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    【解説】ずっと続く嘔吐、下痢。それって慢性腸症?

    2024/02/15

    流山市、柏市、野田市のみなさんこんにちは。

    流山市おおたかの森にある、21動物病院-おおたかの森- 院長の坂本です。

     

    今回は慢性腸症について解説します。

     

    慢性腸症とは

    3週間以上の慢性的な消化器症状を示し、スクリーニング検査で原因の特定に至らない消化器疾患」と定義されています。

     

    慢性的とは、急性の逆で長期間にわたり続いているということ。症状が出たり消えたりする間欠的な発症も含まれます。

    スクリーニング検査とは、疑う病気をあまり限定せずに行う一般的な検査のこと。血液検査やX線検査、超音波検査、糞便検査などが当てはまります。

    消化器疾患とは、嘔吐、下痢、腹鳴、腹痛、吐き気など胃腸に関する疾患を指します。

     

    つまり嚙み砕いて書くと

    「よくやる検査では原因がわからず、長いこと続く下痢や嘔吐」を慢性腸症と言います。

    慢性腸症の原因は?

    スクリーニング検査を行っても原因が特定されない消化器疾患なので、消化管以外の疾患(肝疾患や腎疾患など)、腫瘍、原虫、寄生虫などは含まれない。以下の4つに大別される。

     

    • 食事反応性腸症
    • 抗菌薬反応性腸症
    • 免疫抑制薬反応性腸症
    • 治療抵抗性腸症

     

    慢性腸症を診断するための検査は?

    上述したように、まずはスクリーニング検査を行っていく。

    • 血液検査
    • 糞便検査
    • X線検査
    • 超音波検査

     

    この時点での追加検査も行うことがあります。例としては

    • 低アルブミン血症があれば尿検査
    • ALPや電解質の異常、副腎サイズの異常があれば副腎皮質機能検査
    • 脂肪便や食べているのに痩せてきたなどあればトリプシン様免疫活性
    • 膵炎の可能性があれば膵特異リパーゼ  など

     

    これらの検査で他の疾患が除外されたら慢性腸症と診断します。慢性腸症の大別でも治療法が各々異なるので、さらに検査を進めていく。

    普通の検査では異常を見つけられないので、診断的治療を行う。

     

    ※診断的治療…治療を行ってみて症状の改善があれば、その治療が正解だった、つまりは〇〇病の可能性が高い、と診断する方法。

     

    慢性腸症の診断的治療

    食餌療法

    食事反応性腸症かどうかを鑑別します。慢性腸症の中で最も多いのが食事反応性腸症です。

    食餌を変更して、2週間ほど継続したときに症状の改善が認められるかを確認します。食餌の選択肢としては

    • 高消化性食
    • 加水分解食
    • 新奇タンパク質食
    • (超)低脂肪食

     

    これらは療法食でふさわしい物がいくつかフードメーカーより出ています。動物病院によって取扱っているフードが異なります。

    食餌療法中は他のフードを一切与えないように気を付けましょう(特に加水分解食、新奇タンパク質食)。

    除去食試験についてはこちらの記事をご覧ください(皮膚症状を主な対象にした記事ですが、基本は同じです)。

     

    抗菌薬の試験的投与

    ある種の抗菌薬を投与して、抗菌薬反応性腸症かどうかを鑑別します。

    最近では耐性菌の問題や、本当に抗菌薬反応性腸症というものがあるのかどうか議論の余地があり、あまり行われなくなっています

     

    抗菌薬反応性腸症の場合、抗菌薬をやめてしまうと再発すると言われています。

     

    内視鏡検査・開腹下生検

    超音波検査だけではわからない腫瘍の検出腸リンパ管の拡張などを鑑別します。

    犬・猫では全身麻酔が必要になり費用もかかってきますが、腫瘍は見逃してはいけない疾患なので可能な限り実施します。

     

    内視鏡は、侵襲性が低いことが利点です。ただし組織生検で採れる範囲が粘膜表面だけと限定的です。

     

    開腹下生検は、お腹を開けるため内視鏡と比較すると侵襲性は高くなります。しかし、腸壁を全層採れるので診断性が向上します。また他の臓器の外観も同時にチェックできます。

     

    ※侵襲性…ある事象(検査や処置)が生体に害を及ぼす性質。侵襲性が高い=身体への負担が大きい。

     

    免疫抑制薬の投与

    免疫抑制薬反応性腸症かどうかを鑑別します。使用するのはステロイドもしくは免疫抑制剤です。

     

    ステロイドは即効性はありますが、長期間使用すると肝臓、皮膚への負担があったり、糖尿病や医原性クッシング症候群のリスクが増加します。

    免疫抑制剤は効果が出るまで数週間かかりますが、副作用が低く抑えられます。費用はステロイドより高価になります。

     

    ステロイドか免疫抑制剤の単剤のこともあれば、併用することもあります。できれば将来的には免疫抑制剤のみにしていきたいですが、ステロイドを止められないこともあります。その場合でも、ステロイドは単剤時よりも減量できることがあるので、免疫抑制剤の意味がないわけではありません。

    治療抵抗性腸症

    ここまでの検査・治療をしっかりやったのに、改善が認められない…。そんなときに治療抵抗性腸症と診断されます。

    こうなったときは…

     

    治療内容・診断の見直し

    イチから何か見落としがないか確認していきます。糞便検査で寄生虫はなかったけど、試験的に駆虫薬使用するなど。

     

    経口ではなく注射で治療する

    嘔吐や下痢によって飲み薬を体が上手く吸収できていない可能性があります。注射薬であれば嘔吐や下痢と関係なく身体に投与できる。

     

    内視鏡ではなく開腹下で生検する

    内視鏡では粘膜表面しか生検できません。その深部に病変が隠れている場合は見つけられないので、お腹を開けて生検します。

     

    プロバイオティクスやプレバイオティクスを使用する

    薬というよりサプリメントです。最近は腸内細菌叢の重要性がより強く謳われています。まだ試したことないのであれば使用します。

     

    二次病院に紹介してもらう

    通常みなさんがかかりつけとして通院している動物病院は一次診療といい、獣医ひとりが内科、外科、消化器科、歯科、皮膚科、整形外科、眼科…など様々な疾患を診ます。やはり器用貧乏というか、全てを極めることは不可能に近いので、消化器科を専門にした病院を紹介することがあります。

    こういった紹介されていく病院を二次診療といいます。二次診療についての記事はまた後ほど投稿します。

     

    慢性腸症のまとめ

    • 3週間以上続く消化器症状があれば、漫然とお薬をもらうだけでなく、しっかりと検査を行い治療しましょう。
    • 症状の重さ、投薬の仕方、食事の変更方法など自己判断せず、獣医の指導に従いましょう。
    • どうしても治らないときは二次病院を紹介してもらうことも検討しましょう。

     

     

    慢性腸症について不明点やご相談があれば、当院までお電話もしくはLINEにてお問い合わせください。