【解説】去勢してないのに睾丸が見当たらない?潜在精巣について
2024/02/05
流山市、柏市、野田市のみなさんこんにちは。
流山市おおたかの森にある、21動物病院-おおたかの森- 院長の坂本です。
今回は潜在精巣について解説します。
潜在精巣とは?
精巣は通常、陰嚢内にあります。俗的にいうとキンタマがタマブクロにあるということですね。
潜在精巣とは、精巣が陰嚢内になく、腹腔内(お腹の中)や鼠径部皮下にある状態です。
他の呼び方として、停留精巣や陰睾などと言います。
この疾患は、犬でしばしば認められ、猫では稀です。
片側のこともあれば、両側とも潜在精巣のこともあります。
犬や猫では産まれたときは精巣が腹腔内にあります。それが成長とともに陰嚢内へと移動してきます。この移動が何らかの要因によって上手くできないと、潜在精巣となります。
実際どれくらいで精巣が陰嚢内へと出てくるかというと
犬は生後30日~5か月
猫は生後20日まで
とされています。
つまりこの期間を超えると、潜在精巣と診断されるわけです。
潜在精巣の何が良くないのか?
精巣は熱に非常に弱いため、内臓でありながら陰嚢という腹腔外に出して冷却する必要があります。
潜在精巣では、精巣が腹腔内に残り、通常より高い温度に晒されるために弊害がでます。
- 精巣の発育が上手くいかない
- 精子の形成ができない
- 将来、腫瘍化する可能性が高い
潜在精巣はどうやって診断する?
上述したように一定の期間を過ぎても陰嚢内に精巣がない場合に、潜在精巣と診断されます。
視診・触診
陰嚢内にないことが確認されたら、鼠径部などを触診して探します。鼠径部の皮下に精巣があれば多くの場合、見つかります。脂肪に埋もれている場合も多いので、触診だけでは見つけられないこともあります。
超音波検査
鼠径部の皮下に精巣がない、触れない場合は超音波検査にて鼠径部の皮下や腹腔内を探索します。
X線検査(レントゲン)
高齢で潜在精巣の場合は腫瘍化してることがあるので、その際はX線検査で見つけられることも。
若齢では基本的に必要ありません。
潜在精巣の治療は?
外科手術のみとなります。放置しておくと、将来腫瘍化する恐れがあるので、ちゃんと精巣が降りてきている子よりも積極的に外科手術が推奨されます。
精巣摘出術
一般的にいう去勢手術です。ただし、通常の去勢手術では切開創は1か所で済みますが、潜在精巣では2か所になることがあります。
腹腔内に精巣がある場合は、お腹を開ける必要もあります。
陰嚢内固定手術
精巣が停留している場所、年齢によっては陰嚢に戻す手術も可能です。
しかしながら、潜在精巣は遺伝するため、陰嚢に戻したとしても倫理上交配はさせるべきではありません。そうすると陰嚢に戻す意味もほとんどありませんので、精巣摘出術が推奨されます。
まとめ
- 性成熟する6か月齢頃までに精巣が陰嚢に降りてこない場合は潜在精巣と診断します。
- 潜在精巣は、将来腫瘍化するリスクがあります。
- 基本的に第一選択の治療は、外科手術(精巣摘出術)となります。