【解説】熱中症は真夏だけじゃない!今からできる対策とは?!
2025/05/06
流山市、柏市、野田市のみなさんこんにちは。
流山市おおたかの森にある、21動物病院-おおたかの森-です。
今回は 熱中症について解説します。
熱中症とは?
春先から初夏のような暑さが続いています。犬や猫も、人間と同じように熱中症にかかります。熱中症を防ぐために、今からどのような対策をすればいいのでしょうか。
熱中症は、高温多湿の環境下で体温が上昇し、脱水症状が生じる全身性の疾患です。動物は人より体温が高く安静時では37~38℃程度で、体温が40℃以上を超えると熱中症のリスクが高まります。さらに42℃以上になると、体内のタンパク質が凝固して全身の臓器に影響するため、死亡率が一気に上がります。
犬や猫では、汗をかくための汗腺(エクリン腺)は足裏の肉球にしかありません。そのため、呼吸による放熱や体表の空気の移動が主な体温調節方法になります。体内の熱を体外へ放散する方法は、対流、蒸散(気化)、伝導、輻射があります。
- 対流は、体表面の冷たい空気と接することで熱が移動すること
- 蒸散(気化)は、呼吸、唾液、発汗により熱が移動すること
- 伝導は、皮膚と床や地面の接触により熱が移動すること
- 輻射は、放射された電磁波(赤外線)により熱が移動すること

体内の余分な熱を逃がす行動として、冷たい床にお腹をつけたり(伝導)、口を開けて激しい呼吸パンティング(蒸散)や舌をだらりと垂らしたり(対流と輻射)します。
熱中症の原因
熱中症の主な原因には、次のようなものが挙げられます。
- 高温多湿環境での運動
- 体温調節能の低下
- 飼育環境
気温が体温に近い温度まで上がると、呼吸による体温調節がうまくいかなくなり体温が上がってしまいます。続いて脱水が起こり、血液が濃縮されて血圧の低下を引き起こします。重症化すれば、循環不全による多臓器不全で死亡することがあります。
また、短時間の運動でも熱中症になることがあり、特に過度な運動が最も危険なリスクです。
閉め切った室内や車内で長時間高温が続く場合や、日陰がなく暑い環境も熱中症リスクを高めます。
熱中症になりやすい条件
短頭種
鼻(マズル)が短く鼻腔や口腔面積が狭いため、唾液を気化して熱を逃がす効率が悪いです。空気の通り道である気道も狭く、呼吸による体温調節が苦手です。
犬ではパグ、フレンチ・ブルドッグ、ボストン・テリア、ペキニーズ、猫ではペルシャ、ヒマラヤンなどが挙げられます。
毛が密、毛が長い
寒冷地が原産の犬種は、常に暖かい毛皮を着ている状態であるため、寒さに強いですが暑さは得意ではありません。
柴犬や秋田犬、シベリアン・ハスキー、アラスカン・マラミュートなどが挙げられます。
肥満
脂肪が断熱層の役割をして、体内の熱を蓄積することで体温が上昇しやすくなります。また、首の周りの脂肪で呼吸器を圧迫してしまうので、呼吸による調節が難しくなります。
若齢、高齢
若齢では、身体の発達が未熟で体温調節機能が完全ではありません。
逆に、高齢では体の機能が衰え、体温調節機能が低下していて、脱水傾向にあり、呼吸が遅めです。高齢猫に多い慢性腎臓病などにより暑さ調節が難しくなります。
小型、短足
チワワ、トイプードル、ミニチュアダックスフンド、ペキニーズなどの小型犬種や短足の犬種は、アスファルトなどの路面との距離が短いため地面の熱を受けやすくなります。
大型犬
身体が大きいため、体温が下がりにくくなります。
疾患がある
呼吸器疾患や心疾患、糖尿尿や腎臓病など脱水傾向がある場合、体温調節がうまくいかなくなります。特に、心疾患がある場合には、重症化しやすいです。
熱中症の症状
熱中症の症状には、主に次のようなものがあります。
初期や軽度のとき
- 口を開けてハアハア激しい呼吸(パンティング)
- よだれを垂らす
- ふらつき
- 心拍数がいつもより多い
- 目や歯茎の粘膜がいつもより充血している
- 40℃以上の高熱
重度のとき
- 筋肉が震える
- 嘔吐や下痢
- 呼吸が苦しい
- ぐったりしている
- 発作を起こす
- 意識がもうろうとする、意識がなくなる
犬は、体温を下げるためハアハアという呼吸(パンティング)をしますが、通常よりも速い呼吸になった時には緊急の対処が必要です。吐息の温度が熱いことも高体温と確認できる一つの方法です。
また、猫でパンティングがみられるときは非常に重篤なので、こちらも緊急に対処しましょう。
重度の熱中症になった場合、循環不全による脳や各組織の酸素欠乏となり、呼吸不全や腎障害、血液凝固障害、消化管障害、中枢神経障害などの合併症を引き起こします。進行すると、発症から24時間以内に意識がなくなり死亡します。
熱中症が疑われるときの対処方法
木陰など涼しい日陰や室内に移動させて休ませましょう。アスファルトより土の上の方が涼しいです。
身体を冷やしましょう。濡らしたタオルで体を覆ったり、水道水などの流水を体にかけたり、さらにうちわで風を送ったりします。保冷剤などで太い血管(首や脇、内股)を冷やすことも有効です。
意識があり自力でできるのであれば、水を飲ませましょう。
落ち着いたら、近くの動物病院やかかりつけの動物病院に連絡をしましょう。
熱中症の治療
動物病院では、身体の冷却と臓器の機能回復をめざして治療します。まず、冷水浴や濡らしたタオルを体に覆い、送風するなど体温を下げる処置をします。臓器の機能回復の治療としては、身体の状態が酸素不足や重度の脱水になっていることが多いため、点滴と酸素吸入が第一選択となります。
それ以外にも血液検査や超音波検査など、それぞれの症状に合わせて治療を進めていきます。
熱中症の対策
熱中症を予防するためには、どのようなことに気を付ければよいでしょうか。
室内での熱中症対策
温度湿度の熱中症対策
室温26℃以下、湿度50%前後になるようにエアコンを利用しましょう。扇風機や送風機などを利用して、風通しをよくすることも大切です。特に若齢高齢や病気のある犬猫は、気温の寒暖差や高湿度にも弱いため、除湿機能などを上手に利用し、過ごしやすい環境を作ってあげましょう。
ただし、個体差があるので、それぞれに合った快適な環境にしましょう。
季節の変わり目では、朝晩は寒くても日中は暑くなることがあります。寒い朝に出かけて、日中は気温が上がると、閉め切った屋内では室温が上昇することがあります。エアコンをつけるなど対策をしてから出かけるようにしましょう。
また、暑さに慣れていない春先や梅雨時期でも熱中症になりやすいことに注意しましょう。
飲み水の熱中症対策
いつでも新鮮な水が飲めるようにしておきましょう。普段から水を飲む量が少ない場合は、ウェットフードなど水分の多いフードを与えるなど、水分を補給できるよう意識しましょう。

環境の熱中症対策
屋内でも日陰の場所を作り、涼しい場所に移動できるようにしましょう。
熱中症対策グッズの利用
クール首輪、クールベスト、アルミプレートやクールマットなどが市販されています。噛み癖がある場合、ケガや中毒の原因になることがありますので、初めて使用する際は十分注意しましょう。

屋外での熱中症対策
散歩での熱中症対策
暑い時期は、日中の散歩を避けましょう。猛暑のときは、なるべく涼しい時間(例えば、朝は4~5時頃、夜は19時以降)に行き、短時間で終わらせるようにしましょう。
暑い日差しにより、アスファルトやマンホールは50~60℃まで上昇していることがあります。犬は人よりも地面に近いため、照り返した熱の影響を受けやすいです。路面の暑さが原因で、肉球が火傷することがあります。肉球は常に体重がかかる場所のため、治療しにくいのため予防が重要です。アスファルトを手で数秒ほど触って熱いと感じたら散歩は控え、室内で運動をさせるようにしましょう。
散歩へ行くときは必ず飲み水を携帯し、クールスカーフなど熱中症対策グッズを利用しましょう。
また、無理に屋外に出なくてもよいように、室内で排泄ができるようにしておくとよいでしょう。
車内の熱中症対策
絶対に、犬や猫を車内に放置しないでください。窓を開けたりサンシェードをつけたりしても温度抑制効果は低く、エンジンを切ると車内は気温が一気に上昇してします。エアコンを作動させない限り、車内は40℃を超えてしまい、人でも耐えられない温度になります。エアコンを作動させていても、ダッシュボードは50℃以上になり、触れると火傷の危険が出てきます。
屋外飼育の熱中症対策
日陰の場所を作り、好きな時に涼しい場所に移動できるようにしましょう。
いつでも水分が補給できるようにしておきましょう。暑い日中では、屋外に設置した飲み水がお湯になってしまうことがあります。注意して、こまめに変えてあげましょう。
トリミングの熱中症対策
夏になると、犬猫の被毛を普段より短めのサマーカットにする犬が多いのではないでしょうか。サマーカットは、メリットだけではくデメリットもあるので注意が必要です。
サマーカットのメリット
被毛を短くし密度を低くすることで、通気性をよくし放熱量を上げて身体を冷やす効果を高めると考えられています。
サマーカットのデメリット
極端に短くカットしすぎるのは、実はとても危険です。被毛は、気温や直射日光(紫外線)から皮膚を守り、体温の上昇を防ぐ役割があります。被毛を短く少なくすることで、対流や体内の輻射による放熱は増えますが、いつもより皮膚が露出しているため、環境中の輻射熱を多く受けて逆に暑く感じてしまいます。炎天下では、皮膚が火傷することもあります。エアコンの影響を受けやすくなり、予想以上に体温が下がってしまうことがあります。
また、犬の皮膚の角質層は人よりも薄いため、皮膚が傷ついたり、蚊やノミ・ダニなどの外部寄生虫にも晒されやすくなります。ノミ・ダニの駆虫や虫よけの対策も忘れずにしておきましょう。
被毛には皮膚からの放熱を抑える効果(保温作用)のほか、外気の冷たさからも体を守ります(断熱作用)。また、水分を保つ役割があり、人は体表にかいた汗が蒸発するときの気化熱で体温を下げるように働きます。
しかし、犬では、前述のように全身の皮膚に汗をかくためのエクリン汗腺がありません。そのため、短くカットをしても、気化による涼しさはあまり感じず、体温は下がりません。
皮膚を保護して熱中症を防ぐために、夏場にカットする場合は、少なくとも皮膚が露出しない長さにするようにしましょう。
長毛種のケア
熱がこもりやすくなったり皮膚病の原因になったりするので、しっかりとブラッシングしましょう。毛が絡まないようにすることでも暑さ対策ができます。
まとめ
熱中症は、人と同じように犬や猫でもかかる可能性があります。真夏に限ることなく日頃から予防対策を心がけ、快適に過ごせるようにしていきましょう。
当院ではエビデンスを元に検査・診断・治療を行っています。
熱中症について不明点やご相談があれば、当院までお電話もしくはLINEにてお問い合わせください。
21動物病院-おおたかの森-
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執筆:獣医師 一色
監修:獣医師 院長 坂本




