【解説】膝蓋骨脱臼について
2023/10/07
今回は膝蓋骨脱臼についてです。
よく患者様からも”パテラ”大丈夫ですか?と聞かれることがあります。
パテラとは何ぞやというところから解説していきます。
パテラとは?
膝蓋骨(いわゆる膝のお皿の骨)を英語でpateller(パテラ)と言います。
ここで特に小型犬で多い病気が膝蓋骨脱臼です。
膝蓋骨が内側に脱臼することを膝蓋骨内方脱臼、外側に脱臼することを膝蓋骨外方脱臼といいます。
(ちなみに小型犬で多いのは内方脱臼、大型犬で多いのは外方脱臼です。)
この膝蓋骨脱臼のことを略してパテラと呼ぶ獣医師が少なくないようです。
膝蓋骨脱臼のグレード分類
4段階に分類されます。
グレード1 基本的に脱臼していない。日常的には脱臼しないが、手で押すと脱臼することができる。手を放すとすぐに元の位置に戻る。
グレード2 基本的に脱臼していない。日常的に脱臼したり戻ったりする。脱臼しても手で戻すことができる。
グレード3 基本的に脱臼したまま。脱臼は手で戻すことができるが、手を離すとすぐに脱臼してしまう。
グレード4 基本的に脱臼したまま。脱臼は手で戻すことができない。
グレードは生涯にわたって変わらない子もいますが、一般的には進行します。
膝蓋骨脱臼の症状は?
膝蓋骨が脱臼すると、チカラが足先から骨盤へうまく伝わらない。また脱臼時に痛みがでることがあります。
したがって症状としては次のようなものになります。
- 急にケンケンしたり、後ろ足を挙げたりする。スキップする。
- 足を後ろにピーンと伸ばす仕草をする。
- 散歩中や遊んでる最中に痛がって鳴く。
- 歩き方が不自然
- 歩き方が変だったり痛がっていたが少しすると治る。
- 後ろから見たときO脚もしくはX脚
グレード2までは膝蓋骨が自然と整復されることがあるので、症状が出たと思ったら自然と治ってしまうことが多いです。
一方でグレード3や4が持続していると、慢性的な状態になっているのであまり痛がりません。そしてチカラがまっすぐ骨盤へ伝わらないので、特に脛骨(すねの骨)が歪んでO脚やX脚になります。
また膝蓋骨脱臼があると、十字靱帯断裂や関節炎のリスクが上がるといわれています。
どうやって診断するの?
問診で上記の症状の確認ができたら、あとは触診するだけでほとんどの場合に診断がつきます。
できればX線検査をして、関節炎や骨の歪み、本当に他の病気がないかを確認します。
膝蓋骨脱臼の治療は?
完治を望むのであれば外科手術しかありません。術式は様々ですが、膝蓋骨のはまる溝を深くしたり、関節包を開放したり、腱の付着部をずらしたりです。
手術が適応になるかはその子の状況によります。
たとえばグレード2でもまだ1歳など若齢であれば、将来の長さを考えて手術を奨めることが多いです。
一方でグレード4でも14歳など高齢であれば、手術は無理にせずサプリメントなどで経過観察とすることが多いです。
内科療法としては
- 消炎鎮痛剤
- 安静
- サプリメント
- 体重管理
となります。
消炎鎮痛剤と安静は一時しのぎの治療となります。
体重管理はしっかり行い、太らせないこと。太ると膝への負担が増えます。
サプリメントは軟骨成分が含まれたもので膝関節を維持したり、抗酸化作用のあるもので疼痛を軽減します。
他に家でできるケア・注意点は?
膝に負担をかけないようにすること。
- わざと走らせたり、飛び跳ねさせたりしない。
- 足が滑らないようにする。
- 痛みがあるときは安静にする。
- 体重管理
ソファや階段は上らないように躾けるか、毎度抱っこするか、スロープを設置しましょう。
またお家の床がフローリングであれば、絨毯を敷き詰めるなどして滑らないようにしましょう。
足の裏の毛が伸びっぱなしで肉球が隠れるようであれば、カットしましょう。
まとめ
- 膝蓋骨脱臼と診断されたら、膝に負担を掛けないように心がけましょう。
- 完治を目指すには外科手術しかない。
- 補助的な内科療法で進行・症状を緩和しましょう。
- 脱臼の頻度が増えてきたり、痛がるようになってきたら再受診しましょう。
膝蓋骨脱臼について不明点やご相談があれば、当院までご連絡ください。