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    【解説】後ろ足が着けない!歩き方がおかしい!犬の前十字靭帯断裂について

    2025/08/30

    流山市、柏市、野田市のみなさんこんにちは。

    流山市おおたかの森にある、21動物病院-おおたかの森-です。

     

    今回は、犬の前十字靭帯断裂について解説します。

     

     

    十字靭帯とは

    十字靭帯は、膝関節の構成要素のひとつで、膝の屈曲や伸展の運動するために重要なものです。十字靭帯には、前十字靭帯後十字靭帯があります。前十字靭帯は、大腿骨―膝蓋骨―脛骨と膝関節の安定性膝の屈伸のために重要で、大腿骨よりも脛骨が前方に変位しないように制御したり、膝関節の過度な伸展や内旋を防ぐ機能があります。また、後十字靭帯は、前十字靭帯と交差するような配置にあって、二つの靭帯によって脛骨が内側にねじれないように支える働きをしています。

     

    ここでは、犬の膝関節の疾患として多くみられる前十字靭帯断裂の解説をしていきます。

     

    前十字靭帯断裂とは

    前十字靭帯断裂(Cranial Cruciate Ligament:CrCL)は、膝蓋骨脱臼とともに犬で代表的な膝関節の疾患です。前十字靭帯が断裂すると、膝関節が不安定になり脛骨の前方変異と内旋が起こります。切断された患部は関節炎を引き起こし、さらに膝関節の不安定によって二次的に半月板の損傷が起こるため、痛みが生じます。断裂の程度は、靭帯の一部の線維が切れてしまった部分断裂と靭帯の線維が完全に切れてしまった完全断裂があります。犬で多い疾患ですが、猫でも認められます。

     

     

     

    犬の前十字靭帯断裂の症状

    2~10歳で多い傾向があり、ほとんどが5~7歳以上の高齢犬でみられます。また、肥満犬にも多い傾向があります。急性期と慢性期があります。

     

    急性断裂

    • 膝の痛み:2~3日程度で減弱(痛みに慣れているだけ)
    • 後ろ肢が挙がっている
    • 後ろ肢が地面に着けない
    • 歩き方がおかしい
    • 肢を引きずる
    • 立ち上がるときに時間がかかる
    • 外側に肢を伸ばして座る
    • 膝の屈伸時にクリック音や振動(半月板の損傷の場合)

     

    慢性断裂

    • 持続的な跛行(運動後はとくに顕著)
    • 膝関節が腫れている(特に患肢内側)
    • 慢性関節炎(断裂部分から炎症性メディエーター分泌による)
    • 大腿直筋などの太腿の筋肉が細くなる(患肢側)
    • 二次性の変性性骨関節症
    • 半月板損傷の併発(骨関節炎へ進行)

     

    断裂時から関節の変性が始まります。半月板の損傷は、前十字靭帯断裂症例の約半数でみられるとされ、併発があると急速に骨関節炎に進行していきます。片方の肢が断裂すると、対側肢の前十字靭帯も断裂しやすくなります。また、部分断裂では膝関節の不安定性や跛行などの症状がはっきりしないことが多いです。

     

     

    犬の前十字靭帯断裂の原因

    • 加齢による前十字靭帯の退行性変化(変性)
    • 膝蓋骨脱臼・亜脱臼
    • 肥満による負重増加

    など 膝に負担がかかっている状態の上に、さらに急激な膝への力やストレス(体勢変化(起立、ジャンプなど)、外力、捻転、外傷など)が加わることで発症するとされています。

     

    そのほかに、次のような原因も考えられています。

    • 遺伝性要因
    • ホルモン変化要因(避妊・去勢手術を実施済みなど)
    • 骨の形態学的異常
    • スポーツなどによる外傷(まれ)

     

    膝蓋骨脱臼についてのブログ記事はこちらからご覧ください。

    【解説】膝蓋骨脱臼について

     

    好発犬種

    前十字靭帯断裂を起こしやすい犬種があります。体重の大きい大型犬で発症が多くみられますが、近年では小型犬にもみられるようになっています。

     

    • 大型犬:ゴールデン・レトリバー、ラブラドール・レトリバー、バーニーズ・マウンテン・ドッグ、ロットワイラー、ニュー・ファンドランド、ジャーマン・シェパード、ブルドッグ、チャウチャウ など
    • 中型犬:ウェルシュ・コーギー、ビーグル、柴犬、ボーダー・コリー など
    • 小型犬:チワワ、ヨークシャー・テリア、ジャック・ラッセル・テリア など

     

     

    犬の前十字靭帯断裂の検査と診断

    膝関節の検査を中心に、様々な検査を併用して総合的に診断します。

     

    視診

    四肢の長さや筋肉量の左右差、活動性を確認します。立位で緊張状態を、横臥位で弛緩状態を評価します。

     

    触診

    両後肢における膝関節の屈曲や伸展の可動域や痛みの有無を確認します。患肢での筋肉量の低下や膝関節の内側の肥厚や、関節腫脹などを確認します。

     

    歩様検査

    跛行スコアを評価し、どの程度跛行が進んでいるかを確認します。治療方法の参考にするとともに、治療前後の変化を評価するのにも役立ちます。

     

    お座り試験/お座りテスト(Sit test)

    お座りさせて、患肢の膝関節を屈曲させることができるかを確認する検査です。膝が痛い場合は、肢を外側に伸ばしたり前に投げ出したりするなど、きちんと膝を曲げたお座りが難しくなります。

     

    脛骨前方引き出し試験(Cranial drawer test)

    古くから実施されている方法で、膝の不安定性を評価する試験です。横臥位にて膝関節を屈伸させながら触診を行い、大腿骨に対して脛骨が前方に移動するかを確認します。部分断裂では、脛骨は引き出せませんが、痛みが確認できます。慢性症例では、関節周囲の組織が肥厚するため、引き出し症状を誘発するのが難しくなることがあります。

     

    脛骨圧迫試験(Tibial compression test)

    膝の不安定性を評価する試験です。横臥位で検査しますが、立位での膝関節への負重を再現し脛骨が前方に滑ることを確認します。

     

    画像検査

    レントゲン検査を行い、膝関節周囲の骨の変性状態や関節滲出液の存在を確認します。なお、靭帯や半月板はレントゲンには写らないため、この検査では靭帯や半月板の評価は難しいです。

     

    超音波検査

    膝関節の骨・軟骨、筋肉や靭帯の状態や炎症などを確認します。

     

     

    犬の前十字靭帯断裂の治療

    運動量や体重などを考慮して治療方法を検討します。放置すると変形性関節炎を発症しやすくなるため、外科療法を第一優先にして、できるだけ早く手術を行います。また、外科療法と併用して、手術の前後で投薬などの内科療法やリハビリテーションを実施します。

     

    外科療法

    膝蓋骨脱臼の併発、重度な肥満、半月板損傷、中型犬以上などの場合は、外科療法を検討します。膝関節の安定化のための手術は、次の3つに分類されます。多くは、術後8~12週間で通常の運動ができるようになります。なお、これらの外科手術は当院では対応しておりません。

     

    脛骨高平部水平化骨切り術(TPLO)

    最もよく用いられる方法で、前十字靭帯の再建はせずに、脛骨の骨を削り関節面の角度を変えることで膝を安定化させる手術です。骨を切った部分の一部がはがれてしまうことがあるため、術後早期は、過剰な屈曲、ジャンプ、階段昇降など、膝に負重をかけないようにする必要があります。手術を行うと、歩行能力の回復までに2~6ヶ月を要することもあります。インプラントが挿入されるため、リハビリテーションは状態を確認しながら進めます。

     

    関節包外固定術

    組織などの移植片や縫合糸を使って関節の外から固定し、関節を安定化する方法です。関節周囲の線維化が8~10週間で起こり、関節は安定化します。術後すぐにリハビリテーションを開始できます。

     

    関節包内固定術

    移植片や縫合糸などを使って、十字靭帯を置き換える方法です。血管新生と組織が結合するのに時間がかかるため、移植片が靭帯として機能するためには数か月かかります。移植片の強度に限界があるため、様子をみながらリハビリテーションを開始します。

     

    リハビリテーション

    リハビリテーションにより、関節可動域(特に伸展性)の改善、筋肉量の改善、跛行改善など四肢における機能回復の効果が期待されています。術後は、運動制限をするよりも、早くからリハビリを開始した方が回復が早いとされますが、手術の内容や状態によっては始められる時期が異なります。

     

    保存療法

    手術が第一優先ですが、鎮痛剤や運動制限、装具装着などの保存療法のみを実施する場合があります。鎮痛剤で炎症や痛みを和らげることはできますが、関節周囲が線維化するのに半年から一年かかるとされ、その間にも半月板の損傷や関節の変性が進行することが多くあります。

     

     

    犬の前十字靭帯断裂の予防

    前十字靭帯断裂は、肥満や運動不足が誘因となることが多いため、食事管理や運動習慣を改善すること、さらに膝の負担を軽減するために体重管理と筋力の維持が予防のポイントになります。

     

    • 肥満の場合は減量し、膝に負担のかからない適切な体重管理をしましょう。
    • 膝に負担のかかる動作をしないように、膝の回旋や高いところからの着地は避けましょう。
    • 脛骨が前に出ないようにするために、ストレッチやリハビリなど腿の筋肉を鍛えましょう
    • 膝蓋骨脱臼が習慣性に発生する場合は、早めに治療しましょう。
    • 定期的な健康診断を受けて、早期発見ができるようにしましょう。

     

     

    さいごに

    前十字靭帯断裂は、加齢で膝が弱くなっていたり膝蓋骨脱臼など膝の構造に変化が起きている状態に、さらに急激な力が加わったことで発症する関節疾患です。大型犬だけではなく小型犬にも多く、さらに室内飼育が多くなったことでも発症が増える原因となっています。生活環境を見直して、普段から体重管理や運動習慣などをしっかり行い、膝関節に負担がかからないようにしましょう。歩き方がいつもと違うなど、気になることがあればご相談ください。

     

     

     


    当院ではエビデンスを元に検査・診断・治療を行っています。

    前十字靭帯断裂について不明点やご相談があれば、当院までお電話もしくはLINEにてお問い合わせください。

     

    21動物病院-おおたかの森-

    千葉県流山市おおたかの森北2-50-1 GRANDIS 1階

    TEL: 04-7157-2105

    Web予約: https://wonder-cloud.jp/hospitals/21ah_nagareyama/reservationsonder

    LINE: @092jvjfm

     

    執筆:獣医師 一色

    監修:獣医師 院長 坂本