【解説】痩せられない?犬・猫の体重の減らし方
2024/04/05
流山市、柏市、野田市のみなさんこんにちは。
流山市おおたかの森にある、21動物病院-おおたかの森- 院長の坂本です。
当院ではエビデンスを元に検査・診断・治療を行っています。
今回は犬、猫の体重の減らし方、ダイエットの仕方について解説します。
そもそも肥満の何がいけないの?
うちのコが見つめてくるから…、フードを食べないからオヤツを与えてしまう…、この体型がカワイイ…。診察しているとよく聞く話です。
肥満は万病の元。本当にその子を愛しているのなら、適切な体型を維持することが大事です。
肥満になるとリスクが上がる疾患です。
- 糖尿病
- 膀胱炎
- 皮膚炎
- 関節疾患
- 呼吸器疾患
など。
皮膚炎は意外かもしれませんが、太るとシワが増え、シワがあると皮膚同士が擦れるため、間擦疹となります。
関節疾患は言わずもがな、体重が重いとそれを支えている足への負担が増えます。犬も猫も7歳以上の関節炎の罹患率はかなりのものです。
もともと気管が弱い子は脂肪によって、より気道が圧迫され、咳や呼吸困難のリスクがあがります。
軟口蓋過長や喉頭狭窄など、喉元が狭い子も脂肪があるとより狭くなり呼吸困難に。
うちのコは太ってるの?
さて、まずは犬・猫の理想の体型・体重を把握しましょう。
動物業界ではボディ・コンディション・スコア(BCS)または体脂肪インデックス(BFI)を見ます。
ここでは比較的わかりやすく広く使われているBCSについて解説していきます。
BCSは5段階もしくは9段階で、理想体型は3もしくは5.5となります。
ここではBCSは5段階表記で記載しています。
チェックポイントは「肋骨」「くびれ」「お腹の凹み」です。
理想体型(BCS 3)は…
- 肋骨-軽く触って肋骨がわかる。皮下脂肪は少量。
- くびれ-上からみて肋骨の後ろにくびれがある。
- お腹の凹み-横から見て腹部のつり上がりがある。
体重を基準に考える場合は、去勢・避妊したとき(6~8ヶ月齢)の体重を参考にしましょう。実際には成長期はもう少し続いていますが、その頃にはほとんど体が出来上がっています。
もしくは次の計算式でもざっくりと理想体重を出すことができます。
理想体重=現体重(kg)÷BCS×3
体重減量の方法
運動VSフード量
おすすめはフードの量の調節です。もちろん運動を増やすことでも痩せることはできますが、関節への負担や、その運動量をずっと続けないと体重が戻ってしまうことを考えると、フードの量の調節のほうが簡単だからです。
もう一つの理由として、人間と違って、犬や猫は飼い主から与えられたものしか食べれません。与えるフード・おやつの量が摂取カロリーに直結します。
カロリー計算
犬・猫の1日に必要なエネルギー量は、安静時エネルギー要求量(RER)と1日のエネルギー要求量(DER)で表されます。
RER(kcal/day)は人間でいう基礎代謝のようなもの。以下の計算式で表されます。
RER=理想体重(kg)×30+70
もしくはRER=理想体重(kg)0.75×70
DER(kcal/day)は、その子に応じた係数を乗ずることで表される、実際の1日のエネルギー量です。
DER=RER×係数
係数は成長段階や活動度によって変わります。
犬 | 猫 | |
4ヶ月未満 | 3.0 | 3.0 |
4~9ヶ月 | 2.5 | 2.5 |
10~12ヶ月 | 2.0 | 2.0 |
未去勢・未避妊の成犬・成猫 | 1.8 | 1.4 |
去勢・避妊済みの成犬・成猫 | 1.4 | 1.2 |
肥満傾向 | 1.4 | 1.0 |
減量が必要 | 1.0 | 0.8 |
高齢 | 1.4 | 1.1 |
フードの量
ほとんどのフードには100g当たり何kcalかがパッケージに記載されています。
○kcal/100g
これと先ほど出したDERと合わせて、1日に必要なグラム数を求めていきます。
1日のフード量(g)=DER÷○(kcal/100g)×100
<例>
5歳の避妊済みトイ・プードル、体重6 kg、BCS 5、フードは420 kcal/100gのとき
RER (kcal/day) = 理想体重〔体重6 (kg) ÷ 5 (BCS) × 3 〕× 30 + 70 = 178
DER (kcal/day) = 178 (RER) × 1.0 (係数) = 178
1日のフード量 (g) = 178 ÷420 (kcal/100g) × 100 = 42.4
ということで1日に食べるフードは約42 gとなります。
これを1日2回に分けるときは、1回あたり21 g与えることになります。
もしオヤツを与える場合は、オヤツ分のカロリーを差し引いて、フードを与えるようにしましょう。
ダイエット中のよくある落とし穴
オヤツ与えていませんか?
せっかくカロリー計算してフードの量を守っていても、それに加えてオヤツを与えては制限を超えてしまいます。
オヤツを与えてはいけない、とは言いませんが、オヤツを与えたらその分のフードを減らしましょう。
家族の誰かが勝手に与えていませんか?
家族が勝手に与えてしまう場合もあります。この場合は、1日分のフードを取り置いておき、そこから与えてもらいましょう。そうすれば自然と1日量が守られます。
フードの量をお皿で測っていませんか?
お皿の○分目だと少しずつズレていきます。しっかり重量(グラム)で量って数字で管理しましょう。そのほうが微調節もしやすい。
ちゃんとやってても痩せられない!
個体差はある
ここまでの計算は理論上の話です。最終的にはその子の体型が最も大事になるので、1日のカロリー、グラム数をしっかり守っているのに痩せない!という場合はさらにフードを減らしてください。
個体差があり、痩せやすい子、痩せにくい子は居ます。
お腹が空いて仕方がないんだけど…
- ドライフードであればぬるま湯でふやかすことで、カサ増しに。ふやかしたぬるま湯は捨てないこと。
- 減量用フードに変更する。同じカロリーのときでも量は増やせます。
- ウェットフードを追加もしくは変更する。水分が多いので、同じ重量(グラム)ならドライフードよりもカロリーが少ない。)
病気の可能性も?
理論値よりかなり減らしても痩せない場合は、病気の可能性もあります。獣医師と相談しましょう。
犬、猫の体重の減らし方、ダイエットの仕方について不明点やご相談があれば、当院までお電話もしくはLINEにてお問い合わせください。