【解説】ガチョウみたいな咳?気管虚脱について
2024/04/27
流山市、柏市、野田市のみなさんこんにちは。
流山市おおたかの森にある、21動物病院-おおたかの森- 院長の坂本です。
当院ではエビデンスを元に検査・診断・治療を行っています。
今回は気管虚脱について解説します。
気管虚脱とは
犬の本来の気管はホースのようなもので、断面は丸型(厳密にはC型の軟骨と膜性壁)ですが、気管虚脱ではこの気管が潰れて(=虚脱)してしまう。
原因は今のところはっきりしていません。
軟骨細胞の減少や、グリコサミノグリカン、コンドロイチンなどの減少・欠如があるとも言われています。
気管虚脱の症状は?
気管が潰れているため刺激を受けやすく、ガチョウのような咳がでます。また痰を吐くような仕草がでることも。
虚脱が重度だと空気の通りが悪く、呼吸困難になることもあります。
気管虚脱の罹患リスク因子は?
犬種
トイ種、小型犬で多い。大型犬ではほとんど罹患しません。
ヨークシャー・テリア、ポメラニアン、プードル、マルチーズなど。
発症年齢
若齢(1~5歳)に多い。
その他のリスク要因
- 肥満
気管虚脱に罹患している子の発咳が増える要因として
- 家の塵埃が多い
- 家族に喫煙者がいる
なども挙げられます。
気管虚脱の診断方法は?
臨床症状
独特なガチョウのような咳
単純X線検査
吸気時、呼気時の画像をみることで気管の変化を確認できます。
透視X線検査
X線の動画を撮影できるので、画像だけではわかりにくい症例でも診断できます。ただし撮影できる病院は一部に限られます。残念ながら当院では実施できません。
気管虚脱の治療
気管虚脱の治療は内科療法と外科療法があります。
内科療法
飲み薬や体重の管理などで治療します。潰れてしまった気管を治すわけではないので効果は一時的です。症状が軽度の場合や手術が難しい場合に行います。
- 気管支拡張薬
- 消炎剤
- 鎮咳薬
- 体重の管理(太らせない)
外科療法
手術を行うことで根治を目指すことができます。気管を円形に保つための“支え”をつける手術になります。
根治を目指せる代わりに、全身麻酔が必要なこと、支え自体による刺激で咳がでることもあること、稀に支えが破折することもあります。
- 気管内部に支えをいれる気管内ステント
- 気管の周囲に支えをつける気管外プロテーゼ
内科療法か外科療法かの選択は、重症度、麻酔に耐えうるかどうか、それぞれのメリット・デメリットを許容できるかで決定されます。
また外科手術を動物病院が実施できるかにもよります。