【解説】猫の肥大型心筋症
2023/12/15
こんにちは
今回は猫の心臓病で一番多い病気である、肥大型心筋症について解説します。
犬でもかかる病気ではありますが、非常に稀です。したがってここでは猫の解説となります。
肥大型心筋症とは?
心臓の一部の筋肉(=心筋)が分厚くなる(=肥大)病気です。
主に肥大する部位は、心室中隔と左心室自由壁と言われる部位です。
心筋が肥大すると、弛緩すべきときにちゃんと弛緩できなかったり、硬くて収縮しにくくなったりと上手く動けなくなります。そのため、血液をきれいに循環させられなくなり(心不全)、様々な弊害が生じます。
ただし症状として出る子はあまり多くなく、見た目上健康な猫の15%ほどが肥大型心筋症と言われています。
健康診断でたまたま肥大型心筋症が見つかることが多いです。
また発症する年齢は6か月~20歳と、どの年齢でも発症します。
肥大型心筋症の症状は?
ほとんどの子が無症状かつそのまま生涯を終える猫が多いと言われています。
では症状が出る場合はというと…
先ほど述べたように、心筋がうまく動けないことにより、血流に異常が生じます。
その血流の異常により、動脈血栓塞栓症や肺水腫、胸水として症状が出ます。また、猫の突然死に肥大型心筋症が関与しているとも言われています。
動脈血栓塞栓症
心臓内や血管内で血液が固まり、血栓ができやすくなります。この血栓が血管に詰まることで、その先に血流がいかなくなり、次のような症状が出ます。
- 強い疼痛
- 元気・食欲の低下
- 麻痺
- 足先の冷感
- 肉球のチアノーゼ(肉球が紫色になる)
- 進行すると壊死
- 死亡することも。
肺水腫
血液をうまく循環させられないことで、血流が滞り、肺に水分が滲みでてきます。肺は空気が入ることで酸素交換を行うのに、空気があるべき場所に水分が入ってしまうことで、酸素交換をうまくできなくなり、次のような症状が出ます。
- 呼吸促拍(1分間に30回以上)
- 開口呼吸
- 舌のチアノーゼ
- 元気・食欲の低下
- 死亡することも。
肥大型心筋症の原因は?
原因は心筋そのものだったり、他の要因だったり、遺伝だったりしますが、原因を特定できないことが少なくありません。
- 遺伝(メインクーン、ラグドール、アメリカンショートヘア)
- 全身性高血圧症
- 大動脈狭窄症
- 甲状腺機能亢進症
- 末端肥大症
- リンパ腫
- 脱水
などなど。
また遺伝は確認されていないが肥大型心筋症が多い品種として、ブリティッシュショートヘア、スコティッシュフォールド、ペルシャ、ヒマラヤン、ノルウェージャンフォレストキャットが挙げられます。
肥大型心筋症はどうやって診断する?
心臓の超音波検査で診断がつきます。
しかし心筋症になる原因がないか探索するために、血液検査や血圧検査も組み合わせます。
また肺水腫や心臓サイズのチェックなどを含めてX線検査も行います。
聴診で心雑音は…?と思う方もいるでしょう。
猫の肥大型心筋症は、心雑音が聞こえないこともあるし、心雑音があっても心臓病が見つからない(無害性心雑音)こともあります。したがって、いつも心臓の音は聞いてもらってるから大丈夫!というワケでもありません。
肥大型心筋症の治療は?
無症状の猫にはスタンダードな治療が存在しません。
血流うっ滞の程度、血栓兆候、肺水腫などを検査し、その猫に合わせた治療となります。
- ACE阻害薬
- β遮断薬
- 抗血小板薬
- 利尿薬
- 鎮痛薬
- 原疾患の治療
など。
こんなときはすぐに来院を!
心臓病なので命に関わることがあります。動脈血栓塞栓症と肺水腫に気を付けましょう。症状は上述した通りです。
肥大型心筋症のまとめ
- 肥大型心筋症は無症状のことが多く、一見健康そうな猫でも罹患していることがあるので、定期的な健康診断がおすすめです。
- 動脈血栓塞栓症と肺水腫に注意して、足や呼吸に何か症状があれば来院しましょう。
- 現在治療を始める段階にない子でも進行することがあります。定期的な心臓検査を行いましょう。
猫の肥大型心筋症について不明点やご相談があれば当院までご連絡ください。