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    【解説】ほぼ発症!早めに対策したい!スコティッシュ・フォールドの骨軟骨異形成症候群について

    2025/05/26

    流山市、柏市、野田市のみなさんこんにちは。

    流山市おおたかの森にある、21動物病院-おおたかの森-です。

     

    今回は、スコティッシュ・フォールドの骨軟骨異形成症候群について解説します。

     

     

    スコティッシュ・フォールドの骨軟骨異形成症候群とは?

    スコティッシュ・フォールドの骨軟骨異形成症候群(SFOCD)(通称「スコ病」)は、骨の成長や軟骨の構造に異常が起こる遺伝性疾患です。特に、四肢の遠位(末端側で手首や足首)、尾に進行性の変形がみられるのが特徴です。関節の周囲にコブ(骨瘤)や骨棘ができて痛みを伴うため、関節の動きが悪くなります。病気は、骨が成長する子猫の時期から始まります。

     

    猫の骨軟骨異形成症候群としては、スコティッシュ・フォールドの他にも次のような病気が知られています。

    • 足の骨軟骨異形成症候群「短足」の マンチカン
    • 鼻涙管の形成異常や閉塞「短い鼻」の ペルシャやヒマラヤン
    • 耳がカール状に反りかえる「反り耳」の アメリカンカール など

     

    スコティッシュ・フォールドとは・・・

    スコティッシュ・フォールドは、1961年にイギリスのスコットランドの農場で発見され、突然変異で耳が折れた猫が起源とされています。この猫種の特徴は、折れた(垂れた)耳と大きな目、丸みのある体型で、体重は3~4kg程度です。とても穏やかな性格で、適応力が高く、人懐っこくて飼いやすいため人気があります。立ち耳で生まれますが、生後3~4週間たつと耳介が前方に折れ始めて、3~4か月で完成します。中には、立ち耳のままの猫もいて、スコティッシュ・ストレートと呼ばれます。

     

     

    スコティッシュ・フォールドの骨軟骨異形成症候群の原因

    この疾患の原因は、遺伝性のものであることが知られています。スコティッシュ・フォールドのトレードマークである折れ耳も発症に関係があり、耳が折れる現象は、常染色体の優性遺伝であるTRPV4遺伝子が関与していることがわかっています。TRPV4遺伝子は、軟骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞など様々な組織で発現していて、細胞の分化や組織の恒常性に重要な働きがあります。この遺伝子の一部が変異を起こすことで、耳介軟骨の弾力性が低下し、耳が折れてしまうのです。実は、このときにはすでに、耳だけではなく前肢後肢や尾の関節でも骨軟骨の変性が生じているので、折れ耳の発生というのは、他の部位にも異常が起きているサインになります。

     

    また、前肢や後肢の末端に変性が起こりやすい理由としては、TRPV4遺伝子は軟骨細胞のメカノセンサー(力学的ストレスを感知する細胞内のセンサー)の働きがあることから、TRPV4遺伝子の変異によって四足歩行の猫では手根関節や足根関節に影響が出やすいと考えられています。

     

    TRPV4遺伝子の変異がホモ接合の猫は、発症が早く重症になりやすいとされています。また、ヘテロ接合の猫は、比較的発症が遅く軽度の場合が多いとされていますが、発症年齢や重症度などの幅は様々です。また、TRPV4遺伝子の変異がないスコティッシュ・ストレートは、発症しないわけではありません。発症の有無、症状や重症度は遺伝要因だけとはいえず、環境因子など様々な原因が関与していると考えられています。

     

     

    スコティッシュ・フォールドの骨軟骨異形成症候群の症状

    骨の関節や軟骨に異常がおこり、関節のコブ(骨瘤)ができて関節が腫れたり、変形するなどうまく動かせなくなります。発症部位として、前肢の手首と後肢の足首、尻尾に変形がみられます。最も多い部位は、後肢の足首(足根関節)から趾先の部分です。肩や肘、股関節、膝といった四肢と尻尾以外の関節には発症が認められません。

     

    次のような症状がみられます。

    • ‘スコ座り‘
    • 関節の痛み
    • 前肢・後肢の関節のコブ(骨瘤)・骨棘や変形
    • 尻尾のコブ(骨瘤)・骨棘や動きの低下
    • 肢を引きずる、挙げる
    • ぎこちない歩行、ゆっくりした歩行
    • キャットタワーなどの高いところへのジャンプや移動をしなくなる
    • 身体をうまく曲げられない
    • 爪切りを嫌がる
    • 遊ぶ時間が減り、寝ている時間が多くなる
    • 毛繕いの減少により、毛玉の目立ちや毛並みの悪化 など

     

    ‘スコ座り‘は、お尻を地面につけて後肢を前に投げ出すといった人のような座り方です。リラックスしているときにもみられますが、スコティッシュ・フォールドによく見られるしぐさのため、このような通称がつけられています。この姿勢は、関節の痛みがあるために関節に負担をかけないようにしていると考えられています。

     

     

    発症する年齢は、骨が成長する成長期から進行していき、1歳以下の猫で多くみられます。ただ、成猫でも発症する例は珍しくありません。また、一度は落ち着いたとしても、老描になり筋肉量が減ると再発することがあります。発症のタイミングは、遺伝的な要因だけではなく生活環境など様々な要因が関係しています。

     

     

    スコティッシュ・フォールドの骨軟骨異形成症候群の診断

    診断は、身体検査とレントゲン検査、さらに遺伝子検査で判断します。

     

    身体所見

    折れ耳かどうかや、身体各所の関節の状態を調べ、痛みや腫れの程度を確認します。

     

    レントゲン検査

    手根関節、足根関節、尾の骨や軟骨の状態を調べます。関節周辺の腫れや、関節腔の状態、コブ(骨瘤)・骨棘の有無、変形の程度などを確認します。

     

    遺伝子検査

    原因遺伝子を検出し、発症するリスクや繁殖に許容できるかを確認します。猫の口腔粘膜や血液から検査できます。

     

     

    スコティッシュ・フォールドの骨軟骨異形成症候群に対する治療

    この疾患は遺伝性疾患のため、今のところ有効な治療方法はありません。関節のケアのため、変形性関節症(OA)に対する対症療法が中心となります。次のような方法によって、痛みを改善できることがあります。

     

    薬物による疼痛管理

    関節が変形することによって、痛みを生じる場合は、消炎鎮痛剤を用いて抗炎症作用により痛みの緩和や関節炎の進行を抑えます。ただし、猫は消炎鎮痛剤を長期に使用すると腎臓に負担がかかるため、一定期間の内服治療になります。

    最近、猫の変形性関節症の痛みを抑えるため、抗体製剤が利用されるようになりました。痛みに長く効くだけでなく、一か月に一回の注射で済むため猫も飼い主も負担が減るという利点があります。

     

    サプリメント

    抗炎症作用のある脂肪酸を多く含んだものや、関節の軟骨を保護する成分が含まれているものなど様々なサプリメントがあります。

    医薬品ではないため長期的な使用はできますが、改善できるほどの効果は期待できないもしれません。あくまで、関節の痛みの緩和のために処方されることがあります。

     

    外科手術

    手術により、痛みの原因となっているコブ(骨瘤)・骨棘を取り除きます。それにより、痛みが軽減されて関節の可動域を改善させることができます。ただ、全身すべてのコブを取り除くのは困難であることや、手術後に進行のスピードが上がり痛みが再発するなど、かえってリスクになることがあります。

     

    放射線療法

    放射線照射により、症状を改善させる方法です。痛みや歩行異常を改善した例もあり、有効な方法と考えられています。この方法は、放射線を使用しますので、放射線による副作用の可能性があるだけでなく高額の医療費がかかります。また、高度な技術と設備のため、限られた動物病院でしか受けられません。

     

     

    スコティッシュ・フォールドの骨軟骨異形成症候群に対する予防

    この疾患は、遺伝性疾患のため予防はできません。しかし、生活環境を見直すことで、少しでも快適にすごせる工夫をすることはできます。

    • フロアマットなどを活用し、滑りにくい床にする
    • 大きな段差がないようにスロープやステップを設置し、バリアフリーにする
    • 自然な体勢で食事ができるようにお皿の高さを調節する
    • 関節に負担にならないように、適正体重を維持できるようにする
    • 足に負担がかからないように、定期的にブラッシングや爪切りをする
    • 定期的に健康診断を受診して、早期発見や早期治療ができるようにする

     

     

    さいごに

    スコティッシュ・フォールドの骨軟骨異形成症候群は、根治できない遺伝性疾患ですが、対症療法で痛みの緩和は見込める可能性があります。発症し、進行すると生活にも影響が出てきます。まだ元気でも、定期的に受診をして関節の状態を確認しておきましょう。

     

     


    当院ではエビデンスを元に検査・診断・治療を行っています。

    スコティッシュ・フォールドの骨軟骨異形成症候群について不明点やご相談があれば、当院までお電話もしくはLINEにてお問い合わせください。

     

    21動物病院-おおたかの森-

    千葉県流山市おおたかの森北2-50-1 GRANDIS 1階

    TEL: 04-7157-2105

    Web予約: https://wonder-cloud.jp/hospitals/21ah_nagareyama/reservationsonder

    LINE: @092jvjfm

     

    執筆:獣医師 一色

    監修:獣医師 院長 坂本