【解説】いびき、呼吸困難、熱中症のリスクが高い!短頭種気道症候群
2024/03/30
流山市、柏市、野田市のみなさんこんにちは。
流山市おおたかの森にある、21動物病院-おおたかの森- 院長の坂本です。
当院ではエビデンスを元に検査・診断・治療を行っています。
今回は短頭種気道症候群について解説します。
短頭種気道症候群とは?
短頭種は、人為的に選ばれ作られており、頭蓋骨が丸く、マズルが極端に短くなっている。ビーグルなど鼻の長い犬と比べると、ぎゅっと喉~鼻が圧縮されたようになっています。
※マズル…鼻稜。犬の目元から口と鼻までの部分。
この構造のために特定に疾患が発生しやすい。特に鼻・鼻咽頭・気管を含む上部気道に異常が発生する病態を短頭種気道症候群といいます。
短頭種気道症候群を発生しやすい犬種
パグ、フレンチ・ブルドッグ、ボストン・テリア、シーズー、ペキニーズ、狆、ボクサー、ブルドッグなど。
他にもチワワやキャバリア・キングチャールズ・スパニエルも発生することがあります。
短頭種気道症候群にはどんな異常がある?
鼻~気管にかけての異常は単一のこともあれば、複数併発していることも少なくありません。これらの異常により呼吸がしづらくなっています。括弧内は短頭種気道症候群と診断された犬の内の保有率。
- 外鼻孔の狭窄(43~100%)
- 扁桃の腫大(56~70%)
- 軟口蓋の過長(85~100%)
- 喉頭小嚢の外反(46~100%)
- 喉頭・気管虚脱(8.1~80%)
外鼻孔の狭窄:
下図の左がフレンチ・ブルドッグ、右がミニチュアダックスフンドです。ミニチュアダックスフンドの丸い鼻孔に比べて、フレンチ・ブルドッグは鼻孔がスリット状になり、見るからに空気の通りが悪そうですね。
短頭種気道症候群の症状は?
- いびき、喘鳴音(グーグー、ズコズコなど)
- 運動不耐性
- 体温上昇
- 呼吸困難
- チアノーゼ
- 咳、えずき
- 嘔吐、流涎
- 失神、虚脱
- 肺炎
- 肺水腫
犬は汗ではなく呼吸での体温調節の割合が大きい。なので呼吸がしづらいと体温の調節も上手くできなくなります。すると体温が上がりやすく、下がりにくくなるわけです。
短頭種気道症候群の治療は?
軽度であれば内科療法で対応します。しかし構造自体に問題があるので、お薬だけでは限界があります。
体重管理
肥満は気道にも影響し、呼吸悪化の原因になります。また体重が大きいほど、体積に対する体表面積は小さくなります。これも熱が逃げにくい原因になるので、太らせないように注意しましょう。
体重減量の方法についてはこちらの記事をご覧ください。
体温、環境管理
上述した通り熱が籠りやすい体です。初夏にはもう必ずエアコンを使い、涼しく過ごさせてあげましょう。
他の犬種でも、人が暑いと思い始める前に、すでに犬にとっては暑い環境です。基礎体温も、発汗の仕方も、被毛の量も人間とは違います。気をつけましょう。
内服薬
興奮があまりひどいときは鎮静剤を、喉頭の炎症が強いときは消炎剤を使うことがあります。
また気道を広げる薬を使うこともあります。
外科手術
重度のときや根治を目指す場合は外科手術が必要になります。
- 軟口蓋切除
- 外鼻孔形成
などを行い、気道の通りを良くします。