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    【解説】認知機能不全症候群について

    2023/10/20

    今回は老犬・老猫に多い認知機能不全症候群(いわゆる認知症)について解説していきます。

     

    認知機能不全症候群とは

    加齢に伴う脳の不可逆的な変化による、進行性の認知力低下が引き起こす行動変化のことを指します。

    人間の認知症とはまた少し違った脳の変化のようです。

     

    不可逆的な変化のため、一度進行すると元には戻りません。したがって早期に症状を見つけて、対策を始めることが大切です。

    認知機能不全症候群のリスク因子

    リスク因子としては年齢のみです。

    経験上は日本犬に多い感じがしますが、論文上は犬種による差異はないとされています。

     

    認知機能不全症候群の症状は?

    DISHAAの6兆候があります。

    D: Disorientation 見当識障害

    I: social Interaction changes 社会的交流の変化

    S: Sleep-wake cycle changes 睡眠‐覚醒周期の変化

    H: House soiling/learning and memory 粗相・学習と記憶力の変化

    A: Activity changes 活動量や内容の変化

    A: Anxiety 不安

    D: 見当識障害

    自分が今どういう状況にいるのかわからなくなってしまうこと。今がいつなのか、どこにいるのか、目の前の人が誰なのか。わからないことが不安にも繋がります。

    初期症状としては

    • 扉の蝶番側から出ようとする。
    • 目の前に飼い主がいるのに、突然探しに行ってしまう。

    進行していくと

    • 部屋の隅や椅子の下から動けなくなってしまう。

     

    よく部屋の隅に頭をくっつけて動けなくなっていたり、椅子の下にハマりこんで動けなくなっている犬がいます。それが見当識障害の症状です。

    I: 社会的交流の変化

    ヒトや動物への反応が、以前とは異なってきてきます。家族との関わりが減ったり、これまで反応していたものに反応を示さなくなったり。

    例えば…

    • 飼い主が帰宅したとき、これまでは喜んでいたのに喜ばなくなった。
    • 飼い主が帰宅しても、玄関で待たなくなった。
    • 撫でてもあまり喜ばなくなった。
    • これまで怒らなかったのに、家族に怒るようになった。

    S: 睡眠‐覚醒周期の変化

    夜起きてることが増えてきたり、進行すると昼夜逆転してしまいます。

     

    H: 粗相・学習と記憶力の変化

    これまで大丈夫だったのに、トイレの失敗が増えたり、コマンド(マテやオスワリ)を忘れたりします。

    トイレの失敗はトイレを忘れてしまうことにあります。

    A: 活動量や内容の変化

    活動性は減るものもあれば、増えるものもあります。

    減るもの

    • 起きている時間、活動している時間が減る
    • 刺激に反応しなくなる

    増えるもの

    • 無目的にウロウロと歩き続ける(徘徊や旋回)
    • 何かを舐め続ける
    • 臭いを嗅ぐことが増える

     

    A: 不安

    感覚が鈍くなったり、認識能力の低下によって不安傾向が強くなります。

    不安が夜鳴きや吠えにも繋がっていきます。

    もちろん、これらの症状があったからといって必ずしも認知機能不全症候群とは限りません

    身体的なトラブル(痛みや炎症)などで症状がでている可能性もあります。関節炎、膀胱炎、分離不安症全、般性不安障害など他の疾患かもしれません。

    また一方で、単なる老化だと思っていたら、認知機能不全症候群だったなんてこともあり得ます。

    よく見て、当てはまる症状があれば動物病院に相談しましょう。

     

    認知機能不全症候群の治療は?

    環境を整える

    円形のサークルを設置する。

    徘徊や旋回してしまう子に効果的。円形のサークルを準備して、その中でぐるぐると回ってもらう。隅があるとハマってしまうので円形に。

    トイレの工夫

    寝るところとトイレの距離を近づける。排泄したいと思ったらすぐに駆け込めるように。

    トイレをサークルで囲う。トイレの形が平坦、色が床と類似色だと見えにくい。トイレのしつけのときのように囲えばすぐにトイレを見つけられる。

    ※トイレの場所を変更するときは一気に変えるのではなく、徐々に動かしていきましょう。

    足が滑りにくいよう工夫する

    足腰が弱くなり、うまく立てなかったり、関節炎で痛みが出たりで鳴くことがあります。そういったときは滑りにくいように工夫をしましょう。

    床に絨毯を敷き詰める滑り止めグッズを使う(トゥ・グリップス、パウ・ウイングなど)。大型犬はこれらに加えて、歩行補助ハーネスを使うと良いでしょう。

    日中の覚醒時間の確保・夜間睡眠前の運動をする

    睡眠‐覚醒周期が変化してしまうので、周期を正常化するために行いましょう。日中も身体の運動も大切ですが、後述するような刺激を与えて頭を使ってもらうことも大切!

     

    刺激を与える

    散歩へ連れていく。

    歩けないから行かないという飼い主様も多いですが、外の空気や臭い、日の光、風景を見せてあげるのはとても大切。歩けなくても抱っこやカートでも良いので連れて行ってあげましょう。

    新しいおもちゃ、知育玩具を使う。

    知育玩具はフードなどを隠せるものを使いましょう。ノーズワークマットやKONG、ビジーバディなど。ペットボトルに切り込みを作り中にフードを隠したり、段ボールをいくつか用意して、ひっくり返して中にフードを隠すなどでもOK!自分で探して見つけるという行為が大事。

    他の動物や人との関わりを増やす。

    新しい物って大切!

    新しい動作・コマンドのトレーニングをする。

    学習機能は衰えても、まったく学習できないわけではありません。頭を使ってもらいましょう。

    サプリメント

    抗酸化作用

    脳の酸化ストレスが認知機能不全症候群の進行させる因子のひとつなので、抗酸化作用のあるサプリメントがおすすめ。

    抗酸化作用成分は、EPA, DHA, ビタミンB6, ビタミンC, L-カルニチンなどが挙げられます。

    このような成分を多く含んだフードもありますね。

    抗不安作用

    不安傾向が強くなるので、抗不安作用のあるサプリメントもおすすめ。

    睡眠時ホルモン

    睡眠‐覚醒周期の変化には、メラトニンを含んだサプリメントを。

    薬剤

    環境を整えたり、刺激を増やしたり、サプリメントを使っても効果がない、もしくは問題行動が改善しないときは薬剤を使用していきます。

    不安をとるような薬剤だったり、認知機能を改善する薬剤を使っていきます。

    薬剤によっては数週間服用を続けてやっと効果の出るものもあるので、効果がなさそうだからとすぐ辞めずに、継続して服用してみましょう。

    まとめ

    これらのケアは、認知機能不全症候群自体を治すわけではなく、進行を遅らせるとともに生活の質(Quality Of Life, QOL)を改善させるもの。

    どうしても進行はしてしまいますので、治療を行ったうえで効果が薄れてきたり、症状が進行したと感じたら動物病院へ受診しましょう。

    認知機能不全症候群に関して不明点や相談があれば、当院までご連絡ください。