【解説】おしりを気にしてる!擦ったり舐めたりしてる!犬と猫の肛門嚢炎について
2025/06/05
流山市、柏市、野田市のみなさんこんにちは。
流山市おおたかの森にある、21動物病院-おおたかの森-です。
今回は、犬と猫の肛門嚢炎について解説します。
肛門嚢とは
肛門嚢炎を解説する前に、肛門嚢について解説します。肛門嚢は犬や猫のような肉食動物がもっている器官で、肛門を中心にして時計の4時と8時の方向に左右一つずつある分泌腺(肛門腺)を指します。この分泌物は、主にアポクリン腺と皮脂腺からつくられたもので、排便のときや興奮したときに自然な圧迫で排出されます。色は茶、緑、黄、黒など、形状は乾燥、液体、泥状などと様々な性状です。強い臭いがあり、臭いをつけることによって縄張りを主張したり、嗅ぎあうことでお互いの情報を認識したりしています。
肛門嚢炎とは
何らかの原因で、肛門嚢から分泌物がうまく排出されずに溜まってしまい、不快感だけでなく細菌感染や炎症を起こす病気です。さらにひどくなると、肛門嚢に穴があいて肛門嚢破裂となり、痒みや痛みが増します。
肛門嚢炎の原因
肛門嚢炎を引き起こす原因として、次のようなものが挙げられます。
肛門腺の過剰な貯留
肛門嚢の分泌物が排出されずに過剰に溜まってしまうことで、細菌や炎症がおこりやすくなります。肛門嚢の分泌物は、正常のときは排便時に自然に圧迫されて肛門嚢から分泌されます。しかし、便秘や下痢が続いて便が硬すぎたり柔らかすぎたりすると、自然な圧迫が難しくなり、うまく排出できない状態になって溜まりやすくなります。
肛門嚢管の詰まり
肛門嚢から肛門へとつながる管(出口)が詰まってしまうことで、うまく排出できない状態になります。
肥満や運動不足
肥満になると、肛門周囲が脂肪で覆われ分泌物が詰まりやすくなり、炎症を引き起こします。また、運動不足になると、筋肉の動きが鈍くなり分泌物が自然に排出されにくくなります。
食事内容
便の質が原因で、排出できなくなることがあります。便が柔らかいと圧迫が弱く分泌が少なくなり溜まりやすくなります。食物繊維が少ない食事や飲水量が少ないと便を固くしてしまい、排便自体が難しくなって肛門嚢に負担がかかってしまいます。加工されたフードは、腸内細菌叢バランスを崩してしまい軟便や下痢になりやすいです。
小型犬、老齢犬
外肛門括約筋の力が弱いことが原因で、肛門嚢の分泌物を自力で排出できないため、分泌物がたまって炎症を起こしやすくなります。
長毛種の猫
肛門周囲に毛が多くあるため、便と絡みやすいため分泌物が詰まりやすくなります。ペルシャやヒマラヤンなどは好発描種とされています。
肛門嚢炎の症状
肛門嚢炎になると、次のような症状が出てきます。
- 肛門周囲の腫れ、痛み、出血
- 便を出しにくい
- お尻を気にする
- お尻を頻繁になめる
- お尻をこするように歩く
- お尻からくさい臭いがする
- 座り方がおかしい
- 落ち着きがない
- 元気や食欲がない
肛門嚢炎の検査
肛門嚢炎の検査は、主に視診と触診から診断します。症状によっては、血液検査やレントゲン検査をすることもあります。
- 視診:肛門の周囲を見て、色や腫れの状態を確認します。
- 触診:肛門を触って、肛門嚢の大きさや硬さを確認します
肛門嚢炎の治療
肛門嚢炎の治療は、溜まっている肛門嚢の分泌物を排出させることが第一です。また、細菌感染がある場合は抗生剤も併用します。肛門嚢炎がひどくなり、肛門嚢破裂を起こしているときは、洗浄し手術して縫合することがあります。また、肛門嚢炎が慢性化して繰り返すときは、肛門嚢の摘出手術を行います。
肛門嚢炎の予防
肛門嚢炎にならないようにするためには、日頃の観察が重要です。排便時には、便の硬さや形状、お尻周囲を確認するようにしましょう。スムーズに排便することは、肛門嚢の分泌物をスムーズに排出させることにつながります。そのためにも、肥満にならないように適切な運動をさせ、質のよい食物繊維を含んだフードや十分な水分を与えるように心がけましょう。
また、定期的な肛門腺絞りも予防の一つです。肥満や高齢、小型犬のほか、もともと分泌物が多い、肛門嚢炎を繰り返す、下痢や軟便が続くというような場合は、動物病院で肛門周囲の状態を確認してもらい、必要に応じて絞ってもらいましょう。また、トリミングサロンで絞ってもらえるところもあります。絞る頻度は1か月に一度が目安とされているところもありますが、個体差があるので、絞るか絞らないかは状態を診てもらってから判断するようにしましょう。そもそも、自力で排出できる健康な犬や猫は、無理に絞らなくてもよいケースが多いです。
さいごに
適度な硬さのウンチは健康のバロメーターの一つですが、肛門嚢をうまく使えてるといった判断材料にもなります。食事の内容に気を付け、適度な運動をすることで健康寿命を延ばすことにつながります。肛門嚢炎は日頃のケアで防ぐことができますが、もし発症した場合は悪化による破裂を防ぐためにも、お尻を気にする、お尻から臭いがするなど、いつもと違う症状が出たら、早めに受診するようにしましょう。
当院ではエビデンスを元に検査・診断・治療を行っています。
犬と猫の肛門嚢炎について不明点やご相談があれば、当院までお電話もしくはLINEにてお問い合わせください。
21動物病院-おおたかの森-
千葉県流山市おおたかの森北2-50-1 GRANDIS 1階
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執筆:獣医師 一色
監修:獣医師 院長 坂本