【解説】ネコの尾側口内炎
2023/12/11
今回は猫の尾側口内炎について解説します。
尾側口内炎とは
様々な呼び方があります。難治性口内炎、喉頭口内炎、口腔後部口内炎、口峡炎、歯肉口内炎など。
歯肉だけでなく、尾側粘膜に炎症を起こします。
歯周病との違い
歯周病
歯周病は、歯垢・歯石に棲む細菌によって歯肉や歯槽骨に炎症を起こす。痛みはそれほど強くない。食欲も落ちることはほとんどない。
歯周病についてはこちらの記事でも解説しています。
尾側口内炎
尾側口内炎は原因はわかっておらず、口腔内細菌、ウイルスなどが疑われている。また炎症部位も歯肉だけではなく、尾側粘膜、頬粘膜などにも広がっている。重症な子は喉にまで炎症があることも。痛みが強く、以下のような症状が出る。
- 流涎(よだれ)
- 流涎による前足の汚れ
- 口腔粘膜からの出血
- 口周りを前肢で掻くようなしぐさ
- グルーミングできずに毛並みが悪い
- 口臭が強い
- フードを食べにくそう
- 食欲低下
- 嚥下困難
尾側口内炎の治療
外科的治療と内科的治療がある。
外科的治療
歯石除去や抜歯がこれに当たります。口腔内細菌の関与が疑われているので、それを清浄化するのが目的。
抜歯は、全臼歯抜歯と全顎抜歯があります。これらが唯一完治する可能性のある治療となります。
全臼歯抜歯…奥歯をすべて抜歯する。切歯(前歯)と犬歯のみが残る。
全顎抜歯…すべての歯を抜歯する。歯は残らない。
改善率は、歯石除去<全臼歯抜歯<全顎抜歯となります。
注意点としては
- 効果が出るまでが遅いこと。抜歯したから1週間後には治るというワケにもいかず、抜歯から1か月以上、長いと1年ほどしてから効果がでてくることも。
- 改善や完治しない子もいること。全顎抜歯したとしても改善率は80~90%です。
抜歯という点で飼い主の皆さまがご心配されるのは、ご飯が食べれなくならないか?ということと痛みに関してです。
猫の歯はほとんどが裂肉歯といい、肉を噛みちぎるための歯です。人間と違い咀嚼はほとんどしません。したがって、キャットフードを与えている限りは歯が全くなくても生活に支障はありません。
痛みに関しては、抜歯による痛みはやはりあります。しかしながら長い目で見れば、抜歯による痛みはそのときだけです。無治療であれば尾側口内炎の痛みが生涯続くことになりますので、抜歯の痛みに関してはほとんどデメリットにならないでしょう。
内科的治療
飲み薬や軟膏による対症療法です。完治はできないので、その場しのぎの治療をその都度繰り返す形になります。以下のような薬を使っていきます。
- 抗菌薬
- ステロイド薬
- インターフェロン製剤
- 免疫抑制薬
- 鎮痛薬
注意点としては
- 耐性菌が出てくる可能性があること。抗菌薬のむやみな継続は耐性菌のもとになります。
- ステロイド薬の継続服用で、糖尿病や医原性クッシング症候群のリスクが上昇すること。
- FIVやFeLV感染している場合、免疫が落ちる免疫抑制薬やステロイド薬によってさらに免疫力がなくなってしまうこと。
外科的治療と内科的治療は一長一短です。
それぞれのメリットとデメリットを把握して、治療を選択しましょう。
まとめ
- 尾側口内炎は歯周病とは違い、口の痛みが強い。
- 口を痛そうに食べる、気にする、よだれが多いなどがあれば一度動物病院で相談しましょう。
- 完治を目指すのであれば抜歯が必要になります。
- 他の疾患があり麻酔がかけられない、経済的に難しいなどそれぞれの状況に合わせて、方針を相談していきましょう。