【解説】免疫機能が下がる!猫免疫不全ウイルス(FIV)感染症について
2025/07/18
流山市、柏市、野田市のみなさんこんにちは。
流山市おおたかの森にある、21動物病院-おおたかの森-です。
今回は、猫のFIV感染症について解説します。
猫免疫不全ウイルス(FIV)感染症とは
FIV(Feline Immunodeficiency Virus)は猫免疫不全ウイルスのことで、このウイルスに感染する病気を猫免疫不全ウイルス感染症といいます。FIVにより猫の免疫機能を低下させ様々な疾患を引き起こして、最終的には後天性免疫不全症候群(Acquired Immune Deficiency Syndrome; AIDS) (猫エイズ)を発症します。人間のエイズと症状が似ていますが、猫のみに感染する病気です。
FIV感染症の原因
猫免疫不全ウイルス(FIV)は、レトロウイルス科レンチウイルス属に分類されます。このウイルスは血液、唾液、精液、乳汁などに存在し、多くが水平伝播され、ほとんどが喧嘩や交尾中に唾液を介した咬傷から感染します(接触感染)。まれに、経乳汁感染や胎盤感染もあります。特に屋外で生活する雄猫や咬傷歴のある猫がFIVに感染していることが多いようです。

FIV感染症の症状
FIV感染症は経過が長い病気ですが、猫によっては発症しない場合もあります。病期は、①急性期、②無症候キャリア期、③持続性全身性リンパ節症期、④エイズ関連症候群期、⑤エイズ期の5つに分類されます。
① 急性期(初期)
感染してから数週間~数か月(最大1年くらい)後に、軽度の発熱、軽度の下痢、好中球減少、リンパ節の腫大、食欲不振などがみられることがあります。症状は一過性の事が多く、繰り返すこともあります。若齢では、細菌性の急性腸炎や肺炎を起こし、死亡することがあります。
② 無症候キャリア期
体内にウイルスを保有したまま、無症状の時期は数年から生涯にわたり続きます。免疫によりウイルスの増殖が抑制されているため、外見上は健康の猫と区別が難しいです。途中で症状がでてくる場合や無症状のまま終息していく場合があります。
③ 持続性全身性リンパ節症期
下顎、腋窩、膝窩リンパ節など全身のリンパ節が腫大します。数ヶ月から1年ほど持続します。
④ エイズ関連症候群期
全身の免疫機能が低下し、病気への抵抗力が減退し始めると、リンパ節の腫大に加えて慢性感染症の症状が出始めます。発症は平均5歳で、口内炎が最も多く、歯肉炎、よだれ、皮膚疾患、上部気道炎、貧血、下痢、発熱、体重減少、皮膚疾患などもみられます。多くは1年以内にさらに重篤化します。
⑤ エイズ期
体重減少、食欲低下、顕著な削痩、貧血、骨髄抑制、日和見感染(クリプトコッカス症、カンジダ症、疥癬など)、汎血球減少症、神経症状(脳炎)などがみられ、感染症にかかりやすくなり、悪性腫瘍(B細胞リンパ腫)も発生し、数ヶ月以内に死亡します。
FIV感染症は、猫のリンパ腫の発症リスクを高めると考えられています。FIV感染により免疫機能が低下し、リンパ系細胞に感染することでリンパ腫が発症しやすくなります。
猫リンパ腫についてのブログ記事はこちらからご覧ください。
FIV感染症の診断
臨床症状や各種検査からFIV感染症が疑われる場合、血液検査にてFIV抗体の有無を確認します。血清診断キットでは、感染4~6週間経過してから確定できます。感染初期や感染末期などでFIV抗体価が低すぎるとFIVに感染していても抗体が陰性のことがあります。その場合は、ELISA法やPCR法、ウイルス分離などにより診断する場合があります。またどのような検査でも偽陰性になることがあるため、FIVに関連する症状があり、感染リスクの高い猫では追加の検査をします。なお、過去にFIVワクチンを接種した猫からはFIV抗体が検出されるため、ワクチン履歴の確認と鑑別が必要になります。
6ヶ月齢未満の子猫における診断
6ヶ月齢未満の子猫では、FIV抗体検査における結果の解釈に注意が必要です。母猫が自然感染やワクチン接種によりFIV抗体を持っている場合、子猫は母乳を介して移行抗体を保有しています。そのため、FIVに感染していなくても、最長6ヶ月齢までは移行抗体によりFIV抗体陽性となる場合があります。6ヶ月齢未満でFIV抗体が陽性となった場合、本当に感染しているのか直ちに確認するためには抗原検査としてPCR検査を行います。FIVに感染していなければ、その後は移行抗体の消失とともにFIV抗体は陰性に変化(陰転)します。しかし、6ヶ月齢以降になってもFIV抗体陽性のままであればFIVに感染している可能性が高いと考えます。
FIVの治療
残念ながらFIV感染症は根治が難しく、治療する方法は見つかっていません。そのため、症状に応じた治療を行う対症療法が中心となります。症状によって治療方法が異なりますが、抗ウイルス療法として、逆転写酵素阻害薬や受容体拮抗薬、猫組み換えインターフェロンなどを用います。また、口内炎や歯肉炎には抗生剤や鎮痛剤、ステロイド剤などを使用します。
FIV感染症の予防
現在、日本ではFIVワクチンは販売されていないため、日頃の予防が重要になります。FIVの感染を予防として、次のようなことが有効です。
- 感染している猫と接触しないよう、屋外へは出さないようにしましょう。
- 感染のリスクを避け、生肉を与えないようにしましょう。
- 感染している猫の他に同居している猫がいる場合は、食器やトイレを別にするなど感染猫を隔離して飼育しましょう。
- 去勢手術・避妊手術をしましょう。発情を抑え、攻撃性や徘徊を低下させることは、咬傷リスクを軽減でき、FIV感染のリスクを低下させます。

さいごに
FIV感染症は、猫の免疫機能を低下させる病気です。猫を屋外に出さないようにすることが最も効果的な予防方法です。猫の健康を守るために、日頃から適切な健康観察と飼育管理を行い、感染リスクを下げるようにしましょう。
当院ではエビデンスを元に検査・診断・治療を行っています。
FIV感染症について不明点やご相談があれば、当院までお電話もしくはLINEにてお問い合わせください。
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執筆:獣医師 一色
監修:獣医師 院長 坂本




