少、炎症の悪化など良いことはありません。疼痛管理と合わせて運動しましょう。
短時間の運動の他にも、関節やその周囲のマッサージや、ストレッチなども有効です。
サプリメント
関節軟骨の成分や、消炎作用のあるサプリメントが販売されています。
あくまでサプリメントなのですごく効く!ということはありませんが、副作用もほとんどありません。治療の主体にはなりませんが、積極的にに使っていきましょう。
当院での治療の選択は?
当院では飼い主様とのコミュニケーションをとても大事にしています。動物を触って、診断してコレだからこの治療だけです!と押し付けるような治療ではありません。コミュニケーションに十分な時間を取り、動物と飼い主の双方が十分な利益を受けられるように意識しています。
症状の重症度、飼い主様の通院できる頻度、動物のストレス、飲み薬ができるか、注射が大丈夫か、経済的な状況など含めて総合的に判断し、相談の上、治療方針を定めていきます。
変形性関節症のまとめ
- 変形性関節症の進行は元に戻らない。
- 早期発見して、早期治療につなげましょう。
- 以前よりもジャンプが減った、歩くのが遅くなった、階段の昇降での躊躇が増えたなどあれば早めのご相談を。