【解説】胆嚢粘液嚢腫について
2023/11/09
今回は胆嚢粘液嚢腫(たんのうねんえきのうしゅ)について解説します。
そもそも胆のうって何?
胆のうは、肝臓で作られた胆汁を一時的に貯蔵しておく袋状の臓器で、肝臓の隙間に挟まるように存在します。
胆のうは胆のう管、総胆管を通して十二指腸へと繋がっています。
胆汁は消化液であり十二指腸へと分泌されることで、脂肪の吸収の補助と、コレステロールやビリルビンの排泄を行っています。
胆のう粘液嚢腫とは
通常、胆汁はさらさらとした液体ですが、胆のう粘液嚢腫では粘液の成分であるムチンが増え、ゼリー状になり硬くなってしまいます。
硬くなるため、分泌ができず胆のう内にどんどん貯まっていきます。そして「胆のうの収縮阻害」、「胆のう破裂」、「胆管閉塞」へと続発していくのです。
胆のう破裂では刺激性のある胆汁が腹腔内に漏れ出るため、腹膜炎を起こしたり黄疸を起こしたりして命にかかわります。
胆管閉塞も肝臓が作った胆汁の行き場がなくなり、肝障害や黄疸を起こすため命にかかわります。
また、胆汁が泥のようになる「胆泥症」との関連も指摘されていますが、胆泥症が胆のう粘液嚢腫に発展していくのかは定かではありません。
胆のう粘液嚢腫の原因は?
率直に言うと原因はわかっていません。ただし一部の病気があると発症しやすくなると言われており、関連性が指摘されています。
一部の病気とは、
- 副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)
- 甲状腺機能低下症
- 高脂血症
胆のう粘液嚢腫の症状は?
無症状のことが多く、健康診断や術前検査で見つかることがほとんどです。
胆管閉塞や胆のう破裂が起こると、元気・食欲消失、嘔吐、黄疸などを呈します。あまりコレがあれば胆のう粘液嚢腫!という症状はありません。
胆のう粘液嚢腫の検査は?
血液検査
進行度や状況によって肝臓の酵素やT-Bilが上昇します。無症状時には上がらないことも多い。
画像検査
超音波検査で胆のうの中がどうなっているか確認します。
胆のう粘液嚢腫の治療は?
内科的治療と外科的治療があります。超音波で見た時の進行度や肝酵素の上昇の有無、症状、胆のう破裂や胆管閉塞の有無をみて総合的に判断します。
進行が軽度の場合は内科的治療になることが多い。利胆剤や、上述した基礎疾患があるようならその治療を行います。
進行が重度や胆のう破裂など緊急性がある場合は外科的治療になることが多い。基本的には胆のう摘出を行います。そのほかに胆のう十二指腸吻合などを行うことも。
進行が重度で外科的治療が推奨されるときは、様子を見て症状が出てから手術を行うより、無症状のうちに手術のほうがリスクは低下すると言われています。
まとめ
胆のう粘液嚢腫は無症状のことが多く、偶発的に見つかることが多いです。しかし無症状だからと治療も定期健診もしないといつの間にか進行して胆のう破裂など命に係わる状況になることがあります。
診断を受けたら定期的に通院しましょう。
また、内科的治療か外科的治療かはコッチが絶対に正解!というものはないので、かかりつけの獣医とよく相談しましょう。
胆のう粘液嚢腫について不明点やご相談があれば、当院までご連絡ください。